グミの中に小さな気泡を入れると、同じ大きさでも軽くなります。その分だけ砂糖や香料の総量が減ったとき、風味まで弱くなるのでしょうか。2021年の研究では、密度を23%、38%下げたイチゴ風味のモデル菓子でも、風味の最大強度と、その最大値に達する時間に有意な差は見られませんでした。
その背景を調べるため、研究者らは食感だけでなく、噛んでいる間に鼻へ届く香気成分と、唾液へ出てくる砂糖も測っています。材料の配合に加え、気泡という構造で風味の届き方を変える研究です。
同じ重さではなく、同じ体積で比べる
研究の主な問いは、グミに近いゲル状の菓子へ空気を入れることで、噛みごたえの変化を抑えながら、砂糖と香料の放出、時間とともに変わる風味を保てるかでした。
材料にはゼラチン、デンプン、ショ糖、グルコースシロップなどを使い、混ぜる時間を変えて、通常のゲル、少し空気を入れたゲル、多く入れたゲルの3条件を用意しました。比較する一口分の体積は同じです。密度は約1.3、1.0、0.8g/mLで、空気入りでは一口に含まれるゲルの重さと、砂糖・香料の総量が約23%、38%少なくなります。
これは、100g当たりの配合から砂糖を23%、38%取り除いたという設計ではありません。同じ大きさの菓子の一部を空気で置き換え、食べる材料の量を減らす方法です。
目に見えない気泡でも、最初のひと噛みは変わる
X線CTで調べた気泡の平均直径は約0.05〜0.06mmでした。通常のゲルにも製造時の小さな気泡はありましたが、空気を加えた2条件では気泡の占める割合が増えています。気泡は広く分布し、光の散乱によって、特に多気泡の試料は白く不透明になりました。
10人の訓練パネルが、最初に噛むときの「硬さ」と、噛み続けたときの「噛みごたえ」を別々に評価しました。最初の硬さは、少気泡でも多気泡でも低下。一方、噛みごたえは少気泡と通常のゲルの間で有意差がなく、多気泡では低下しました。機械による圧縮試験も、これらの方向と対応しています。
したがって、空気を入れても食感がすべて変わらないのではなく、空気を控えめに入れると、最初の硬さは下がりながらも、噛み続ける感覚の変化は小さく抑えられる可能性があります。
イチゴ風味のピークには、有意な差が出なかった
風味の官能評価でも同じ10人が参加し、各条件を3反復しました。赤色光の下で、番号を付けた試料を無作為な順序で提示。規定のリズムで20秒間噛んだ後に吐き出し、その後も50秒まで、感じるイチゴ風味の強さを記録しました。
その結果、全体的なイチゴ風味の最大強度と、最大強度に達する時間には、3条件間で有意な差がありませんでした。材料の総量が少なくても、風味の評点が明確には下がらなかったという結果です。
ただし、10人の試験で有意差が出ないことは、風味が厳密に同等だという証明とは異なります。また、評価したのは風味の強さで、好き嫌い、購入したさ、食べる量ではありません。
香りは、噛み始めのほうへ早く届く
研究者らはまず、ゲルを37℃で攪拌して溶かし、選んだ6種類の香気成分の放出を測定しました。空気入りのゲルでは、いずれの成分も通常のゲルより早く放出されました。ただし、少気泡から多気泡へ増やすことによる追加の速まりは有意ではありませんでした。
成分による違いもあります。調べたエステル類では似た傾向でしたが、アルデヒド類では、疎水性の高いデカナールよりヘキサナールのほうが、気泡による放出促進が大きくなりました。気泡を加えた後の香りのバランスは、すべての成分が同じ割合で変わるとは限りません。
次に、実際にイチゴ風味のゲルを噛んでいる間の鼻内香気を追跡しました。主に測定したのは酪酸エチルなど4種類のエステルです。空気入りでは、20秒間に放出される香りのうち、前半10秒に出る割合が高まりました。通常のゲルでは、酪酸エチルの約44%が最後のひとまとまりの咀嚼で放出されています。
一方、材料の総量が減るため、鼻内の香気成分の最大濃度は低下する方向でした。最大濃度と、感じるイチゴ風味の最大強度が単純には対応しなかったことが、この研究の面白い点です。
砂糖の届き方と、甘さも確認した
唾液中のショ糖は、ゲルを噛んでいる間から吐き出した後まで、舌の表面を綿棒で採取して調べました。この測定では、大きなゲルの破片が綿棒へ付くのを防ぐため、試料を薄い布で包む別の手順を用いています。
一口に含むショ糖の総量が少なくても、唾液中の最大濃度には有意な差が認められませんでした。また、香料を入れないゲルを使って甘さだけを評価すると、空気入りの2条件では甘さの最大強度が有意に高く、ピークまでの時間には有意差がありませんでした。風味全体の評価とは別に、甘味そのものにも変化が見られたのです。
著者らは、噛んで壊れたゲルに気泡があることで、唾液に触れる面積が増え、香気成分や砂糖が外へ出やすくなったと説明しています。放出結果はこの考えに合いますが、鼻内で追えた香気成分は4種類です。市販香料に含まれるほかの成分まで、同じ挙動をするかは今後の検証が必要です。
まとめ
同じ体積のグミ状菓子に気泡を入れると、一口の砂糖と香料の総量を減らしても、イチゴ風味の最大強度やピーク時間に明確な差が出ませんでした。香りの放出は咀嚼の前半へ移り、唾液中のショ糖の最大濃度は有意に低下せず、無香料ゲルでは甘さの最大強度が高くなりました。
食感では、少気泡でも最初の硬さは下がる一方、噛みごたえの有意な低下は多気泡で見られました。空気の量を調整し、香りと砂糖が届く時間も考えることが、風味と食感を両立させる設計の手掛かりになります。
研究はBBSRCの助成BB/P504932/1と、Nestlé PTC ConfectioneryによるCASE studentshipの支援を受けました。研究当時、共著者Daniel Festringは同社の製菓技術部門に所属していました。著者らは、既知の競合する金銭的利益や個人的関係はないと申告しています。
参考文献
Su K, Festring D, Ayed C, et al. Reducing sugar and aroma in a confectionery gel without compromising flavour through addition of air inclusions. Food Chemistry. 2021;354:129579. doi:10.1016/j.foodchem.2021.129579


