Al Sacro Cuore(アル・サクロ・クオーレ)|ボローニャの香水店の歴史と、選品・接客・作り手を支える仕事

アル・サクロ・クオーレの紹介記事用静物画。温かなボローニャの街を思わせる背景に、取扱香水ポートレイト オブ ア レディーとガルデリアを配したイメージ。 香水ショップ

「これは香水の解剖です。」

— ジョヴァンニ・パドヴァン

2014年、ボローニャの香水店で、ジョヴァンニ・パドヴァンは四つの小瓶を取り出した。一つには、自ら構想した「ダッランドラ」。残る三つには、その香りを構成する個別の香りが入っていた。完成した香水を嗅がせるだけでなく、その内側まで見せる。それが、Al Sacro Cuore(アル・サクロ・クオーレ)の店主の仕事だった。

現在、マッジョーレ広場近くのフザーリ通りにあるこの店は、複数のブランドを扱うニッチ香水の専門店である。よく知られたメゾンの作品と、新たな作り手の試みが同じ選品の中にある。店の歩みをたどると、香水を見つけて売ることと、作り手を支えて客に伝えることが、深く結びついてきたのが分かる。

基本情報

  • 名称:Antica Profumeria Al Sacro Cuore(アンティカ・プロフメリア・アル・サクロ・クオーレ)
  • 起源:1965年、リア・ロ・ブルット(Lia Lo Brutto)がボローニャのマッテオッティ通りで開業
  • 専門店としての転換:1990年、リアと夫ジョヴァンニ・パドヴァン(Giovanni Padovan)による香水の探究を軸とした店づくり
  • 現在の運営:リアと子どもたちのジャンルカ、ベアトリーチェが歩みを継ぐ
  • 主要実店舗:イタリア・ボローニャ、Via de’ Fusari 6c, 40123 Bologna
  • 業態:複数ブランドを扱う香水専門店。オンライン販売も行う
  • 公式サイト:Profumeria Al Sacro Cuore

リアの店から、香水を探究する専門店へ

1965年の開業と、1990年の転換

店の歴史には、二つの出発点がある。リア・ロ・ブルットがマッテオッティ通りで香水店を開いたのは1965年。サクロ・クオーレ・ディ・ジェズ教会の近くにあった店が、その起源である。そして1990年、リアとジョヴァンニが、現在につながる専門店の構想を形にした。

ジョヴァンニの仕事の出発点はファッションだった。古いものを見直しながら新しい表現を探る文化に触れていた彼は、イギリスへの旅で出会った小さな店から、専門性を徹底する商いの着想を得た。幅広い品目をそろえるより、香水そのものに深く向き合う。その方向を、妻とともにボローニャで実践していった。

イタリアで「プロフメリア・ディ・リチェルカ」と呼ばれる、香水を探究し選び出す店である。大量に知られた商品だけで売場を作るのではなく、まだ客になじみのない香りを見つけ、その背景や違いを説明する。選ぶ側の知識と、勧める相手との対話が必要になる仕事だった。

1994年4月には、ガッレリア・ファルコーネ・エ・ボルセリーノの新店舗を開く。その後、2017年からフザーリ通りへ。店の形や場所は変わっても、香水を専門に扱い、その表現を伝えるという軸は続いた。

新しい香水を迎える前から、作り手と関わる

夫妻の仕事は、完成した商品の中から仕入れを選ぶところに限られなかった。イタリアのブランドMONOM(モノム)との関係が、それを具体的に示している。

レナート・ボンジョルノが自分の香水を構想する過程では、ジョヴァンニとの幾度もの会話が、新しいブランドの発想を育てた。調香師ニコラ・ビアンキと制作を進める段階でも、リアとジョヴァンニは作品の評価に関わっている。2014年11月27日、モノムはこの店で最初の七つの香りを発表した。

「ここでブランドを発表しました。この店が、私たちの最初の顧客でした。」

— シモーネ・ボンジョルノ(モノム共同創設者)

シモーネにとって重要だったのは、販売の機会だけではない。開発中に迷いが生じたとき、ジョヴァンニは、自分たちの直感を信じて先へ進むよう背中を押した。夫妻への感謝は、作品名にも残る。ローズの香り「ロザリア」は、その香りを嗅いだリアの熱意にちなむ。別の作品「イルマオ」の名には、レナートがジョヴァンニから受け取った、ポルトガル語で「ありがとう、兄弟」を意味するメッセージが関わっている。

メオ・フシューニもまた、夫妻が進む方向だけでなく、間違いにも気づかせてくれたと語っている。作品を仕入れることが、作り手の判断を支えることにもなる。アル・サクロ・クオーレの選品には、こうした長い関係が重なっている。

ジョヴァンニの死後も続く家族の仕事

ジョヴァンニは2023年5月1日、84歳で亡くなった。香水を探し、客や作り手と語り合ってきた仕事は、リアと子どもたちへ受け継がれている。

2025年、リアの開業から60年の節目に再び発表された「ガルデリア」は、その継承を目に見える形にした香水だった。最初のガルデリアは2015年、ジョヴァンニが妻と店の50年に捧げたもの。10年後の版では、長く親交のあった建築家・調香師アントニオ・ガルドーニが再び構想を担い、処方とボトルの形を更新した。

