汗の材料が多いほど臭う、とは限らない?脇の菌との関係

汗の材料が多いほど臭う、とは限らない?脇の菌との関係 香りの科学

脇のにおいは、汗に含まれる「においの材料」が多いほど強くなるのでしょうか。24人を調べた研究では、測定した前駆体の濃度と、実際に嗅いだにおいの強さには明確な対応が見つかりませんでした。一方、脇にいる細菌の種類ごとの割合には、においと結び付くパターンが見られました。

2015年の研究の特徴は、菌を培地で育てる方法だけに頼らず、皮膚から採ったDNAを使って細菌群を調べたことです。汗の成分、菌の量と構成、人が感じるにおいを組み合わせ、体臭が生まれる条件を探っています。

24人の脇を、朝と午後に調べる

対象はスイス・ジュネーブ周辺に住む25〜50歳の白人の男女です。26人を募集し、全日程に参加した24人を解析しました。そのうち制汗剤の使用者は13人、非使用者は11人でした。

参加者は共通のシャワージェルを使い、実験日は毎朝シャワーを浴び、綿のTシャツを着ました。香水などの使用や脇の剃毛にも制限を設けています。最初の二日間は、朝と約6時間後の午後に来てもらい、四回にわたって測定しました。

訓練した評価者4人が、左右の脇のにおいを0〜10で評価。全体の強さに加えて、硫黄様、酸っぱくスパイス様、脂っぽい、タマネギ様などの特徴を調べました。左脇ではpH、右脇では拭き取り試料から細菌のDNAを測定しています。

三日目には、サウナに10分間入って出た脇の汗を採取し、酸系と硫黄系のにおい物質につながる四種類の前駆体を分析しました。前駆体の測定は、においと菌を調べた日と同時ではない点にも留意が必要です。

制汗剤の使用状況で、においと細菌量に差

全体的な汗のにおいの評点中央値は、制汗剤の非使用者で3.11、使用者で1.57でした。細菌DNAを定量PCRで測って推定した菌の量も、非使用者では平均約50倍多い結果でした。皮膚のpHは使用者のほうが低くなっていました。

これは、もともとの使用者と非使用者を比較した観察結果です。同じ人に制汗剤を使う・使わない条件を無作為に割り付けた試験ではないため、「製品を使えば誰でも菌が50分の1になる」という効果量には読み替えられません。

全体のにおいや硫黄様、酸っぱくスパイス様のにおいは、概して朝より午後に強くなりました。非使用者では、男性のほうが全体のにおいや一部の特徴が強い傾向もありましたが、すべての項目・時点で有意差が出たわけではありません。

菌の大分類が同じでも、においとの関係は違う

細菌の構成を詳しく調べるDNA配列解析は、非使用者11人の44試料で行われました。使用者の試料は細菌DNAが少なく、十分な解析が難しかったためです。ここは24人全員の菌叢を同じ精度で比べた結果とは区別されます。

解析した配列の平均96%を、スタフィロコッカス属、コリネバクテリウム属、原著でプロピオニバクテリウム属と呼ばれる三つのグループが占めていました。それでも構成は人ごとに異なり、約30時間の間に同じ人の中で変わる程度より、人どうしの違いのほうが大きくなっていました。

コリネバクテリウム属の割合は、全体的なにおいの強さと正の相関がありました。対して、プロピオニバクテリウム属の割合は負の相関を示しました。スタフィロコッカス属は、属全体でまとめると、においとの明確な対応が見えませんでした。

ところが、DNA配列が似た菌をさらに細かい単位「OTU」に分けると違いが出ます。Staphylococcus hominisに分類された複数のOTUは、タマネギ様や酸っぱくスパイス様のにおいなどと正の相関がありました。一方、同じ属のS. epidermidisに分類された一部のOTUは、弱い負の相関を示しました。

また、Corynebacterium tuberculostearicumに分類されたOTUは全体のにおいやタマネギ様の特徴と、アネロコッカス属のOTUは脂っぽい特徴と関連していました。「ある属の菌は全部においを強める」と大きく括ると、この違いが隠れてしまいます。

前駆体の量だけでは、においの強さを説明できなかった

汗の前駆体濃度には大きな個人差がありました。酸系と硫黄系の前駆体の比率は男性のほうが高い傾向でしたが、測定した前駆体の濃度とにおいの強さには、明確な直接の相関がありませんでした。

においの材料があることに加え、その材料を変換する菌がどれくらい、どのような組み合わせでいるかが重要だという解釈につながります。研究者は菌の割合だけでなく、定量PCRの情報を組み合わせた量の指標でも解析し、おおむね同じ関連を確認しています。

菌どうしにも、一緒に多くなる組み合わせと、一方が多いと他方が少ない組み合わせがありました。著者らは協力や競争の可能性を考えています。ただし、割合データには合計が一定という制約があり、相関だけで菌同士の働きかけを確定することはできません。

菌を選んで調べるための、探索的な地図

詳しい菌叢解析の人数は11人で、多数の比較に対する統計補正は行われていません。四回の試料も同じ人から繰り返し採ったものです。今回の対応関係は、より大きな集団や、菌を実際に培養して機能を確かめる実験で検証する候補と考えられます。

著者らは、においを作る菌と競合する菌を増やすなど、菌叢の構成に目を向けた制御の可能性を提案しています。これは将来の方向性で、皮膚に菌を追加して消臭効果や安全性を確かめた試験ではありません。においとの負の相関が、その菌自体の消臭作用を意味するとも限りません。

まとめ

この研究では、測定した汗の前駆体濃度だけでは、脇のにおいの強さを説明できませんでした。一方、コリネバクテリウム属や一部のS. hominisの割合は強いにおいと、プロピオニバクテリウム属の割合は弱いにおいと関連していました。

制汗剤の非使用者では使用者よりにおいと推定細菌量が大きく、詳しい菌叢には個人ごとの特徴も見られました。体臭を理解するには、汗の材料、菌の総量、菌の細かな種類を一緒に見る。そのための手掛かりを、培養に依存しない方法で示した研究です。

試験はFirmenichで実施され、論文では著者4人が同社所属と記載されています。独立した資金提供欄は見当たらず、著者らは利益相反なしと申告しています。

参考文献

Troccaz M, Gaïa N, Beccucci S, et al. Mapping axillary microbiota responsible for body odours using a culture-independent approach. Microbiome. 2015;3:3. doi:10.1186/s40168-014-0064-3