日本フレーバー・フレグランス学院 — 創設者の歩みと、調香・商品開発の教育、課程・入学条件

ガムに香りをつける実習を描いた、日本フレーバー・フレグランス学院の記事用イラスト

食品も化粧品も香りがあることによって成り立っています。

角田一(2012年)

好きな香水を自分でもつくってみたい。その思いから調香を学び始めると、香りの仕事は香水瓶の外にも広がっていることに気づく。飲料、ガム、キャンディ、シャンプー、クリーム。それぞれの製品の中で、香りはおいしさや心地よさを形にしている。

日本フレーバー・フレグランス学院は、食品に使うフレーバーと、香水・化粧品などに使うフレグランスを、商品開発と結びつけて学ぶ教育機関である。原料を嗅ぎ、調合するだけでなく、香りを加える食品や化粧品そのものも試作する。1999年の創設から続く特徴は、香りを、製品として働かせるところまで考える学びにある。

基本情報

  • 名称:日本フレーバー・フレグランス学院(Japan Flavor & Fragrance School)
  • 設立:1999年
  • 創設者:角田一(かくた・はじめ)
  • 現在の運営会社:株式会社Scent Academy
  • 現在の拠点:東京都品川区西五反田7-22-17、TOCビル2階3・7号室
  • 主な学習の入口:昼間2年制の専門課程、時間を調整して受けるビジネス課程、短期の入門コース
  • 公式サイト:日本フレーバー・フレグランス学院

角田一と、製品開発から生まれた教育

製菓会社での経験を、次の技術者へ

角田は1940年に東京で生まれ、1959年に都立中野工業高等学校を卒業した。製菓会社で働いた後、香料技術のコンサルタントとして活動し、1999年に学院を設立する。香りをつくる技術を、人へ教える仕事へと広げたのである。

ロッテの中央研究所では菓子のフレーバーを担当し、「クールミントガム」などの板ガムの開発に長く携わった。ガムの香りは、瓶から立ち上がる匂いだけでは決まらない。ガムの基材や甘味、食感と組み合わせて、口の中でどう感じられるかを考える仕事である。学院も、長年のチューインガム研究と実践的な処方を、調香と製造をともに学ぶ教育の背景としている。

角田は2004年、清水純夫、牧野正義とともに『食品と香り』を編著した。香料をつくる、評価する、生かすという流れに加え、香りの技術者を育てる章を持つ本である。研究と実際の商品化をつなぐ知識を、これから学ぶ人にも届けようとする仕事が、教育と出版の両方に現れている。

調香だけでなく、食品と化粧品もつくる

2012年、当時の理事長だった角田は、香料と化粧品・菓子食品の専門技術者を育てるため、企業で研究開発を行ってきた人が教え、実技を重視していると説明した。その時点で掲げていたのは、フレーバー、菓子食品、フレグランス、香水・化粧品、分析調香の五つを結ぶ教育だった。

同年6月27日には、認証機関BSIジャパンが、学院へのISO29990認証授与を発表した。対象は学習サービスとその管理の仕組みである。2010年8月30日はこの規格の発行日であり、学院が認証を受けた日ではない。ここでの認証は教育運営の歴史に関わるもので、受講者個人に大学学位や調香師免許を授与する制度ではない。

現在の専門課程も、食品香料と香粧品香料、菓子・食品の基材、化粧品、香りの分析という五つの技術を組み合わせている。香料を供給する側と、それを製品に加える側の両方を知る。つくった香りが、使う場所でどのように変化し、働くのかを確かめるためである。

メーカーで経験を積んだ人が教える

食品と香粧品を、それぞれの現場から

香料学、調香、菓子製造の実習を担当する牧野正義は、ロッテのチューインガム研究室からキャンディの研究へ進み、中央研究所のキャンディ研究部長を務めた。香料だけを取り出して考えるのではなく、製品の原料や製造、香味と食感の評価までを経験した教育者である。

調香実習、香料英語、香料化学を担当する掛川十次郎は、長谷川香料で調合香料の製造研修を受け、その後約35年間フレグランス研究に携わった。香水の研究に加え、化粧品、シャンプー、石鹸、洗剤などに用いる香料の実用化、安定性、安全性を扱ってきた。完成した香水と、日用品の中で機能する香りを、ともに見る経験が授業へつながる。