「私にとって、愛の香水です。」

— リア・ロ・ブルット(ガルデリアについて)

2025年版の栓の着想源は、ジョヴァンニの個人コレクションにあった1930年代のボトルである。過去の品をそのまま保存するだけでなく、蓄えたものを次の形へ変える。店主夫妻の関係と、香水を見つめてきた時間が、一つの作品にも残されたのである。

アル・サクロ・クオーレの年表

年 出来事
1965年 リア・ロ・ブルットがマッテオッティ通りで開業。
1990年 リアとジョヴァンニが、現在につながる香水専門店の構想を形にする。
1994年 4月、ガッレリア・ファルコーネ・エ・ボルセリーノの新店舗を開く。
2014年 ジョヴァンニがSmell Festivalでダッランドラを発表。11月27日には、店でモノムの最初の七作品が発表される。
2015年 リアの開業50年にガルデリアが誕生。
2017年 フザーリ通りへ移る。
2023年 5月1日、ジョヴァンニが死去。
2025年 開業60年に合わせてガルデリアを更新。

知られたニッチ香水と、新しい作り手を並べる選品

現在の公式カタログには、ル ラボ、フレデリック・マル、バイレード、クリード、メゾン フランシス クルジャン、ナソマットなどが並ぶ。ル ラボの「サンタル33」「アナザー13」、フレデリック・マルの「ポートレイト オブ ア レディー」「カーナル フラワー」も、実際の商品ページを伴って扱われている。

その一方で、モノム、ボーグ、ペクジ、ピュアディスタンス、リトといった名前も選品に含まれる。自店のガルデリアだけを中心にした店ではなく、複数の作り手の表現を横断できる構成である。知られた作品を入口にしながら、その隣にある別の発想へ進めるところに、この店を訪れる意味がある。

ただし、その幅をブランド数だけで測ると、夫妻の仕事の一部が見えなくなる。モノムの開発に関わったように、選品の手前には、まだ名前の定まらない試みを嗅ぎ、意見を交わす時間があった。店に置くという判断は、完成した一本だけでなく、それを作る人との関係にも結びついてきたのである。

香水を分解して伝える接客と試香

四つの小瓶で見せた、ダッランドラの内側

冒頭のダッランドラは、ジョヴァンニと、幼いころから知る音楽家ルーチョ・ダッラとの会話から生まれた。ダッラは店を訪れるたび、一緒に香水を作ろうと持ちかけていた。しかし、その計画を実現する前に亡くなってしまう。2014年、Smell Festivalの企画が、友人への約束を形にする機会となった。

「トップにはインクを選びました。」

— ジョヴァンニ・パドヴァン

そこには、曲を書く友人の姿があった。チョコレートの香りには、かつてダッラのために組み合わせ、彼が船で使うのを好んだ香りの記憶が関わる。完成品と、その構成を説明する三つの香りを並べたのは、単に珍しいものを嗅がせるためではない。一つの香水が、人物の記憶や創作上の選択から成り立っていることを、鼻でたどれるようにするためだった。

この姿勢は、文化活動ともつながる。2015年の「香水の解剖」をテーマとした催しでは、ジョヴァンニ・サンマルコが素材や発想から香水の制作を説明し、その後、会場をこの店へ移して、ボローニャ美術アカデミーの学生が作った服と香水を組み合わせた。香りを別の表現と出会わせ、言葉だけでは伝わりにくい制作の中身へ近づく場でもあった。

対話で選び、持ち帰って確かめる

現在、店が案内する接客も、一人ひとりの記憶や感情、身に着ける人のあり方を聞くところから始まる。店側が選び抜いた香水があっても、最後に向き合うのは、それを使う個人である。作品の背景を説明する知識と、客の話を聞く仕事が組み合わされている。

オンラインでは、スプレー式のサンプルを試せる「サンプルカード」も案内されている。希望の香水を選ぶほか、好みの手がかりを伝えて、店に組み合わせを相談する方法も案内されている。ただし、ル ラボや一部の高額作品、オイル香水などは対象外で、このサービスの配送はイタリア国内に限られる。カタログにある全作品を同じ条件で試せるわけではない。

2026年10月時点で訪問先として案内されている主要実店舗は、イタリア・ボローニャのフザーリ通り6cである。公式の通常営業時間は月曜から土曜の10時〜19時、日曜休業。過去のガッレリアの住所と混同せず、訪問前には公式の最新案内を確かめたい。

アル・サクロ・クオーレの歩みを特徴づけるのは、香水を選ぶ人が、作る人と使う人の両方に関わってきたことである。新しい表現を迎え、その中身を説明し、目の前の人に合うかを一緒に考える。四つの小瓶を並べたジョヴァンニの仕事は、その関係をよく表している。

参考文献