香料のアレルギー検査は、どう濃度を決める?

香料のアレルギー検査は、どう濃度を決める? 香りの科学

香料への接触アレルギーを調べるパッチテストでは、検査試料の濃度が重要になります。薄すぎれば反応を見逃しやすく、濃すぎれば刺激による反応が出たり、検査自体がアレルギー反応を起こしうる状態を新たに作ったりするおそれがあるためです。

2024年の研究は、日常的な検査に十分取り入れられていなかった5種類の香料について、後続の監視研究に使う濃度を決めようとしたものです。皮膚炎患者373人を調べ、5成分へのアレルギー陽性は見られませんでした。ただし、研究の主な成果は「何に使っても安全」という判定ではなく、さらに大きな集団を調べるための検査条件を整えたことにあります。

製品を使う人の状態を、後から確かめるために

香料の皮膚感作、つまり、その物質にアレルギー反応を起こしうる状態になるリスクは、成分の性質や皮膚に触れる量を考慮した「定量的リスク評価(QRA)」によって評価されます。そこから製品中の使用量を考えますが、計算による管理が実際に役立っているかは、市場に出た後の情報でも確かめる必要があります。

今回の研究は、そのための長期的な香料アレルギー監視研究「EFISS」に先立つ予備試験でした。患者を継続して調べるには、施設ごとに異なる試料を使うのではなく、濃度や基剤をそろえ、反応を比べられるようにする必要があります。

対象は、フラネオール、trans-2-ヘキセナール、4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール、ロンギホレン、ベンズアルデヒドの5成分です。論文はこれらを合成香料として扱っていますが、同じ分子が天然抽出物に含まれる場合もあります。由来の異なる香料を条件をそろえて比較する実験ではありません。

濃度を上げるたびに、別の患者群で確認した

2022年5〜10月、ポルトガル、オランダ、スウェーデン、クロアチアの4施設で、18歳以上の皮膚炎患者が参加しました。低い濃度で調べた第1段階が120人、中間濃度の第2段階が104人、最も高い濃度の第3段階が149人です。同じ373人の濃度を繰り返し上げたのではなく、それぞれの時期に受診した別の患者を調べています。

ワセリンを基剤にした試料を背中に48時間貼り、3日目または4日目と、7日目に反応を判定しました。各段階の後には少なくとも3週間の追跡期間を置き、遅れて現れる反応にも注意しました。刺激や遅い陽性反応の有無を見ながら、次の段階の濃度を調整する設計です。

5成分について、アレルギー陽性はどの段階でも報告されませんでした。最初の低濃度の段階には、刺激反応が2件、疑わしい反応が1件ありましたが、これらは7日目には陰性でした。後の二つの段階では、刺激反応も疑わしい反応も見られず、7日目より後に現れた反応も報告されませんでした。

陽性ゼロから、どこまで言えるか

著者らは、この結果から、最も高い濃度の試料を、皮膚炎患者を順次調べる後続研究に使えると判断しました。ここで評価しているのは、診断用試料として使う条件です。

一方、最高濃度を調べたのは149人です。論文が示した、陽性0例に対する反応率の95%信頼区間の上限は1.99%でした。0人という観察だけでは、低い頻度で起こる反応がないとは言い切れないことを表しています。著者自身も、この人数では、消費者にアレルギーを起こしうる状態が生じないことを確実に示すには不十分だと述べています。

したがって、この研究だけで、5成分を含むすべての製品や、あらゆる濃度・使い方が安全と結論することはできません。対象は検査を受けに来た皮膚炎患者で、吸入による影響や全身への影響を調べたものでもありません。

いつもの混合検査だけでは拾えない反応もあった

研究では、5成分以外にも、標準的な香料の混合検査や、個別成分の検査を行いました。クロアチアの施設には香料アレルギーが疑われる、またはすでに知られている患者が多く含まれたため、その施設を除いた288人について、ほかの香料への反応を集計しました。

そのうち47人が、少なくとも一つの試料で陽性でした。36人は標準的なスクリーニング試料でも陽性でしたが、残る11人は、追加した別の香料成分の検査で見つかりました。この11人は、今回新たに濃度を調べた5成分への陽性者ではありません。

著者らは、混合試料だけでなく個別の成分も調べることの有用性を指摘しています。混合試料の中よりも個別試料の方が成分濃度が高いことなどが、検出の違いに関わる可能性があり、試料の濃度と組み合わせをさらに検討すべきだと論じています。

また、オークモスとツリーモスの抽出物では、アトラノールなどを微量に減らした試料と従来の試料も比べました。減らした試料だけに反応する人もいましたが、人数が少なく、有意な差は示されていません。減らしても効果がない、あるいは逆に危険だと決められる結果ではなく、後続研究を待つべきだとされています。

研究を含むIDEA事業は、国際香粧品香料協会(IFRA)が資金を提供しています。著者にはIFRA職員や同事業の関係者、検査試薬会社Chemotechnique Diagnosticsの社長兼CEO、香料安全性の専門家委員が含まれています。試料の量をそろえる器具には、共著者が開発し同社が特許を持つものが使われました。

まとめ

今回の研究は、5種類の香料について、刺激や遅れて出る反応に注意しながら、後続のパッチテスト研究に使う濃度を選びました。陽性が見られなかったことはその判断を支えましたが、消費者の感作リスクが存在しないことまで示すものではありません。

著者らが次に目指したのは、この条件でより大きな患者集団を継続して調べ、製品中の使用量を管理する仕組みが、実際のアレルギー予防につながっているかを確かめることです。検査試料を整えることと、標準の混合検査に個別成分の検査を組み合わせることが、その監視を支えます。検査の方法や濃度は医療・研究のための条件で、自分の肌で試すための配合指針ではありません。

参考文献

Sukakul, T., Uter, W., Gonçalo, M., Huggard, J., Ljubojević Hadžavdić, S., Schuttelaar, M. L. A., Svedman, C., Vey, M., Isaksson, M., Niklasson, B., Rustemeyer, T., & Bruze, M.(2024). Results of patch testing with five fragrance materials hitherto not tested: A dose-finding study in the clinical population. Contact Dermatitis, 90(6), 566–573. DOI: 10.1111/cod.14525/原著全文。

© 2024 The Authors. Contact Dermatitis published by John Wiley & Sons Ltd. 原著ライセンス:CC BY-NC 4.0。