Crime Passionnel(クリム・パッショネル)|コペンハーゲンの香水店の創業と、選品・接客・試香の仕事

温かな光と暗赤色の布、試香紙を背景にした、取扱香水ナゾマット「ブラック アフガノ」の静物とCrime Passionnelの文字 香水ショップ

「私たちが、いわば信じている香水だけを扱います。」

— アイヴァラス・スタネヴィチウス(共同創業者)

デンマーク・コペンハーゲンの小さな通り、ヒュスケンストレーゼにあるCrime Passionnel(クリム・パッショネル)は、複数の香水ハウスの作品を集めたニッチ香水専門店である。ナゾマット、マルク=アントワーヌ・バロワ、ナオミ・グッドサーなどを扱い、作り手ごとに異なる表現を一つの店でたどれる。

その出発点には、好きな香水を買うために旅をしなければならなかった、一人の愛好家の経験がある。香水を選んで棚へ運ぶことと、客が自分の鼻で確かめる時間をつくること。二つの仕事を、店の歩みから見ていきたい。

基本情報

  • 名称:Crime Passionnel(クリム・パッショネル)
  • 設立:2014年(店舗の公式企業プロフィールによる)
  • 共同創業者:Aivaras Stanevicius(アイヴァラス・スタネヴィチウス)、Domas Monkevičius(ドマス・モンケヴィチュス。Domas Monkの名でも紹介される)
  • 主要実店舗:デンマーク・コペンハーゲン
  • 所在地:Hyskenstræde 14, 1207 København, Denmark
  • 業態:複数ブランドのニッチ香水専門店。公式オンラインショップも運営
  • 公式サイト:Crime Passionnel

二人の友人がコペンハーゲンに香水店を開くまで

贈り物を受け取りに行った店で、自分の一本に出会う

アイヴァラスがニッチ香水に惹かれたきっかけは、友人のための贈り物だった。ある香水店へ品物を受け取りに行き、自分のためにも一本買って帰った。その偶然が、香水を探す暮らしの始まりになった。

ドマスとは、香水業界に入る以前からの友人である。二人には、パーティーやコンサート、文化イベントを企画する仕事を共にした経験があった。学業を終えた後、ドマスは旅を続け、アイヴァラスはノルウェーで複数の事業を営んだ。

ノルウェーで感じた買いにくさを、店づくりへつなげる

ノルウェーで暮らすアイヴァラスには、スカンディナヴィアで欲しいニッチ香水を見つける難しさがあった。面白い作品を探すたびに、ほかの土地へ出かける必要があったのである。コペンハーゲンへ移っても、その感覚は変わらなかった。ファッションの都市に、彼らが求める香水専門店をつくる。それが開店の動機となった。

2014年を設立年とするクリム・パッショネルは、ヒュスケンストレーゼ14番地で店の個性を育てていく。2015年3月のデンマークの媒体XQ28は、アイヴァラスとドマスの二人を店の仕掛け人として紹介し、すでにこの住所にある店を訪ねている。

店名を空間にした、犯罪映画のような演出

フランス語の店名が指すのは、激情に駆られた犯罪である。開店初期の店には、客を事件の事情聴取へ招くような発想があった。XQ28が描いたのは、粗い質感と機能性が同居し、香水の実験室を思わせる空間だ。瓶を買う行為に、少し芝居がかった入口を設けていたのである。

公式企業プロフィールにも、赤い口紅の跡、血痕を思わせる細部、流れるようなドレープを使い、フィルム・ノワールの場面を思わせる店内をつくる考えが示されている。店名、視覚的な演出、香水の体験をつなげることが、この店の構想に含まれている。

クリム・パッショネルの年表

年 出来事
2014年 公式企業プロフィールに記された設立年。
2015年 3月、XQ28が二人の創業者とヒュスケンストレーゼの店舗を紹介。
2016年 8月、ナオミ・グッドサーが同店とアイヴァラス、ドマスを公式サイトで紹介。
2018年 2月、ナオミ・グッドサーの「ニュイ ドゥ バケリット」を題材としたウィンドーディスプレーを展開。
2019年 7月、ピュアディスタンスが同店でのプレゼンテーションを報告。
2026年 同住所の実店舗とオンラインショップを公式に案内。

選品は、作り手と会い、自分たちで選ぶ仕事

展示会と香水ハウスを訪ねる

「香水はすべて、自分たちで選びました。」

— アイヴァラス・スタネヴィチウス

二人は自分たちの感覚を信頼し、展示会や香水ハウスへ足を運んで作品を探してきた。店頭の品ぞろえは、単に珍しい名前を集めるだけでなく、自分たちが納得して扱える香水を選ぶという判断の積み重ねである。

その関係は、取扱ブランド側の記録にも残る。ナオミ・グッドサーは2016年に二人と店を紹介し、2018年には「ニュイ ドゥ バケリット」のウィンドーディスプレーを公開した。香水を仕入れて置くだけでなく、一つの作品を街に向けて見せる場所にもなっていたのだ。

ピュアディスタンスは2019年7月のプレゼンテーションの記録に、アイヴァラスとドマスの写真を掲載した。当時、同ブランドのデンマークにおける正規販売店はクリム・パッショネル一店だった。ブランドの人々が店を訪れ、香水の背景を伝える場が生まれていたことが分かる。

