セーターを脱いだら、すぐ洗濯かごへ入れる。それとも、においや汚れを確かめて、もう一度着るでしょうか。北欧の消費者を調べた研究では、羊毛の衣類は、似た綿の衣類より洗濯までに長く使われていました。羊毛では「着たら洗う」という決まりより、そのときの状態を見て決める姿も浮かび上がりました。
2016年に発表されたこの論文は、洗濯頻度だけでなく、温度、洗剤、乾燥、手入れへの不安まで調べています。目的は、羊毛の性質と実際の生活習慣を合わせて考え、衣類の手入れに伴う環境負荷を減らす余地を探ることでした。
二つのアンケートと、30人への聞き取り
研究者は、ノルウェーの1,124人が回答した調査Aと、546人が回答した調査Bを用いました。Aは人口構成に合うよう重み付けした調査です。Bは複数の経路で参加者を募り、女性や高学歴の人が多かったため、国全体を代表する標本とは扱っていません。
さらに、別の募集で集まった131人から、羊毛を使う経験などに幅が出るよう30人を選び、聞き取りを行いました。ノルウェーとスウェーデン各15人で、女性25人、男性5人です。質問の主題を決めつつ会話を進め、普段の衣類に加えて、羊毛の肌着や寝具を使うことへの考えも尋ねました。
ここで新しく得たデータは、消費者が報告した習慣と認識です。論文後半では、それを既存の繊維・洗濯の実験研究と照らし合わせています。参加者の衣類からにおい成分や菌数を測った調査ではないため、報告された着用の長さは、実生活での判断を表す数字として読む必要があります。
羊毛のセーターは、綿より洗濯までの使用が長い
調査Aでは、洗濯までの平均使用回数は羊毛のセーターが8.9、綿のセーターが4.7でした。羊毛の肌着は3.9、綿のTシャツは2.8で、こちらも羊毛の方が長く使われていました。
原著の表はこの値を「日数」と表記していますが、付録の質問文は「何回使うか」と尋ねています。そのため、8.9日間続けて着たという厳密な日数ではなく、洗濯の間にどれくらい着用するかの回答と捉えるのが適切です。また、Aの集計では100以上の極端に大きな回答を除いており、セーターの中央値は羊毛5、綿3でした。平均だけで全員の習慣を表せるわけでもありません。
綿のTシャツや下着、化学繊維のスポーツウェアでは、少ない着用回数で洗う回答が多い一方、羊毛では人による幅が大きくなっていました。聞き取りでも、運動で汗をかいたらすぐ洗う人、通勤で短時間着ただけなら次にも使う人など、着用場面に応じた判断が語られています。
においを確かめる習慣と、風を通す手入れ
調査Bでは、衣類をリフレッシュするために風を通す手入れは、羊毛で他の素材よりよく行われていました。聞き取りには、山小屋など洗濯しにくい場所で、汗を含んだ衣類を積み重ねず、広げて乾かしながら繰り返し使う例も出てきます。
興味深いのは、そうした方法を知っていても、普段の暮らしでは十分に使っていない人がいたことです。屋外に干せる場所が必要だと思う人や、においが気にならなくても清潔さには確信を持てない人もいました。素材の性質を知ることと、日々の手入れを変えることの間には、生活空間や安心感の問題が挟まっています。
著者らは、羊毛の汗臭が風を通すことで弱まるという既報を参照し、洗濯の一部を部分的な汚れ落としや風通しに置き換える可能性を論じました。今回の調査から直接分かったのは、その方法への理解と実践のずれです。においの弱さ、目に見える汚れ、微生物に関する清潔さをどう結び付けるかは、さらに調べるべき課題として残っています。
低温で洗えることが、安心につながるとは限らない
調査Bでは、羊毛の衣類は似た綿の衣類より低い温度で洗われ、多くは30℃でした。調査Aでは、羊毛を主に洗濯機で洗う人が70%、手洗いする人が19%です。少なくとも、このノルウェーの調査では、羊毛の手入れは手洗いだけに頼っていませんでした。
一方、肌着や寝具については「低い温度できちんと清潔になるのか」という不安が目立ちました。ノルウェーの聞き取りでは専用洗剤と羊毛用コースが共通の手順として語られたのに対し、スウェーデンの聞き取りでは専用洗剤を知らない、持っていないという人もいました。この違いは、選ばれた各15人から得た質的な知見です。
また、羊毛を別に洗う人は調査Bの73%でした。羊毛の服を少ししか持たない場合、まとめて洗える量がたまらず、長く待つか、少量で洗うかになりやすい。汚れを落とす力への不満もあり、羊毛の扱いにくさは、繊維そのものだけでなく、洗濯物の分け方や所有する服の数にも関わっていました。
縮みを頻繁に経験する人は調査Aの7.7%です。縮みの問題がない人の方が洗濯機を使う割合は高かったものの、これだけで手洗いが縮みの原因とは決められません。縮んだ経験から手洗いへ切り替えた可能性や、防縮加工など衣類側の違いも考えられるためです。
洗う人の工夫と、洗濯機・洗剤の開発を一緒に考える
論文の考察は、消費者に洗濯回数を減らすよう求めるだけで終わりません。汚れが落ちたと納得できる羊毛用の洗剤やコース、衣類を傷めず乾燥時間を短くする脱水、少量の羊毛を扱いやすくする仕組みなど、技術側の課題も挙げています。
たとえば、高い脱水回転数で残る水分が減ったという既報を紹介する一方、濡れた繊維が動いて絡み合うと縮みやすいため、回転数だけでなく加速・減速の仕方が重要だと説明しています。高温処理や異なる素材を一緒に洗う議論も、限られた既存試験に基づく開発上の検討です。個々の衣類の表示を越えて洗い方を変更するための一律の手順にはなっていません。
環境面でも、今回、新たなライフサイクル評価で羊毛製品の総負荷を計算したわけではありません。実際の洗濯頻度や温度を把握し、手入れの負荷を減らすには、素材、機械、知識、習慣をまとめて考える必要があると示した研究です。
まとめ
ノルウェーの調査では、羊毛のセーターや肌着は、似た綿の衣類より洗濯までに長く使われ、低い温度で洗われていました。羊毛では着用後の状態を確かめる判断や、風を通す手入れが見られる一方、清潔さへの不安、しみ落ちへの不満、少量を別洗いする不便さも浮かび上がりました。
この研究が教えてくれるのは、洗濯の頻度は、においと汚れだけで自動的に決まるものではないということです。素材への経験や安心感、洗濯機の使いやすさまでが、次に洗うタイミングを形作っています。環境負荷を減らす手がかりも、こうした生活上の判断と、手入れを支える技術の両方にあります。
著者2人は、論文掲載時にノルウェーの消費研究機関SIFOに所属しています。確認した原著には、独立した研究資金・利益相反の声明は見当たりませんでした。
参考文献
Laitala, K., & Klepp, I. G. (2016). Wool Wash: Technical Performance and Consumer Habits. Tenside Surfactants Detergents, 53(5), 458–469. 原著論文/著者公開全文


