トイレの芳香剤は、香りが違うと不快感の抑え方も違う?

トイレの芳香剤は、香りが違うと不快感の抑え方も違う? 香りの科学

トイレに芳香消臭剤を置くと、排便臭の不快さはどれほど変わるのでしょうか。集合住宅のトイレで疑似的な排便臭を発生させた研究では、二つの芳香消臭剤を置いた条件で、無設置よりもにおいの不快度が低く評価されました。

この研究のもう一つの狙いは、実際の暮らしに近い環境で効果を測る方法を作ることです。密閉袋の中で香りと悪臭を混ぜる試験に加え、換気のあるトイレで、便器から出たにおいが時間とともにどう感じられるかを調べました。

便器からにおいを出し、外の小窓から評価する

使ったのは、同じ間取りと仕様で、もともとのにおいに差がなかった集合住宅のトイレ3室です。各室の容積は約1.9 m³。換気扇は試験中ずっと動かし、換気回数は約12回/時でした。室温は19±4℃、湿度は51±10%と報告されています。

二つの部屋には、フローラル調の試料Aとハーバル調の試料Bを一つずつ置き、もう一つは何も置かない対照にしました。AとBは同じ消臭成分を同量配合した液体芳香消臭剤で、Bは既存の袋を使う試験で排便臭に比較的高い効果を示した香りです。室内の香りが安定するよう、設置から24時間以上空けました。

排便臭のモデルには、硫化水素、メチルメルカプタン、アリルメチルスルフィドを組み合わせています。これを便器内の箱に入れ、外から紐を引いて蓋を開けることで、においの発生開始をそろえました。

参加者が部屋に出入りして気流を乱さないよう、ドアは小さな嗅ぎ窓のあるアクリル板に交換しました。参加者は室内に入らず、高さ135 cmの窓からにおいを評価します。芳香消臭剤の置き場所は、無設置の部屋も含めて容器で隠し、見た目の条件をそろえています。

23人が、不快さと受け入れられるかを評価

対象は、普段トイレで芳香消臭剤を使う20〜49歳の男女です。嗅覚検査などの条件を満たした23人が、におい発生前と、発生から1、3、5、7、9分後に評価しました。

測ったのは二つです。一つは、快い側から不快な側までの9段階の評定。もう一つは、そのトイレのにおいを受け入れられるかという容認性でした。臭気分子をどれほど除去したかではなく、混ざった空気を人がどう感じるかを調べています。

原著本文では、A、Bとも、発生後の全評価時点で無設置より不快度が有意に軽減したと報告しています。平均評点の差は、Aが0.9〜1.3、Bが1.4〜2.0でした。ただし、図10の3分後にはBと対照の有意差表示だけがあり、Aの同時点の表示は確認できません。この箇所は本文と図の表示を区別して読む必要があります。

具体的に5分後を見ると、無設置の平均は−2.0で「不快」に相当し、Aは−1.0で「やや不快」、Bは−0.3で中立に近い側でした。芳香消臭剤の存在で、悪臭を含む空気全体の印象が変わったことがわかります。なお、悪臭を発生させる前から、芳香消臭剤を置いた部屋は無設置より快く評価されていました。これらは空間全体の快・不快の評点で、悪臭だけの強さや臭気分子の除去量ではありません。

ハーバル調の方が、平均では不快さが小さかった

AとBを比べると、発生後の五つの時点すべてで、Bの方が不快度の低い平均値を示しました。差は0.4〜0.8ポイントです。消臭成分の種類と量が同じであることから、著者らは、香りの違いによる感覚的な効果の差と解釈しています。

ただし、二つの香りの直接比較について、図には各時点の有意差が示されていません。今回の二処方で平均の方向がそろった結果を、ハーバル調ならどれでもフローラル調より優れる、という一般的な順位にはできません。

においを「受け入れられない」と答えた割合も、おおむね設置条件で低くなりました。例えば5分後は、無設置82.6%、A65.2%、B39.1%でした。一方、1分後のAは無設置と同じ52.2%です。容認性について原著は、参照した規準が求める60人以上に達していないため、23人の結果を参考値として扱っています。

時間と換気を含めて測る意味

不快度はにおい発生直後から増し、おおむね5〜7分頃に強くなった後、軽くなる方向へ変わりました。「受け入れられない」という回答の割合は、条件によって5分または7分後に最大になっています。

こうした時間変化は、芳香消臭剤を置かない部屋にもありました。著者らは、便器からのにおいの拡散と、動き続ける換気扇による排気の影響が大きいと考えています。後半の不快度低下を、すべて芳香消臭剤だけの働きに帰すことはできません。

この時間経過を測れる点が、密閉袋だけの試験にはない特徴です。一方、換気のないトイレや、容積、温湿度が違う場所では、悪臭と芳香の濃度も変わります。研究は実際の住宅を使っていますが、条件を管理した疑似排便臭の試験であり、あらゆる家庭の使用状況を再現したものではありません。

袋の中の試験とも、同じ方向の結果になった

研究者たちは、従来の芳香消臭脱臭剤協議会の方法でも比較しました。密閉したエアバッグに芳香と疑似排便臭を混ぜ、18人が快・不快度を評価しています。住宅試験の23人との重複は明示されていないため、二つの人数は合算できません。

袋の試験では、悪臭だけが平均−2.9、Aを混ぜると−0.8、Bを混ぜると0.2となり、A、Bとも悪臭だけの場合より有意に不快度が低くなりました。Bの平均がAより快い側になる方向も、住宅試験と共通しています。

著者らはこの一致から、住宅を使う方法も、実使用に近い環境で芳香消臭剤を評価する手段として使えると結論づけています。検証したのは二つの試料であり、異なる製品や環境でどこまで一致するかは、今後の検討になります。

まとめ

換気のある住宅トイレで疑似排便臭を発生させると、芳香消臭剤を置いた条件は無設置より不快度が低く、試したハーバル調はフローラル調より快い側の平均値を示しました。従来の袋の中の試験でも、同じ方向の結果が得られています。

この研究は、感覚的な消臭効果を、においの発生場所、時間経過、換気を含む空間で評価する方法を示しました。何をどれほど取り除いたかという化学分析とは別に、その空間を人がどれほど不快に感じるかを測る意味がよくわかる例です。

研究当時、著者3人はいずれも小林製薬に所属していました。確認した原著には、独立した研究資金と利益相反の声明は見当たりません。

参考文献

松本浩志、鈴木隆夫、松宗憲彦.実使用環境を想定した空間におけるトイレ用芳香消臭剤の消臭効果の検証.におい・かおり環境学会誌.2019;50(5):358–364.doi:10.2171/jao.50.358.