製品だけでなく、香りやパッケージデザイン、空間まで、すべてに美しさを追求するブランドです。
イ・ジョンヨン
店舗のはじまり
商品より先に店を開く
タンバリンズの出発点は、2017年にソウルの新沙洞、カロスキルの脇道へ開いた旗艦店だった。ジェントルモンスターにつながる新しい化粧品ブランドは、商品を発売する約4週間前に、まず店を公開した。大きな看板も、商品を並べたショーウインドーもない。入口の傍らに小さくブランド名を記し、空間そのものを予告編にしたのである。
最初の商品はハンドクリーム。ところが広々とした2層の店内では、売り物よりも家具や作品の存在が目を引いた。1階には、世界の10人のデザイナーと協働した椅子やテーブルが置かれた。彫刻のようなスツールや、脚を組むような形の椅子も、香りと同じブランドを伝えるためのものだった。
ビジュアルチームのイ・ジョンヨンは、化粧品という枠を超え、空間や絵画、パフォーマンスを通して美しさを表したいと考えていた。購入する品を決めてから入る店だけでなく、展示を見ることから香りに近づく店。その姿勢は、その後の店舗にも受け継がれている。
聖水洞で空間を空ける
2023年に完成した聖水の旗艦店では、この発想が建物全体へ広がった。設計はキム・チャンジュン率いるTHE_SYSTEM LAB。地上を売場で埋めず、コンクリートの骨組みを残して空け、商品を扱う空間を地下へ置いた。
意外なことに、地上を空ける案は建築家が一方的に提案したものではなく、ブランド側から始まっている。土地の価値が高い聖水で、使える床をあえて増やさない。その判断が、店の存在を強く印象づけることにつながったとキムは捉えている。
ブランド側のアイデアから始まった、面白いプロジェクトでした。
キム・チャンジュン
新沙や聖水に加え、ソウルでは漢南、三清などにも店舗を展開。日本でも青山、渋谷、代官山へ拠点を広げている。
店づくりの考え方
香りのように光を広げる
聖水店では、荒いコンクリートと透明なガラスをどう一つの空間に見せるかも課題になった。照明を担当したEONSLDは、建物の構造を光で浮かび上がらせながら、内側の明かりがガラスを通して周囲へ広がるように計画した。ボトルから噴霧した香水が空気にほどける姿を、光で表そうとしたのである。
照明器具の多くは天井や壁に埋め込み、目に直接まぶしさが入らないよう角度を調整している。器具を見せるよりも、光を受けた素材の表情を見せる。その仕上げを、EONSLD代表のチョン・ミはこう表している。
光は、空間を仕上げる最後の素材です。
チョン・ミ
訪れたい店舗
ソウル・聖水
聖水店の外観は、壁面で閉じた通常の店舗とは大きく異なる。残された柱と梁の間が空き、建物の奥行きがそのまま見える。1階の空白には、地下にも空間が続いていることを感じさせる役割がある。

地下では既存のコンクリートの骨組みを残し、その他の建築的な要素を目立たせないよう整理した。天井や壁を透明なガラスで構成し、地上の高さまで含めた、4層分に及ぶ立体的な広がりを感じさせる設計である。ガラスは一種類ではなく、低鉄分の複層ガラスや縦筋の入ったガラスを使い分け、設備も最小限に収めている。

なお、同じ聖水エリアにあるHAUS NOWHERE SEOUL内の店舗は別の拠点だ。コンクリートの空洞と地下売場を持つこの旗艦店とは、場所も建物も異なる。
ソウル・新沙
ブランドの原点を訪ねるなら新沙店になる。初期の空間には、作品を見る場所と、座って商品を試す場所が用意されていた。2階ではソファや椅子に腰を下ろしてハンドクリームを試せるようにし、ギフトを自分で包むための場所も設けていた。眺める、触れる、贈るという行為まで含めて店をつくってきたことが分かる。
東京・青山
青山では、かぼちゃの形をしたPUMKINIのキャンドルが、商品と空間をつなぐ題材になった。2024年のポップアップ空間を手がけたグラフィックデザイナーのイ・ヒウォンは、キャンドルの形を抽象化し、会場の図案へ展開している。香りを入れる容器の輪郭が、店の大きさにまで拡張された例だ。
青山店は現在も南青山に構えられている。展示の内容は変わっても、香水やケア製品を選ぶことに加え、その時々の造形を見に行く楽しみを持つ店舗である。



