ある人のにおいを心地よく感じる。その好みは、数か月たっても残るのでしょうか。2013年の研究では、女性が男性の体臭につけた好みの順位には、約3か月後にも一定の一貫性がありました。比較した香料の好みは、体臭よりも強く一致していました。
この研究の中心は、体臭を通じた人の評価が、時間を隔てても再現されるかという問いです。香料と顔写真の評価も加えることで、においの好みの安定性を別の対象と比べました。
同じ男性から、3か月後にもう一度においを集める
評価したのは、英国の大学に所属する18〜32歳の異性愛女性63人です。課題によって欠測があり、解析人数は59〜63人でした。経口避妊薬を使用していない女性を対象に、月経開始から10〜14日目に2回の評価を実施。2回目は約3か月後に設定しました。
においの提供者は18〜31歳の男性92人の候補から選ばれ、女性1人につき6人を評価しました。男性は綿のTシャツを2晩着用し、その前から香り付きの製品や強いにおいの食品などを避けました。研究では、免疫に関係するMHCという遺伝子群が女性と似た男性3人、異なる男性3人を組み合わせています。これは別の大きな研究と共有した試料の選び方です。
大事なのは、2回目に嗅いだTシャツが、1回目の保存品ではないことです。同じ男性が約3か月後に新しく着用したものを使いました。そのため、日々変わりうる体臭も含めて、その人のにおいへの好みがどの程度保たれるかを調べられます。
女性は瓶に入れたTシャツのにおいを嗅ぎ、快さと、長期的なパートナーに望むにおいかをそれぞれ7段階で評価。さらに6つの瓶を好みの順に並べました。2回目には提示順を逆にし、同じ男性たちの試料であることは伝えていました。
体臭の好みには、ほどほどの一貫性があった
研究者は女性ごとに、1回目と2回目の6人への評価がどの程度同じ順序になるかを調べました。使った順位相関は、1に近いほど順序がよく一致し、0付近では一定の対応がないことを表します。
その中央値は、体臭の快さで0.35、長期的なパートナーのにおいとしての望ましさで0.18、瓶を直接並べた順位で0.34でした。いずれも集団としては0を有意に上回りました。毎回まったく違う好みになるのではなく、前に比較的よいと感じた男性のにおいを、後にも高く評価する傾向が残ったのです。
一方、個人ごとの相関には負の値から高い正の値まで幅がありました。全員が同じ順位を維持したという結果ではなく、変わる人もいる中で、全体には再現性が見つかったと読むのが適切です。
香料と顔写真では、体臭より順位が安定していた
香料の課題では、ベルガモット、ライム、レモングラス、ミルラ、カンファー、クローブの6種類を比較しました。15種類の評価のうち最初の6種類を取り出し、体臭や顔と対象数をそろえています。女性が答えたのは、それを自分の香水の材料としてどのくらい好むか、という質問でした。
香料の評価の順位相関の中央値は0.77で、体臭の快さや望ましさより有意に高くなりました。初回の平均ではベルガモットが最も高く、ミルラが最も低い評価でした。ただし、これは少数の材料をこの提示方法で比べた結果です。
同じ男性6人の顔写真も評価しました。こちらは2回とも同一の写真を使い、短期的な関係での魅力の相関中央値が0.67、長期的な関係での魅力が0.60。いずれも対応する体臭の評価より高い一貫性がありました。香料と顔写真の安定性の差は、統計的には明確ではありませんでした。
「好みが変わらない人」が、どの対象でも同じとは限らない
もう一つの発見は、安定性の個人差が対象をまたいで一致しなかったことです。体臭の好みが安定していた女性が、香料や顔写真でも特に安定している、という関連は見つかりませんでした。
一方、同じ体臭についての快さと望ましさの安定性は関連し、顔の短期・長期の魅力評価の安定性も関連していました。「その人はいつも好みがぶれない」という一つの性格だけでは、結果を説明しにくいことがわかります。著者らは、対象ごとの関心や注意の違いも考えられると論じています。
におい自体の変化と、好き嫌いの変化をどう考えるか
体臭の試料は新しく採取し直した一方、顔は同一の写真、香料は同じ種類でした。体臭で一貫性が低めだった理由には、評価する女性の好みだけでなく、男性側の食事や生活などによるにおいの変動も入り込みます。また、ベルガモットとミルラのように材料の違いが大きい方が、順位を保ちやすかった可能性もあります。
著者らは、新たに集めた体臭でも評価が再現したことから、その人らしいにおいには時間を超えて保たれる面があり、社会的な相手の評価に使われる手掛かりとして意味を持ちうると結論づけています。これは知覚評価からの解釈で、体臭の化学組成や遺伝的な原因を今回測定したものではありません。
また、対象は若い女性と男性で、女性の月経周期を日数でそろえた研究です。排卵検査は行っていません。香料の評価が安定していたことから、著者らはお気に入りの香水を使い続けることにもつながりうると考察しましたが、製品の購入や長期使用は追跡していません。
まとめ
約3か月離れた2回の評価で、女性の男性体臭への好みには一定の再現性がありました。同じ男性から新しく集めた試料でも、相対的な好みがある程度保たれたことが、研究の中心的な成果です。
香料と顔写真の評価は体臭より安定し、香料と顔の間には明確な差がありませんでした。ただし、ある対象への好みが安定している人ほど、ほかの対象でも安定しているという関係は見られませんでした。香りの好みを考えるときは、嗅ぐ人の変化と、嗅がれる対象の変化の両方を見ることが大切だと教えてくれる研究です。
研究はWellcome Trustの助成を受け、著者へのCzech Science FoundationおよびCharles Universityの支援も記載されています。独立した利益相反の声明は本文に見当たりません。
参考文献
Roberts SC, Havlíček J, Petrie M. Repeatability of odour preferences across time. Flavour and Fragrance Journal. 2013;28:245–250. doi:10.1002/ffj.3142(著者公開全文)


