お茶の香りは、一口目とその後で感じ方が変わる?

お茶の香りは、一口目とその後で感じ方が変わる? 香りの科学

同じお茶を何口か飲むと、一口目とは香りの感じ方が違うのでしょうか。2018年の研究では、ジャスミン風味の烏龍茶を10回に分けて飲んでもらうと、一口目は、その後より香りの最大強度が低く、強く感じるまでに時間がかかりました。

ただし、参加者は事前に実際のお茶を使う評価練習をしていませんでした。飲み慣れることに加え、「飲み込んだ後の香りへ注意を向け、装置で答える」ことへの慣れが関わる可能性もあります。一口だけで食品を評価するときの注意点を調べた研究です。

飲み込んだ後の香りを、60秒間追いかける

研究の目的は、一杯を何口かに分けて飲む短い体験のなかで、口から鼻へ抜ける香りの感じ方がどう変わるかを調べることでした。飲み続けて香りに慣れると弱く感じる可能性と、香りや評価に慣れて捉えやすくなる可能性の両方を検討しています。

参加者は20〜54歳の25人、女性11人・男性14人です。砂糖や乳を含まない市販のジャスミン風味烏龍茶を、室温約24℃で10mLずつ、計10回飲みました。ブランド表示のある同じボトルから、毎回自分で量り取っています。

飲み込んだ直後から60秒間、香りの強さを連続して評価しました。指にかけたリングを引く力で、画面上の指標が0「感じない」から5「非常に強い」まで動く装置です。参加者には口から鼻へ抜ける香りに注意を向けるよう、頭部の断面図と説明を提示しました。

事前には装置の操作を確認しましたが、お茶を飲んで評価する練習試行は設けませんでした。口の清掃は初回前だけで、各一口の間にはすすぎを行っていません。60秒の評価後、次の一口の評価開始まで約30秒かかる手順でした。

一口目は低いピーク、遅い立ち上がり

研究者らは、各回の最大強度、最大になるまでの時間、曲線下面積、ピーク付近の持続、強まり方、弱まり方という6指標を計算しました。必要な曲線上の点を決められなかった5人を除き、この指標比較には20人のデータを使っています。

最大強度の平均は、一口目が3.71、2〜10口目は4.13〜4.32でした。ピークまでの時間は、一口目が約14.9秒、2〜10口目が約3.8〜8.4秒。一口目は、その後の各回より最大強度が有意に低く、ピークまでの時間が有意に長くなりました。

一口目では、強さを時間全体で合計する曲線下面積と、強度が上がる速さも低くなりました。一方、ピーク付近の持続時間や、弱くなる速さには有意な試行差がありませんでした。違いは特に、飲み込んでから香りが立ち上がる部分に表れています。

二口目にも、最初の数秒だけ違いが残る

25人全員を含め、60秒の曲線を2秒ごとに区切る分析も行いました。一口目は主に開始直後から15秒付近で後続試行より低く、二口目にも最初の数秒で後続試行より低い区間がありました。

その後の各回では、一口目ほど大きな違いは見られませんでした。十口目へ向かうほど一律に香りが弱くなるという、単純な順応のパターンはこの評価では得られていません。

なお、原著の考察の一部には「初回のほうが高い」と、結果と逆向きの記述があります。ここでは、数値表、結果節、結論で一致する「一口目は低く、立ち上がりが遅い」という方向を採用しています。

香りが弱まる曲線を、数式でも調べた

研究では、香りの弱まり方を、指数関数という減衰曲線で表す分析も行いました。全体の平均曲線を参考に、各回とも約11秒以降を共通の当てはめ区間にしています。実測曲線との対応は、一口目では平均約0.66、後続試行では約0.84〜0.91で、一口目の当てはまりが有意に低くなりました。

一方、曲線の係数と、弱まる速さに関わる定数の試行差は有意ではありませんでした。原著は2〜4口目でやや速く弱まる可能性を論じていますが、これは数値上の傾向です。「飲むうちに香りの減衰速度が確実に変わった」とする根拠にはなっていません。

一口目は、評価の練習にもなっていた可能性

著者らは、最初の一口がウォームアップの役割を果たしたと考えています。味の強さではなく、飲み込んだ後の香りへ注意を向け、感じた強さをリング操作に置き換えることに、最初は慣れていなかった可能性があるためです。二口目の初期にも差が残ったことから、一口だけでは準備が十分でない人もいたと推測しています。

ほかに、口や鼻に香気成分が残った可能性、繰り返すことで次に来る香りを予測しやすくなった可能性、嗅覚に関わる処理が変化した可能性も挙げています。ただし、香気成分の残留量や脳活動は測っておらず、これらを分ける対照条件もありません。

香りの強さだけを評価するため、苦味や渋みなど別の感覚が評点へ入り込む可能性も残ります。ブランドが見える一種類のお茶、25人の試験であり、おいしさや好みが二口目から上がったという結果でもありません。

まとめ

同じジャスミン風味の烏龍茶を繰り返し飲んだとき、一口目は、その後より香りの最大強度と全体的な強度が低く、ピークまでの時間が長くなりました。二口目にも初期の差が残る一方、香りの弱まり方には有意な試行差がありませんでした。

著者らが重視するのは、飲用体験と評価への慣れです。一口目には、そのお茶の香りを初めて捉えることと、評価を練習することが重なりえます。飲み物の香りを調べる際、最初の一口と、何口か飲んだ後を同じ条件と見なさないことが大切だと示す研究です。

研究は主にサントリーグローバルイノベーションセンターの資金、一部はJSPS科研費26245073・16K04418の支援を受けました。研究当時、共著者2人はサントリー、2人はNTTデータ経営研究所に所属し、企業所属の著者も研究構想・設計に参加しています。著者らは利益相反なしと申告し、謝辞では主な資金提供者は解釈・執筆・公表を統制しなかったと記載しています。

参考文献

Gotow N, Omata T, Uchida M, et al. Multi-Sip Time–Intensity Evaluation of Retronasal Aroma after Swallowing Oolong Tea Beverage. Foods. 2018;7(11):177. doi:10.3390/foods7110177