デオドラントの効果は、菌数とにおいでどう比べる? PQ-16製剤の研究

デオドラントの効果は、菌数とにおいでどう比べる? PQ-16製剤の研究 香りの科学

デオドラントの働きを確かめるには、菌が減ったかだけでなく、人の鼻で感じるにおいが弱くなったかも調べる必要があります。

ポリクオタニウム-16(PQ-16)を配合したロールオン製剤の研究では、比較した市販のアルコール系製剤より、24時間後と48時間後の脇のにおいが低く評価されました。一方、同じ基剤にアルミニウム塩を配合した製剤との間では、におい評点に明確な差はありませんでした。比較相手によって結果がどう変わるかを含めて、菌数とにおいを調べた研究です。

新しい抗菌成分を、実際の脇で評価する

Traupeらの論文は2016年にオンライン公開され、2017年の学術誌に掲載されました。主な目的は、陽イオン性の高分子であるPQ-16を含む製剤が、脇の細菌とにおいにどのように作用するかを、人で確かめることです。使用中の肌の状態も観察しました。

脇のにおいには、皮膚の細菌が分泌物を分解して生じる成分が関わります。陽イオン性の物質には細菌の膜に作用するものがあり、著者らはその性質に着目しました。論文では、候補高分子を比較する予備的な検討からPQ-16を選んだ経緯が述べられています。ただし、人での本試験が評価したのは、PQ-16を組み込んだ製剤全体です。

三つの製剤を、左右の脇で比べる

試験製剤は、有効成分としてPQ-16を1%含む、香料入りの微細な乳化系のロールオンでした。比較相手は二つ。一つは当時24時間の防臭を表示していた市販のアルコール系ロールオン、もう一つは同じ乳化基剤に、PQ-16の代わりにクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)を10%配合した製剤です。

ACHは制汗製剤にも使われる成分ですが、この試験では抗菌・防臭の比較対象でした。汗の量は測定していません。三製剤はいずれも香料入りで、PQ-16製剤とACH製剤の基剤にはピロクトンオラミンも含まれていました。したがって、市販品との差をPQ-16一成分だけの作用として切り分ける設計にはなっていません。

参加者は事前に決められた無香料の洗浄料を使い、デオドラントなどの使用を控えました。試験では一方の脇にPQ-16製剤、反対側に比較製剤を約500mgずつ塗り、左右の割り付けを無作為に決めています。製剤名を伏せた比較で、測定まで脇に石けんや防臭製品を使うことも制限されました。

菌数の試験と、においの試験は別に行った

菌数を調べる試験は、市販品との比較が17人、ACH製剤との比較が20人でした。塗布前と、塗布1・4・8・24・48時間後に、脇の一定範囲から細菌を採り、培養して増えたコロニーを数えました。ACH比較の48時間時点は1人欠測があり、19人の解析です。

においの試験では、市販品比較に35人、ACH比較に38人が参加しました。訓練を受けた6人の評価者が、脇を直接嗅いで、においの強さを0~5の6段階で採点しました。

まず洗浄だけをした状態の24・48時間後を基準として測り、その後に洗浄と製剤塗布を行い、再び24・48時間後を評価しています。基準時のにおいが一定以上あることが解析条件だったため、市販品比較は24時間で28人、48時間で34人、ACH比較はそれぞれ29人と31人でした。全員の同じ人数をすべての時点で解析したわけではありません。

市販品より、24・48時間後のにおい評点が低かった

市販のアルコール系製剤と比べると、PQ-16製剤を塗った側の平均におい評点は、24時間後で1.98対2.48、48時間後で2.45対2.95でした。どちらもPQ-16製剤側が0.5点低く、統計的にも明確な差がありました。

一方、ACH製剤との比較では、PQ-16製剤とACH製剤の評点は24時間後に1.30対1.31、48時間後に2.17対2.05で、両時点とも有意差はありませんでした。洗浄だけの基準時と比べると、PQ-16製剤とACH製剤はいずれも24・48時間後のにおいが低く評価されました。

この結果から、試した条件ではPQ-16製剤が市販の比較品よりにおいを抑えたことが分かります。ACH製剤については、差を検出しなかったという結果であり、あらゆる条件で同等だと確定する同等性試験ではありません。

菌数の差は、比較相手と時間によって変わる

菌数についても、PQ-16製剤は市販品より、調べたすべての時点で塗布前からの変化が低い側にありました。市販品では初期に菌数が下がった後、24・48時間後には塗布前を上回っていました。

ACH製剤との比較では、PQ-16製剤側の菌数が有意に低かったのは4時間後と8時間後です。1時間後と24時間後の差は明確ではなく、48時間後にはほぼ同じ値でした。

また、PQ-16製剤の菌数が塗布前より有意に低かった期間は、比較群によっても異なります。初期の低下は両群で見られましたが、24時間後まで明確だったのは市販品と比べた群だけでした。「48時間後にも比較品より低い」と「48時間ずっと塗布前より低い」は、異なる結果として読む必要があります。

処方と条件を含めて読む防臭試験

この研究の特徴は、菌数だけを防臭効果の代わりにせず、訓練した人によるにおい評価も行った点です。PQ-16製剤と市販品の比較では、菌数の変化とにおい評点の両方が、PQ-16製剤側で低いという方向で一致しました。

ただし、無処置の脇を同じ時間経過で追う対照は置かれていません。塗布前との比較には、洗浄や時間経過の影響も含まれます。また、香料入りの複合処方であり、比較対象は当時の特定製剤です。現在の同じブランドの製品や、成分名が同じすべての製品へ結果を広げることはできません。

試験中には不適合反応や不快感は観察・報告されませんでした。これは参加者と使用期間の範囲での所見で、長期使用やあらゆる肌質についての安全性まで確定するものではありません。

まとめ

1%のPQ-16を含む試験製剤は、比較した市販アルコール系製剤より24・48時間後の脇のにおい評点が0.5点低く、菌数の変化も各測定時点で低い側にありました。同じ基剤の10%ACH製剤とは、におい評点の有意差はなく、菌数の差が明確だったのは4・8時間後でした。

菌数と、人が感じるにおいの両方を測ることで、処方の働きを具体的に比較できた研究です。防臭の結果を読むときには、配合成分だけでなく、比較した製剤、洗浄条件、何時間後の測定かまで見ることが役立ちます。

本研究はBeiersdorf AGが全額を資金提供しました。論文では著者4人全員が同社研究開発部門所属と記載されています。

参考文献

Traupe B, Fölster H, Max H, Schulz J. Effective axillary malodour reduction by polyquaternium-16-containing deodorants. International Journal of Cosmetic Science. 2017;39(2):141–148. doi:10.1111/ics.12358. 公開原著全文.