化粧品製造実習を教える奥村丈夫は、花王でスキンケアとヘアケアの開発を行い、ドイツでの研究所勤務も経て、2011年に学院の講師となった。2020年から講師を務める岡田祐は、岡田香料の研究部門と経営、開発研究所での仕事を経験している。学院の講師紹介は、調香と製造、研究と商品化を異なる現場で担ってきた人々を結びつけている。

改良を重ねる時間を、仕事につなげる

卒業生のM・Tは、もともと香水やお香を集めることが好きで、調香師の仕事を知って専門課程へ進んだ。学習では匂いの記憶を増やす喜びがある一方、改良しても思うようなものができず、自分の感覚を疑うこともあったという。

そんなときの試行錯誤の経験こそが財産となり実際に仕事で役に立っていると思います。

専門課程卒業生 M・T

卒業生の紹介には、香粧品香料だけでなく食品香料の研究へ進む人もいる。香水への興味が、食べ物のおいしさを考える仕事につながることもある。学院が二つの分野を学ぶ場を用意する意義は、扱う香りと進路の幅を、学習の中で確かめられることにある。

原料を覚え、製品に加えて評価する

香水と日用品では、香料の働き方が変わる

フレグランスの実習では、単品香料を二つ組み合わせるところから花の香りを表現し、既存の香水の模倣を通じて原料の特徴を学ぶ。模倣は、作品名を覚えるためではなく、どの素材がどのような働きをするかを、処方と知覚の両方から理解する練習である。

学習が進むと、香水だけでなく、シャンプーやコンディショナー、石鹸、芳香剤など、用途に合う処方を考える。化粧品の基剤とは、香料を加える前の製品の土台である。原料が基剤の中で安定するか、使うときの香りや使用感がどうなるかまでを評価する。試香紙の上でよい香りがすることと、製品の中で望む働きをすることを、実習で結びつけていく。

2026年8月には、株式会社大香の研究員による芳香剤とディフューザーの研修が行われた。溶剤の性質と香料の蒸散試験を学び、その後、自分で処方をつくってディフューザーを開発する流れだった。香りの選択に加え、どのように空間へ広がるかを考える、商品開発の具体例である。

フレーバーは、食べるものと合わせて考える

フレーバーの学習では、果物や乳製品などの基本的な香味から、飲料、キャンディ、チューインガムなどへ応用する。ガムの実習では、香料とともにガムベースや甘味料の性質を学び、地域による香味や食感の違いも評価する。キャンディでは、原料の配合と試作に加え、香味と食感を確かめる。

食品香料を設計するフレーバーリストと、香水・化粧品などの香りを設計するパフューマーでは、扱う製品と原料の条件が異なる。両方を学ぶことは、同じ原料や処方をそのまま食用へ転用することではない。香りを組み立てる感覚と、用途に応じて評価する技術を、二つの領域から学ぶのである。

化学と分析を、嗅覚の学習に重ねる

専門課程には基礎化学、香料化学、香料学、香料調合理論などの科目がある。文系・理系を問わず学び始められる一方で、香りを仕事にするための化学は、実習とともに身につけていく。

2年次にはガスクロマトグラフィーと質量分析を学ぶ。混合物の成分を分けて調べ、物質の情報を得る装置を使い、天然物から香気成分を採取する方法にも触れる。分析データと実際に嗅いだ特徴を結びつけ、自分の調香を改善する学習である。

目的に応じて選ぶ、三つの学び方

以下は2026年10月12日に確認した公式案内である。専門課程は2027年入学向けの受付日程を示す。ビジネス課程と入門コースは、年度を限定しない現行掲載条件として紹介する。

昼間2年制の専門課程

専門課程フレーバー・フレグランス学科は、二つの香料分野と商品開発を体系的に学ぶ2年制である。定員6名、授業は9時から15時10分。課程ページの時間割例は月曜から金曜まで、調香、食品、化粧品の実習を中心に組まれている。

2027年入学向けの募集案内では、高校卒業・卒業見込み以上の学力、またはそれに準ずる能力を出願条件とする。一般入学は一般常識の筆記テストと面接、推薦入学は推薦書と面接による選考。受付期間は2026年9月1日から2027年3月31日までで、定員に達した時点で締め切る。

