ミントの香りと冷感は、甘さの感じ方も変える?

ミントの香りと冷感は、甘さの感じ方も変える? 香りの科学

ミントの「スーッとする感じ」と、甘さや酸っぱさは、別々に足し算されるだけではないようです。2008年の研究では、同じ糖の配合でも、ミント香料と冷感剤の組み合わせによって甘さの評価が変わりました。ミントを増やして甘さが強まったのは、冷感剤を多く含む条件でした。

モモの香りも比較し、鼻栓で香りを抑える条件を設けたところ、甘味だけでなく酸味、苦味、冷感にも異なる変化が見られています。

香り・味・冷感・とろみを一緒に調べる

研究の目的は、香りの種類と濃さが、味、冷感、口当たり、さらにそれらの相互作用へどう影響するかを調べることでした。冷感は、香りを捉える嗅覚とは別に、三叉神経系に関わる化学的な刺激によっても生じます。

研究者らは糖とキサンタンを含む粘りのあるモデル試料に、モモまたはミントの香料、冷感剤WS-3、クエン酸を加えました。香料、冷感剤、酸をそれぞれ低・高の2水準で組み合わせ、モモ8配合、ミント8配合の計16試料を作っています。物性測定では、各試料の粘度は同程度でした。

参加者は官能評価の経験がある女性10人、平均年齢40歳です。室温22℃の試料を、鼻栓あり・なしで評価しました。冷感、酸味、甘味、苦味、とろみを採点し、鼻栓なしではカップから嗅ぐにおいと口から鼻へ抜ける香りも評価しています。試料は番号で示し、各条件内の提示順を調整しましたが、鼻栓ありを先に実施し、香料の種類の順も完全には釣り合わせていません。

モモとミントで、鼻栓を外したときの変化が違う

モモ試料は、鼻栓ありに比べ、鼻栓なしで甘さが強く、苦味が弱く評価されました。ミント試料では、鼻栓なしのほうが冷感に加えて甘味、酸味、苦味も強く評価されました。香りが届くことによる変化の方向は、香料の種類によって異なっています。

鼻栓なしで両香料を比較すると、モモのほうがにおいと香り自体は強い一方、ミントのほうが冷感、甘味、酸味、苦味の評点は高くなりました。著者らは、ほかの感覚への影響は香りの強さだけでなく、どんな香りかにも関わると考察しています。

ミントを増やすと甘くなるのは、冷感剤が多いとき

特に重要なのが、ミント香料の量と冷感剤の量による甘さの変化です。鼻栓なしでは、冷感剤が多い試料でミント香料を増やすと甘さが上昇しました。一方、冷感剤が少ない試料では、ミント増量による甘さの変化は有意ではありませんでした。二つの材料の組み合わせによる交互作用も有意でした。モモ香料も増量するとにおいは強まりましたが、ほかの感覚には明確な変化がありませんでした。

冷感剤を増やしたときの甘さの方向も、香料によって違いました。モモ試料では甘さが低下し、ミント試料では増加する方向です。また、鼻栓なしでは冷感剤の増量によって、モモ・ミントの両方で酸味が強くなりました。冷感そのものについては、モモでは鼻栓の有無を問わず強まりましたが、ミントでは鼻栓ありでのみ有意な増加が見られました。

酸そのものの増量は主に酸味を強め、モモ試料では甘さを弱めました。ただし、ミントを鼻栓なしで評価した条件では、クエン酸増量による酸味の上昇は有意ではありませんでした。モモでは冷感剤が香りの強さを下げる結果もあり、香りから味への一方向だけでない作用が見られます。

ミント香料には、直接の冷感も残っていた

ミント香料は、事前には冷感が出にくいものとして選ばれていました。しかし本試験では、鼻栓をしても、ミント香料を増やすと冷感が強まりました。鼻栓なしではさらに冷感が強く、香りの影響に加えて、香料自体の冷感作用も含まれていたと考えられます。

このため、今回のすべての変化を「純粋なミントの香りだけの作用」とすることはできません。著者らは、ガムやミント菓子で香り・甘さ・冷感を一緒に経験することが、感覚の結び付きをつくる可能性を挙げていますが、その学習過程や受容体の働きを今回直接調べたわけではありません。

とろみの結果は、解釈が難しかった

鼻栓なしでは、ミント香料を増やした試料のほうが、とろみが強く感じられました。その一方で、モモ・ミントを問わず、鼻栓を外したときには全体としてとろみの評点が下がりました。

著者らは、この結果には鼻栓による口の動かし方や飲み込み方、唾液との混ざり方の変化も関わりうるとして、香りと食感の相互作用については結論を留保しています。女性10人のモデル試料で得られた結果であり、好き嫌いや、実際の菓子を食べる量の試験でもありません。

まとめ

モモの香りが届くと甘さが強まり苦味が弱まる一方、ミントでは冷感と複数の味の評点が上がりました。さらに、ミントの増量による甘味増強は冷感剤が多い条件で現れ、香り・味・冷感の組み合わせが重要だとわかりました。

ミント香料の直接の冷感や、鼻栓による口の動きの影響も含むため、作用を一つに決めることはできません。それでも、食品の「甘い」「スーッとする」は別々の材料量だけで決まらず、一緒に感じる香りによって変わることを示す研究です。

研究当時、著者らはNestlé Research Centerに所属していました。香料と冷感剤はGivaudanが提供しています。公開原著には独立した資金欄・利益相反声明は見当たりません。

参考文献

Labbe D, Gilbert F, Martin N. Impact of Olfaction on Taste, Trigeminal, and Texture Perceptions. Chemosensory Perception. 2008;1:217–226. doi:10.1007/s12078-008-9029-x