コーヒーが冷めると、香ばしさより苦さや別のにおいが目立つ。温かいお茶にはほっとするけれど、冷たいお茶には活動的な印象を受ける。そんな違いを、温度を変えた同じ飲み物で調べた研究があります。
米国で行われた二つの試飲実験では、65℃、25℃、5℃で提供したコーヒーと緑茶について、香りや風味を表す言葉、感じた感情、好みが変わりました。目的は、飲み物を評価するときに、提供温度によって何が変わるのか、さらに性別や好みとの関係も含めて調べることでした。
熱く抽出した飲み物を、三つの温度で用意
コーヒーの実験には79人、緑茶には78人が参加しました。いずれも普段からその飲み物を砂糖やミルクなどを加えずに飲み、好んでいる人たちです。コーヒー群は女性51人・男性28人、緑茶群は女性55人・男性23人でした。
コーヒーは同じブレンドの豆、緑茶は同じ製品のティーバッグを使って熱く抽出し、必要な試料を水浴で冷やして65℃、25℃、5℃にそろえました。各試料は55mLずつ、手への温度刺激を抑える発泡素材のカップに入れています。各人が三つの温度を経験し、提示順は無作為化しました。熱い一杯を時間をかけて自然に冷ましながら追った実験でも、水出しと湯出しの比較でもありません。
参加者はまず感情の評価を行い、休憩を挟んで感覚特性を評価しました。それぞれの試料を飲み、「満足」「穏やか」など39の感情語から当てはまるものをすべて選びます。感覚の評価も同じ方式で、コーヒーは49語、緑茶は57語から、香り、風味、味、口当たりなどを選びました。最後に好みを9段階で答えています。
この方法で分かるのは、ある特徴を挙げた人の割合です。「香ばしい」を選ぶ人が増えたことと、香ばしさの強度が何倍になったことは、分けて読む必要があります。
コーヒーでは、熱い条件で焙煎の風味を選ぶ人が多い
コーヒーでは、温度によって選択率が変わった感覚語が6つありました。たとえば、飲んだときの「焙煎したような風味」は、65℃で63%、25℃で37%、5℃で33%の人が選び、65℃で多くなりました。鼻で感じる焙煎香も、65℃では5℃より多く選ばれています。
一方、「苦い味」は5℃と25℃でそれぞれ84%、65℃では67%でした。冷たい条件では金属的な風味や、スカンク様と表現された風味を選ぶ人も増えました。刺激的な香りは5℃で25℃より多く選ばれましたが、65℃との差は明確ではありませんでした。
感情語では16語の選択率が温度によって変化しました。65℃では「幸せ」「満足」「喜ばしい」などが25℃や5℃より選ばれやすく、25℃では65℃より「退屈」が多くなりました。ただし、冷たい条件にも「活動的」「元気」といった言葉が見られ、温度と感情を快・不快の一方向だけでまとめることはできません。
好みの平均は、65℃が6.0、25℃が4.2、5℃が4.0でした。この参加者とコーヒーでは、65℃が他の二つより好まれています。
緑茶では、花の香りや口当たりも変わった
緑茶では18の感覚語の選択率が温度で変わりました。花のような香りは、65℃で27%、25℃で13%、5℃で12%が選び、熱い条件で多くなりました。焙煎したような香りも65℃で21%、25℃で6%、5℃で1%と、同じ方向でした。
65℃では5℃より、ハーブ様の香り、穏やかな風味、甘い味を選ぶ人が多くなりました。逆に5℃では65℃より、渋い口当たりや苦い後味が多く選ばれています。香りだけでなく、口の中での体験全体が変化していたことが分かります。
感情語では19語に温度による違いがありました。熱い緑茶では「快い」「満足」「安心」といった言葉が他の温度より多く選ばれ、冷たい緑茶では「活動的」「元気」が他の温度より多く選ばれました。「楽しい」という言葉も5℃で25℃より多くなっています。冷たい緑茶を、単に否定的な気分を生む条件と捉えると、この結果を取りこぼしてしまいます。
好みの平均は65℃が6.3、25℃が5.3、5℃が4.6で、この順に有意に高くなりました。ただし、使ったのは各飲料1製品で、参加者は米国の消費者です。茶葉や焙煎、抽出方法、飲み慣れた文化が違っても同じ順位になるかは、この研究の範囲を越えます。
「好き」と結び付く特徴は、温度によっても違う
研究者は、ある言葉を選んだ人と選ばなかった人で、好みの点数がどう違うかも調べました。コーヒーでは、焙煎した風味を選ぶことが、三つの温度すべてで高い好みと結び付いていました。緑茶では、なめらかな口当たりが、どの温度でも高い好みと関連していました。
それ以外の組み合わせは温度で変わりました。たとえば、5℃のコーヒーでは「活動的」「元気」という感情が高い好みと関連し、65℃では「快い」「満足」などが関連しています。これは回答同士の関係なので、その感情を起こせば好みが上がるという因果関係を直接試した結果ではありません。それでも、同じ商品でも、温度によって好まれる理由が変わる可能性を示しています。
男女別の解析では、解釈に注意が必要
性別による違いも、あらかじめ設けられた研究の目的でした。男女別に解析すると、女性群では温度によって選択率が変わる感情語や感覚語が多く、好みとの関連も、感情と感覚の両方に見られました。男性群で有意な好みとの関連が見つかったのは、感情語でした。
ただし、女性は男性のおよそ2倍参加しており、ある群だけで有意になったことが、そのまま男女差の有意な証拠になるわけではありません。好みの点数については、性別の主効果も、温度と性別の交互作用も、両飲料で有意ではありませんでした。男性は味や香りで好みを決めない、と一般化せず、さらに確かめるべき群別の傾向と読むのが妥当です。
また、この実験では香り、味、口に触れる温度が一緒に変わっています。揮発成分や脳活動の測定は行っていません。どの感覚経路が感情の変化を生んだかを切り分けるより、実際に飲んだときの体験が温度でどう変わるかを捉えた研究です。
まとめ
このコーヒーと緑茶では、65℃の試料が25℃や5℃より好まれました。熱いコーヒーでは焙煎した風味、熱い緑茶では花や焙煎の香りが多く挙げられ、満足や快さを表す言葉も選ばれやすくなりました。一方、冷たい緑茶には活動的・元気といった感情も結び付いていました。
好みと関連する感覚や感情は、温度や群別解析によって異なりました。一杯の特徴を知るには、熱いときだけの評価では足りないことがあります。温度を変えると、同じ飲み物のどんな側面が現れ、どう好まれるのか。この研究は、香りと味、気持ちを合わせて見ていく手がかりを与えています。
研究の一部は、米国農務省・国立食料農業研究所のHatch Act資金による支援を受けました。著者らは、潜在的な利益相反となる商業的・金銭的関係はないと申告しています。
参考文献
Pramudya, R. C., & Seo, H.-S. (2018). Influences of Product Temperature on Emotional Responses to, and Sensory Attributes of, Coffee and Green Tea Beverages. Frontiers in Psychology, 8, 2264. 原著論文


