運動後のシャツのにおいは、綿とポリエステルで違う?

運動後のシャツのにおいは、綿とポリエステルで違う? 香りの科学

運動後のシャツは、同じように汗を吸っていても、素材によってにおい方が違うことがあります。2014年の研究では、1時間の運動後に28時間保管したシャツを比べると、ポリエステル100%のものは綿100%のものより、においが強く、不快と評価されました。

研究チームが調べたのは、においだけではありません。シャツにいる細菌を調べ、さらに別の実験で、素材によって増えやすい菌が変わるかを確かめました。衣類は汗を受け止めるだけでなく、皮膚とは異なる微生物の環境になることが見えてきました。

皮膚のにおいと、衣類のにおいを分けて考える

Callewaertらの主な目的は、着用後の衣類にどんな細菌がいるか、素材で菌の集まりが異なるか、そしてにおいがどう違うかを調べることでした。中心となる比較は綿とポリエステルです。

脇の皮膚から衣類へは、汗や皮脂とともに細菌も移ります。しかし、移った先では、空気や水分、利用できる栄養などが皮膚上とは変わります。研究は、衣類の微生物を、皮膚の微生物の単なる写しとして扱わずに調べようとしたものです。

26人のシャツを、運動後28時間置いて評価

ベルギーの同じ地域に住む20~60歳の健康な男女26人が、1時間の強度の高い自転車運動に参加しました。それぞれ洗濯済みの綿、ポリエステル、または混紡のTシャツを着ています。研究者が素材を無作為に割り付けたり、同じ人に素材を替えて着てもらったりする方式ではありませんでした。

運動後のシャツは個別の袋に密閉し、20℃の暗い場所で28時間保管しました。その後、選抜・訓練された7人の評価者が、快・不快、においの強さ、かび臭さ、アンモニア様、汗様、酸っぱさなどを評価しました。着ている最中のにおいや、脱いだ直後だけを比べた結果ではない点が大切です。

細菌はシャツ全体から抽出し、培養やDNAのパターン解析で調べました。参加者の脇の皮膚からも試料を採り、衣類の菌群と比較しています。

ポリエステルは、より強く、不快なにおいだった

純綿と純ポリエステルのシャツを比べると、ポリエステルではにおいが強く、快さが低い結果でした。快・不快を−4から+4で表した平均は、綿が−0.61、ポリエステルが−2.04で、ポリエステルのほうが不快側に寄っています。

かび臭さ、アンモニア様、汗様、酸っぱさなどの特徴もポリエステルで強く、とくに酸っぱさやかび臭さなどで大きな違いが見られました。単に「汗が多かった」という一つの印象ではなく、複数のにおいの特徴に差が出ています。

ただし、参加者の食事や普段の衛生習慣は統一されていません。二つの素材群でデオドラント・制汗剤の使用頻度に明確な差はありませんでしたが、衣類の構造や個人差などまでそろえた比較ではないため、観察された差のすべてを素材だけの因果効果とすることはできません。

シャツの細菌は、脇の皮膚と同じではなかった

衣類からはさまざまな菌が見つかり、個々のシャツの菌群には大きな違いがありました。その中でも、ミクロコッカス属は、ポリエステルや合成繊維を含むシャツで目立ちました。スタフィロコッカス属は、綿と合成繊維の両方で広く検出されました。

一方、脇の皮膚に見られるコリネバクテリウム属は、この試験の衣類では検出・分離されませんでした。皮膚とシャツのDNAのパターンも大きく異なり、移った菌がすべて同じように増えるのではなく、衣類上で増えやすい菌が選ばれていることが示唆されました。

この違いは、脇の皮膚のにおいと、脱いだ衣類のにおいを別々に調べる意味を示しています。

別の培養実験でも、素材ごとに増えやすい菌が違う

研究チームは次に、ポリエステル、アクリル、ナイロン、フリース、ビスコース、綿、ウールの7種類へ、代表的な皮膚由来の5菌種をそれぞれ加えました。滅菌した布上で37℃、3日間培養し、回収した菌を測定しています。

ミクロコッカス・ルテウスはポリエステルで増えやすく、綿では明確な増加が見られませんでした。運動後のシャツで見られた、ポリエステルとミクロコッカスの結びつきを補う結果です。

ただし、すべての菌が同じ素材を好むわけではありませんでした。例えばナイロンでは、プロピオニバクテリウムなどの増加が目立つ一方、ミクロコッカスは抑えられました。ウールは多くの菌の増殖を支えました。コリネバクテリウム・ジェイケイウムは、今回の培養条件ではどの素材でも増えませんでした。

ビスコースでは回収される菌が少なかったものの、布から菌を取り出す効率自体も低いという問題がありました。そのため、菌が増殖しない素材だと断定するには追加の確認が必要です。

付着しやすさだけでは説明できなかった

ポリエステルでミクロコッカスが増える理由を探るため、菌と素材表面の相互作用も調べました。布そのものでは水滴が吸い込まれるため、ポリエステルの代わりにPET板、綿の代わりにセルロース製の板を使い、液滴の接触角から相互作用を推定しています。

この測定では、菌と二つの素材の相互作用に明確な差はありませんでした。少なくとも、この方法で調べた表面への引き合いやすさだけでは、増殖の違いを説明できませんでした。

著者らは、素材によるにおい成分の保持・放出の違いに加え、酸素や栄養の条件が特定の菌を増やしやすくする可能性を論じています。ただし、今回はにおい分子の生成量を菌ごとに追跡した実験ではなく、特定の菌がシャツのにおいの差をどれだけ生んだかは、なお検証が必要です。

まとめ

運動後に28時間保管した衣類では、ポリエステル100%のシャツが綿100%より強く、不快なにおいと評価されました。菌群にも違いがあり、ミクロコッカスがポリエステル側で目立ち、別の培養実験でもその増えやすさが支持されました。

一方、増殖のしやすさは菌と素材の組み合わせで変わり、単純な付着しやすさでは説明できませんでした。衣類のにおいを理解するには、素材の性質と、そこで育つ菌の種類を組み合わせて見ることが重要だと分かります。

本研究はフランドル政府とゲント大学の支援を受けています。著者らは利益相反なしと申告しています。

参考文献

Callewaert C, et al. Microbial Odor Profile of Polyester and Cotton Clothes after a Fitness Session. Applied and Environmental Microbiology. 2014;80(21):6611–6619. doi:10.1128/AEM.01422-14.