同ページの現行学費掲載額は、1年次150万円、2年次146万円で、ともに税込。1年次には入学金10万円が含まれ、授業料、実習費、施設費を合わせた金額である。2年間の掲載学費合計は296万円、入学選考料2万円は別途必要となる。各年の分納も案内されている。これらは2026年10月12日の掲載額であり、未発表の次年度料金を補っていない。

仕事や学業と調整するビジネス課程

ビジネス課程は、フレーバー専攻とフレグランス専攻を選び、基礎科48回、応用科48回、専修科96回へと進む。両専攻を選択することもできる。転職や就職のための学習に加え、現在の仕事の技能を高める人や、趣味・生涯学習で学ぶ人も対象にする。

授業の枠は平日15時30分から19時、土曜11時から19時で、受講日と時間を担当講師と調整する。同じ枠内で何時間受講しても1回として扱う。固定の「何年制」に置き換えるより、授業回数と自分の通える頻度を合わせて、履修計画を考える課程である。

出願条件は高校卒業以上。受付は随時、基本は書類選考で、来校相談をしていない人には面談を行う場合がある。2026年10月12日の掲載費用は、専攻共通で基礎科57万5,400円、応用科54万1,800円、専修科108万3,600円。教材費・授業料を含む税込額で、入学時に入学金1万500円が別途必要となる。

10時間で体験する入門コース

入門コースは、何を学ぶのかを短期間で体験したい初学者に向けた10時間の講座である。2〜4回に分け、申込みから10日以降の日程を講師と調整する。2026年10月12日の掲載受講料は税込5万円で、別途請求する費用はないと案内する。

天然香料と合成香料の基礎、匂いの表現、花や果物の香りの調合などを学ぶ。実習はフレーバーかフレグランスの片方だけを選ぶこともでき、課題は進み方や希望に合わせる。講座でつくった香料を持ち帰る体験と、長期の専門教育とでは、学ぶ範囲が異なる。

出願前に確かめる、修了の扱いと学習環境

学院の企業向け紹介には、2年の課程を修了した学生へ「准研究員」の称号を与えるという説明がある。これは学院の教育における称号として紹介されるもので、大学学位や国家資格と同一ではない。2012年の発言に登場する「調香技術師」も、当時の独自認定の説明であり、現在の全課程で同じ認定が得られると一律には扱えない。

2027年向けの募集要項は、学費と選考を示す一方、修了証や認定の正式名称、授与条件を詳しく示していない。希望する課程の証書・称号、履修や評価の条件は、出願前の相談で確認したい。専門課程、ビジネス課程、入門コースを、同じ資格を得るための長短のコースとして選ぶことはできない。

授業言語も、現行募集要項に明記されているわけではない。「香料英語」は専門科目の名称であり、課程全体が英語で行われるという意味ではない。言語面の対応が必要な人は、履修希望と合わせて学院へ相談する必要がある。必修の企業インターンシップの期間も、掲載中の主要課程資料では示されておらず、校内実習と企業での研修を分けて確かめたい。

学院は、職種選び、企業選び、履歴書などの個別支援や、卒業後の仕事の相談を案内している。こうした支援は、特定企業への採用を保証する制度ではない。目的と適性を考え、どの技術を深めるかを決めていくための支援である。

オープンキャンパスと個別相談では、学院と課程の説明に加え、フルーツの香りを調合して試飲するフレーバー実習、フレグランスの調合を体験する。掲載日程には受付が終了した回もあるため、申込みは公式の最新案内に従う。まず自分が学びたい香りと、実際の授業の距離を確かめる入口になる。

主な歩み

  • 1999年:角田一が日本フレーバー・フレグランス学院を設立。
  • 2004年:角田一、清水純夫、牧野正義の編著『食品と香り』を刊行。香りの開発・評価・応用と技術者教育を扱う。
  • 2011年:奥村丈夫が化粧品製造実習の講師となる。
  • 2012年6月:BSIジャパンがISO29990認証の授与を発表。
  • 2020年:岡田祐が学院の講師となる。
  • 2026年8月:大香の研究員による芳香剤・ディフューザー開発の研修を実施。
  • 2026年10月の案内:五反田TOCビルを拠点とし、株式会社Scent Academyが運営。2027年入学向けの2年制専門課程の募集条件を掲載。

参考文献

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