香料の混合検査で、原因成分まで分かる?

香料の混合検査で、原因成分まで分かる? 香りの科学

香料による接触アレルギーを調べるパッチテストには、複数の香料成分をまとめた検査試料があります。いくつもの成分を一度に調べられますが、混合試料の結果だけで、どの成分に反応したかまで分かるのでしょうか。また、同じ成分を別に追加して調べると、どれだけ診断の手がかりが増えるのでしょうか。

2014年、スウェーデンの研究グループは、6施設の皮膚炎患者1万人余りの検査結果から、この問いを検討しました。対象は、6種類の香料を混ぜた「フレグランスミックスII(FM2)」と、その中の一成分である「HICC」です。研究の中心は、陽性者がいるかだけでなく、二つの検査をどう組み合わせるとよいかにありました。

混合試料にも、すでにHICCが入っていた

HICCは、かつて香料として使われていた合成の成分です。今回のFM2試料は、香料成分の合計濃度が14%で、そのうちHICCは2.5%でした。一方、個別のHICC試料は5%。どちらもワセリンを基剤にした診断用の試料です。

つまり、HICCを全く含まない検査と、HICCだけの検査を比べたのではありません。混合試料に含まれる量の2倍の濃度で、HICCを個別に検査したとき、追加で見つかる人がどれほどいるかを調べたことになります。これらの濃度は、香水や化粧品の配合濃度を示すものではありません。

1万10人の皮膚炎患者を検査した

対象となったのは、2006〜2011年にスウェーデンの6か所の皮膚科で検査を受けた1万10人です。施設によって開始時期は少し異なります。試料を皮膚に48時間貼り、3日目または4日目と、7日目に反応を判定しました。

FM2で陽性だった人は337人、全体の3.4%。HICCを個別に調べて陽性だった人は171人、1.7%でした。両方に陽性だった人は148人で、FM2は陰性でもHICC単独では陽性だった人が23人いました。

この23人は、全受診者の約0.2%に当たります。一方、HICC単独で陽性だった171人を分母にすると13.5%です。同じ結果でも、「患者全体にどれだけ検査を上乗せできたか」と、「HICCに反応する人のうち、混合検査で拾えなかった人がどれだけいたか」では、数字の意味が変わります。

全員に追加する検査と、陽性後の検査は役割が違う

著者らは、当時のスウェーデンの標準的な検査項目に、FM2に加えてHICC単独の試料を常設する価値は小さいと考えました。約1万人を検査して追加で見つかった人が0.2%で、当時の標準検査への採用基準に照らすと、十分な上乗せではないという判断です。そのため、HICC単独試料を標準項目から外すことを検討するよう提案しました。

ただし、HICCをもう調べなくてよいと結論したわけではありません。FM2が陽性だった人には、HICCとほかの構成成分を個別に検査することを強く勧めています。混合試料への陽性だけでは、どの成分に対する接触アレルギーなのかを特定できないからです。

著者らが重視したのは、具体的な成分を突き止め、本人の生活でその成分への接触を避けやすくすることでした。個別検査は、香料アレルギーがどの成分でどれだけ起きているかを継続して監視するためにも重要だと論じています。

過去の診断研究として、どこまで読めるか

この研究の参加者は、皮膚炎のため医療機関で検査を受けた人たちです。1.7%という数字は、一般の人がHICCでかぶれる確率ではありません。また、診断用のパッチテストに陽性であることと、ある化粧品が現在の皮膚症状の原因であることは、そのまま同じではなく、実際の使用歴などと合わせて判断する必要があります。

この検査項目の組み方に関する提案は、2014年の著者らの判断です。その後、EUでは2017年の規則により、HICCを含む化粧品の新規市場投入が2019年8月から、市場での提供が2021年8月から禁止されました。当時の曝露状況や診断の議論を、現在の製品すべてにそのまま当てはめることはできません。

また、一成分の皮膚へのアレルギー反応を扱った研究であり、吸い込んだときの影響や、合成香料全体と天然香料全体の安全性を比べたものではありません。皮膚症状がある場合の検査や原因の判断は、皮膚科で相談する内容です。

利益相反として、著者の一人が香料の研究機関RIFMの専門家委員であること、別の著者に欧州委員会の消費者安全などの科学委員会への参加歴があることが記されています。

まとめ

FM2は香料への接触アレルギーを調べる手がかりになりますが、混合試料だけでは見つからないHICC陽性者もいました。その一方、全員にHICC単独検査を加えることで増えた検出は、対象患者全体の約0.2%でした。

この二つを踏まえ、著者らは、広く行う標準検査をどう構成するかと、陽性者の原因成分を詳しく調べることを分けて考えました。重要な帰結は、検査の数を単に増やすことではなく、混合検査から個別成分へと調べる段階を設け、具体的な接触の回避と継続的な監視につなげるという考え方です。

参考文献

Isaksson, M., Inerot, A., Lidén, C., Lindberg, M., Matura, M., Möller, H., Stenberg, B., & Bruze, M.(2014). Multicentre patch testing with fragrance mix II and hydroxyisohexyl 3-cyclohexene carboxaldehyde by the Swedish Contact Dermatitis Research Group. Contact Dermatitis, 70, 187–189. DOI: 10.1111/cod.12156/原著全文。

© 2014 John Wiley & Sons A/S. Published by John Wiley & Sons Ltd.

European Commission(2017). Commission Regulation (EU) 2017/1410。