シャンプーは香りが違うと、手ざわりまで違って感じる?

シャンプーは香りが違うと、手ざわりまで違って感じる? 香りの科学

同じシャンプーでも、香りが変わると「べたつく」「とろみがある」といった手ざわりの評価が変わることがあります。2009年の研究は、香りだけを替えたシャンプーを家庭で使ってもらい、手に取ったときから髪が乾いた後までの感じ方を調べました。

最もはっきりした違いは、原液や洗っている最中の感触に現れました。とくに、手に取った原液のべたつきは、幅広い香調を比べても、比較的似た香調を比べても差が見られた項目です。

まず、使う人の言葉から評価項目を作った

この研究には三つの段階があります。最初に75人の女性が、シャンプーやコンディショナーの組合せなど10種類の製品を家庭で試し、その感触を自分の言葉で説明しました。製品を比べる面接と日記から、よく使われる表現を集め、後の調査に使う質問紙を作っています。

評価の場面も四つに分けました。髪に付ける前に手に取った原液、泡立てて洗っている最中、すすいだ後の濡れた髪、そして乾いた髪です。「なめらか」「べたつく」「水っぽい」「まとまりやすい」など、場面に応じた感触を7段階で答えてもらいました。

専門家が決めた少数の言葉だけに押し込めず、消費者自身が感じた違いを表現できるようにすることも、研究の大切な目的でした。

香りの幅が広い6種類と、近い10種類を比べる

本試験では、コンディショニング成分を含む同じシャンプー基剤に、異なる香料を加えました。事前に粘度と、液を振ったときの泡の高さを確認し、香料添加によってこれらの物理的性質が変わっていないかを調べています。

第2段階は、162人の女性が6種類すべてを使う試験です。柑橘系、葉を思わせる香り、樟脳系、ローズ・ジャスミン系など、シャンプーに使えそうな範囲で、香調の違いを広く取りました。

第3段階には別の272人が参加し、10種類から各自6種類を使いました。こちらはフルーティーな桃やリンゴ、花の香りなど、実際の商品開発で候補になりそうな、比較的近い香調です。どちらの段階でも、使う順番を参加者によって変え、各製品を3日間に少なくとも1回、普段のシャンプーなどの代わりに使用しました。

製品全体、見た目、におい、感触の好みも別に質問しています。さらに訓練パネルが、原液、泡立てた毛束、乾燥後の毛束の香りを詳しく記述し、香りの特徴と手ざわりの評定を対応させました。

葉の香りと柑橘の香りで、べたつきの評定が違う

感触に関する項目は、四つの場面を合わせて55ありました。多数の検定から偶然の差を拾いすぎないよう補正した結果、幅広い6香調では、原液の「リッチさ」「べたつき」「とろみ」、使用中の「流れやすさ」と二つの粘着感の表現に、有意な違いが残りました。

例えば、手に取った原液では、葉を思わせるLeafyの香りを付けたものが、柑橘のCitrusよりもべたつくと評価されました。同じ基剤で、香りを替えた条件間の差です。香りが感触の判断に入り込むことを、日常の使用場面で捉えた具体例といえます。

近い香調の10種類では、補正後も有意だった感触の項目は、原液のべたつきだけでした。こちらでも、フローラル・バイオレット系は、フローラル・アルデヒド系や桃系よりべたつくと評価されています。香りの違いが小さい範囲でも、一部の感触評定に差が現れました。

一方、濡れた髪と乾いた髪の項目では、補正後の5%基準で明確な香料間の差は残りませんでした。論文は洗髪後の髪の感じ方も含めて広く可能性を論じていますが、今回の統計的に強い結果は、原液と使用中に集中しています。

「好きだから全部よく感じる」だけなのか

幅広い6香調では、好みの四つの項目にも差がありました。製品全体の好みでは、柑橘系とローズ・ジャスミン系がLeafyより高く評価されています。近い10香調の試験では、好みの差は有意ではありませんでした。

気に入った香りだから、ほかの特徴までよく評価する。このような全体的な好印象の影響は、ハロー効果と呼ばれます。研究者はその可能性も検討しました。

確かに、好みとなめらかさなどは結び付いていました。しかし、とろみのように、香りによる違いがありながら好みとの関係が弱い項目もありました。著者は、好みの影響だけでは結果全体を説明しきれないと解釈しています。

香りの記述と感触を重ねた探索的な分析では、果実系やハーブ系の香りと感触の対応が、二つの試験で一貫しない部分もありました。「柑橘なら必ずさらさら」「花なら必ずしっとり」といった、香調名だけで使える一般則までは得られていません。

香りも、使い心地をつくる情報の一つ

著者が重視したのは、実験室でにおいと触覚を組み合わせるだけでなく、実際に家庭で製品を使っているときにも、この感覚間の影響を測れたことです。香りは、製品の使い心地を設計する際にも考えるべき要素だとしています。

ただし、過去に使った製品との連想、使う前の期待、気分、感覚そのものの相互作用は、今回の試験では切り分けられていません。測ったのは人が報告した感触であり、髪の摩擦や傷みの改善を機器で測定した研究でもありません。

また、著者はこの研究を、次の検証に向けた仮説を探す探索的研究と位置付けています。補正前だけの差や、図の上で近く見える関係を、確立した効果と区別して読むことが大切です。

まとめ

同じ基剤のシャンプーでも、香りを替えると、原液や洗っている最中の感触の評定が変わりました。原液のべたつきは二つの試験で共通して差が現れ、例えばLeafyはCitrusよりべたつくと評価されました。

香りの好みも一部の感触に関係しますが、それだけでは説明しきれない可能性があります。シャンプーの使い心地は、手や髪で触れた情報に、鼻からの情報も加わって形づくられる。そのことを、消費者の言葉と家庭での使用から確かめた研究です。

研究当時、著者の所属にはGivaudanとMMR Research Worldwideが記載されています。公開著者稿では、独立した研究資金・利益相反の申告欄は確認できませんでした。

参考文献

Churchill A, Meyners M, Griffiths L, Bailey P. The cross-modal effect of fragrance in shampoo: Modifying the perceived feel of both product and hair during and after washing. Food Quality and Preference. 2009;20(4):320–328. 原著論文(公開著者稿)。