ナゾマットからマルク=アントワーヌ・バロワまで

2026年10月の公式カタログでは、Nasomatto(ナゾマット)の「ブラック アフガノ」「バラオンダ」、Marc-Antoine Barrois(マルク=アントワーヌ・バロワ)の「ガニメデ」「アンセラード」「ティリア」など、具体的な作品の販売ページが設けられている。著名なニッチブランドの名前を掲げるだけでなく、実際に複数の作品を扱う店である。

ほかにもFrancesca Bianchi(フランチェスカ・ビアンキ)、Parfum d’Empire(パルファム ドゥ エンパイア)、Profumum Roma(プロフムム ローマ)、Orto Parisi(オルト・パリージ)、Naomi Goodsir(ナオミ・グッドサー)などが並ぶ。多ブランドの完成した香水を横断して知ることが、この店を訪れる中心的な体験となる。

選品の幅は、香りについての情報の出し方にも表れる。ナゾマットの紹介では、調香師が香料を明かさず、嗅ぐ人自身の解釈を大切にする考えを伝えている。一方、マルク=アントワーヌ・バロワの紹介では、デザイナーと調香師カンタン・ビシュの出会いを説明する。作品ごとに異なる入口を残しているのである。

接客と試香は、店を出た後にも続く

20年使った香水から、別の香りへ

店主の仕事を具体的に伝えるのが、2022年11月の専門誌『Fagbladet Kosmetik』に登場する一人の客の話だ。20年間同じ香水を使っていたその客は、新しい香りを探しに来た。アイヴァラスは自由に香りを試してもらい、客は両手首に二つの香りをつけ、さらに香水を吹きつけた試香紙を持って帰った。

翌日、その客は再び店を訪れ、公園の匂いを以前とは違うように感じられたと話した。一本を即決する場面ではなく、香水との出会いが、店の外で匂いへ注意を向けるきっかけになった場面である。

「嗅覚は、食べるときにも、人と交流し、コミュニケーションを取るときにも使うものです。」

— アイヴァラス・スタネヴィチウス

この言葉は、パンデミック後に嗅覚の喪失や変化を経験した客と話す機会が増えた、という文脈にある。店頭の相談は好みの分類だけで終わらず、匂いが日々の暮らしで担う役割にも及んでいた。

「自分の鼻に従う勇気があれば、鼻はたくさんの新しい経験を与えてくれます。」

— アイヴァラス・スタネヴィチウス

すぐに分からない香りにも、時間を渡す

デンマークの美容媒体Pudderdåserneは2023年、店を訪れるなら時間に余裕を持つことを勧めている。鼻が疲れたら近くのカフェへ出かけ、その間に肌の上の香りが変化するのを待つ。書き手自身も、最初の出会いから数時間、あるいは数日たって香りに納得したことがあるという。

アイヴァラスの知識や案内、香水にまつわる話を評価するこの訪問記は、専門誌の接客例とよく重なる。説明を聞くことと、説明から離れて自分の反応を確かめること。その両方に時間を使えるところに、この店の試香を理解する手がかりがある。

現在訪問できるコペンハーゲンの店舗

2026年10月15日時点で公式に訪問先として案内されている主要実店舗は、デンマーク・コペンハーゲンのHyskenstræde 14にある。アイヴァラスが以前暮らしていたノルウェーではなく、現在の店舗所在地はコペンハーゲンである。

公式の営業時間は月曜〜金曜11〜18時、土曜11〜16時、日曜休業。最新の案内は公式の店舗ページで確認できる。オンラインショップにも商品とディスカバリーセットが並び、「ブラック アフガノ」などには2mlのサンプルの選択肢もある。実店舗で店主と香りを探す時間と、自宅で少量を確かめる入口を持つ専門店である。

参考文献

  1. Crime-passionnel:Aivaras Stanevicius Q&A — The Olfactive
  2. Boutique:現行店舗・所在地・営業時間・取扱ブランド — Crime Passionnel
  3. 公式企業プロフィール:設立年と店内コンセプト — Crime Passionnel
  4. Crime Passionnel — Daniel J. Delove, XQ28(2015年3月26日)
  5. BEHIND THE DOORS OF … Crime Passionnel, Copenhagen — Naomi Goodsir(2016年8月31日)
  6. A WINDOW IN COPENHAGEN, Denmark — Naomi Goodsir(2018年2月19日)
  7. PUREDISTANCE PRESENTATION AT CRIME PASSIONNEL IN THE HEART OF COPENHAGEN — Puredistance(2019年7月6日)
  8. Nasomatto:ブランド紹介と現行取扱作品 — Crime Passionnel
  9. Marc-Antoine Barrois:ブランド紹介と現行取扱作品 — Crime Passionnel
  10. Ja, livet ER skønt — Anne Jydby Absalonsen, Fagbladet Kosmetik(2022年11月号/ウェブ掲載2023年1月10日)
  11. Fredagsfavorit: Crime Passionnel — Pudderdåserne(2023年1月20日)
  12. Black Afgano:現行商品・サンプル・ボトル画像 — Crime Passionnel