まだ着られそうなのに洗うのはなぜ?嫌悪感と洗濯の判断

まだ着られそうなのに洗うのはなぜ?嫌悪感と洗濯の判断 香りの科学

「まだ着られそうだけれど、匂いが気になるから洗おう」。洗濯の判断には、汚れの量だけでなく、不快感や人の目、清潔についての考え方が関わります。2024年の研究は、そうした心理が、衣服を何回着るか、少量でも洗濯機を回すかという日々の行動を通じて、洗濯頻度と結び付く可能性を示しました。

ただし、嫌悪感を操作して洗濯回数が増えることを確かめた実験ではありません。スウェーデンの三つの調査から、洗濯に特有の心理を測る質問と、その関係を説明するモデルを探索した研究です。

「洗濯機を回す」より前の判断に注目する

研究者が調べたのは、汚れや匂いへの嫌悪感、不潔だと思われる恥ずかしさ、清潔さに関する規範、環境への考え方、そして洗濯前の習慣です。環境に配慮したい気持ちがあっても、目の前の服をもう一度着ることには抵抗がある、という競合を考えています。

最初のオンライン調査では、家庭で洗濯に関わるスウェーデンの成人について、994人分を解析したと報告されています。月の洗濯回数、衣服を着る回数、少量洗いなどと、心理に関する質問への回答を集めました。

次に、洗濯に至る具体的な理由を探るため、39人が四つのグループに分かれ、各2時間の匿名の文字チャットに参加しました。汚れた服を着ることへの抵抗が強い人や、少量洗い・少ない着用回数での洗濯をする人を選んだ、目的を絞った聞き取りです。

その結果をもとに質問を改め、別のオンライン調査で927人分を解析しました。環境面についても、「洗濯が環境負荷を生むと思うか」から、「環境に配慮することが自分らしさの一部か」という自己認識へと、より詳しく測っています。

嫌悪感の強い人は多く洗う、ただし単純比較と調整後は違う

最初の調査で、嫌悪感が低い側の4分の1と高い側の4分の1を比べると、1人当たり月の洗濯回数は平均4.23回と5.38回でした。後の別調査でも、4.33回と5.61回で、嫌悪感が高い側ほど洗濯頻度が高い関係が見られました。

恥ずかしさや清潔規範も、同様の単純比較では高い側ほど頻度が高い傾向でした。一方、環境についての信念や環境配慮の自己認識では、高い側と低い側の洗濯頻度に有意な差はありませんでした。

ところが、家庭の人数、子どもの人数、収入や、洗濯に先立つ行動を一緒に入れた回帰分析では、四つの心理指標の直接的な関連はいずれも有意ではなくなりました。家族構成や行動も含めて考えると、「嫌悪感の点数だけで洗濯回数が決まる」という説明では足りなかったのです。

何回着るか、どれくらい入れて洗うかが間にある

聞き取りで見えてきたのは、洗濯機を動かす直接のきっかけが、必要な服がある、洗濯かごがいっぱいになった、今なら洗える、といった事情だということです。心理はスイッチを押す瞬間より、服を洗濯かごへ入れる段階や、少量でも洗う判断に関わるかもしれません。

そこで研究者は、心理と洗濯頻度の間に、衣服の着用回数、洗濯機の詰め方、汚れの判定、寝具を替える間隔などを置いたモデルを検討しました。単独の心理指標ごとに調べた後、複数の心理が重なる影響も扱える構造方程式モデルへ進んでいます。

最終モデルでは、嫌悪感が強いほど着用回数が少なくなり、少量で洗うことも増え、それらを通じて洗濯頻度が高くなる方向の関連がありました。一方、環境に配慮する自己認識は、着用回数や洗濯物の入れ方を通じて、頻度が低くなる方向に関連していました。

つまり、環境意識と洗濯回数を直接比べるだけでは見えにくかった関係が、その間にある行動を考えたときに表れたという結果です。ただし、質問紙のデータから組み立てた統計モデルなので、矢印の向きがそのまま実生活の原因と結果を証明するわけではありません。

恥や清潔規範は、測り分け自体が課題

尺度づくりにも重要な結果がありました。恥ずかしさは嫌悪感や清潔規範との重なりが大きく、最終モデルでは除かれました。これは恥ずかしさが洗濯に無関係と分かったという意味ではなく、今回の質問では独立した働きとして測り分けにくかったということです。

清潔規範の関連は、モデルを変えると方向が逆転しました。単独の分析では頻度を高める方向でしたが、最終モデルでは少量洗いを介して頻度を下げる方向です。ほかの心理との重なりや、質問項目の不足などが考えられ、安定した結論には至っていません。

最終モデルは一部の適合指標を満たした一方、CFIは0.865で、採用した基準に達しませんでした。質問項目も洗濯向けに探索したものなので、別集団での検証が必要です。これらの尺度とモデルを作って確かめること自体が、論文の主要な目的でした。

環境への説明だけでなく、ためらう理由を考える

著者は、洗濯回数を減らす取り組みでは、環境への利点だけを説明するよりも、服をもう一度着るときの抵抗や、少量で洗う事情に目を向ける必要があると提案しています。これは今回の結果に基づく提案で、そのような働きかけが実際に回数を減らすかを検証した介入試験ではありません。

また、測ったのは本人が答えた洗濯頻度や判断であり、衣服の菌数、実際の臭気、衛生上の必要性ではありません。何回まで着てよいかという共通の基準を示す研究ではなく、洗う判断を理解する研究です。

まとめ

嫌悪感が強い人ほど洗濯頻度が高いという単純な関連は、二つの調査で見られました。ただし、行動や家族構成を調整すると心理指標の直接効果は明確ではなくなり、最終モデルでは、少ない着用回数や少量洗いを介した関連が示されました。環境に配慮する自己認識は、同じ行動を介して頻度を下げる方向でした。

服を洗うかどうかは、清潔さと環境配慮の知識だけでは説明しきれません。洗濯かごに入れる前の気持ちや習慣を測ることで、変えにくい日常行動を理解しようとした研究です。

研究はFormasの助成を基盤に、Electrolux Professional、HSB Levande Lab Utveckling HBの支援を受け、公開費用はChalmers工科大学が負担しています。著者らは利益相反なしと申告し、資金提供者は研究設計・解析・公表判断などに関与しなかったと記しています。

参考文献

Klint E, Peters G, Johansson L-O. (2024). Pro-environmental behaviour is undermined by disgust sensitivity: The case of excessive laundering. PLOS ONE, 19(6), e0302625. 原著論文・公開全文