TOKYO KODO(東京香堂)|布のデザインから、燃焼する香りの設計へ

TOKYO KODO(東京香堂)の記事用生成イメージ。実物を撮影した写真ではありません。

私は、私たちのお香を目に見えないアートとして捉えています。

――ペレス千夏子(Grasse Institute of Perfumery掲載インタビュー、編集部訳)

TOKYO KODOは、日本のお香づくりと南フランス・グラースの調香技術を組み合わせるインセンスブランドである。中心となるのは、テキスタイルデザインから調香へと仕事を移したペレス千夏子と、香料原料の仕事を経験したペレス・ジョフレ。香水の処方を線香に移すだけではなく、燃やした後の香りを作品として設計する。

基本情報

  • ブランド名:TOKYO KODO(東京香堂)
  • 家業のルーツ:1935年創業の株式会社なかほり
  • 名称の継承・再構築:2014年
  • 主な作り手:ペレス千夏子、ペレス・ジョフレ
  • 公式サイト:https://tokyokodo.online/

創設者とブランドの成り立ち

線香卸業の家からテキスタイルの仕事へ

家業の株式会社なかほりは、1935年に寺院向け線香の卸業として創業した。栃木県の線香を首都圏の寺院へ自転車で届けたのが始まりである。

三代目に生まれた千夏子は、当初から家業を目指していたわけではない。大学でテキスタイルデザインを学び、布地の柄を扱う仕事に就いた。2011年の震災後に仕事を見直し、妹が担う伝統的なお香とは異なる道を探して、2012年にグラースで調香を学んだ。

名称を継承し、二人で制作する体制へ

卒業後は現地の香料会社で働き、勤務後の研究室で自身の香りを試作した。その職場で出会ったジョフレは、グラース出身で、香料会社の原材料部門に13年間の経験を持つ。

千夏子は2014年、家業側が使っていた東京香堂の名称を引き継ぎ、ブランドを組み直した。KUONのインタビューでは、ジョフレが加わった時期を2018年ごろと振り返る。家業の創業と現在のブランドの形成は、別々の時間をたどっている。

ブランドのこだわり

調香した香りを、お香の燃焼に合わせる

香料をお香の粉末と組み合わせると、香りは変わる。火を灯せば、揮発しやすい成分が失われることもある。zen mindedの対談でジョフレは、レモンの香りを燃焼後まで残す難しさを語っている。千夏子も、お香の基材へ混ぜた後に確かめ、調香を調整し直すと説明した。「LOVE CARROT」にはおよそ2年の試行錯誤を要したという。

ここでの調香は、液体を嗅いだ瞬間だけで完結しない。火を灯した後、部屋にどう広がるかまでが制作の対象になる。

色の感覚と原料への理解

千夏子は、色を組み合わせる経験と香りの調整に共通点を見いだしている。キャロットシードの香りから複数の色を感じたという話にも、以前の仕事とのつながりが表れる。

ブランドはできる限り天然香料を用いる方針を掲げ、グラースで原料を選び、自社で調香する。これは全製品を天然香料だけでつくるという表示ではなく、素材の個性を生かす制作姿勢である。

First Collectionの三つの題材

「LOVE CARROT」は、千夏子がグラースで出会ったキャロットシードオイルを起点とする。土を思わせるキャロット、金木犀のような花の印象、インド産白檀のミルキーな木の香りを組み合わせた作品だ。

「MURMURE DE LA FORET(森のささやき)」は祖父と暮らした家の木々、「MIMOSA」は南フランスの春を題材とする。同じシリーズでも、一つは個人の記憶、もう一つは土地の植物と季節へ向かう。日仏の融合は、決まった香調ではなく、発想の広がりとして現れている。

香木と美術・工芸へ広がる制作

「Classic Series」は白檀と沈香を現代の感覚で捉え、「Arts & Crafts Series」は作家との協働へ展開する。

First Collectionでは、画家の黒嶋亮子が画材の重なりによって香料や煙の変化を表現し、鴨工房が香立てを制作した。香りの処方だけでなく、包む絵や焚く道具も、作品を届けるための造形として考えられている。

参考文献