ミントのマスクは、香りを復活させるたび快適になる?

ミントのマスクは、香りを復活させるたび快適になる? 香りの科学

ミントの香りがするマスクは、着けた直後に鼻の不快感を軽く感じさせることがあります。では、香りを何度も出し直せば、そのたびに快適さが増すのでしょうか。2020年の研究では、着香マスクの着用直後の利点は見られましたが、再び香りを出した後に、さらに不快感が下がる効果は確認されませんでした。

研究者が調べたのは、日常生活で6時間使ったときの変化と、再発香の上乗せ効果です。香りのある・なしを一度だけ比べるのではなく、同じ人に何度も鼻の感じ方を尋ねました。

40人が、香りありと香りなしを別の日に使う

参加したのは、花粉症をもつ34〜57歳の女性40人です。2019年4月の2日間、同じ人が着香マスクと無香マスクをそれぞれ6時間着用しました。半数は無作為に選ばれて着香から、残りの半数は無香から使う順番です。

マスクの基本素材や形は共通で、着香条件にはL-メントールとハッカ油による香料を加えています。着香マスクは、不織布部分を軽く叩くことで香りを出す仕組みでした。

午前10時の着用直前と直後に、鼻の不快感を5段階で回答。その後も10時半、11時、正午、14時、16時に携帯機器へ届くメールから回答しました。着香条件では、その時点の評定に加え、マスクを叩いて再発香させ、着け直した後の評定も求めています。

生活の中で回答する方式だったため、欠測もありました。全体の時系列をそろえた分析は21人、着用直前・直後は35人、10時半以降の時系列は22人、再発香の前後比較は30人です。すべての結果が40人分の完全な記録から得られたわけではありません。

着けた直後は、ミントの香りがある方が快適

着用前には、二つの条件で鼻の感じ方に差はありませんでした。着用すると、無香でも着香でも不快感は低下しましたが、着香条件の低下がより大きく、直後の評定は無香条件より有意に快適側となりました。

その後は、どちらのマスクも着用開始から約30分までに主な変化が起こり、それ以降、時間がたつほどさらに快適になるという変化は見られませんでした。著者は、この状態を効果の「飽和」と表現しています。

ここで大切なのは、30分を過ぎると香りの利点が消えた、という結果ではないことです。10時半から16時までをまとめた分析でも、着香と無香の差は有意でした。一方で、その差が時間とともに変わることや、時間による追加の改善は明確ではありませんでした。

香りを出し直しても、追加の改善は明確でなかった

研究者は当初、マスクを再発香させるたびに不快感が下がると予想していました。しかし、各時点の再発香前後を比べると、その効果は統計的に有意ではありませんでした。

この結果は、最初に香りを感じたときの快適さと、その後に刺激を出し直したときの変化が、同じようには現れないことを示しています。著者は、いったん快適さが得られると、その程度が着用中に保たれ、再発香してもさらに上がらなかったと解釈しました。

ただし、研究では香りの強さそのものを各時点で測っていません。鼻が香りに慣れたためなのか、最初の印象が続いたためなのか、あるいは快適さの評定に改善の余地が少なかったためなのかは、今回のデータだけでは決められません。

仕事や家事への「前向きさ」にも違い

6時間の着用後には、つけ心地、顔へのフィット、大きさ、息のしやすさ、耳の痛みにくさ、仕事や家事への前向きさの6項目も尋ねました。

このうち有意な違いがあったのは、仕事や家事に前向きに取り組めるという回答です。着香マスクの方が肯定的に評価されました。ほかの着用感の項目では、明確な差は見られませんでした。

これは本人の気持ちについての回答で、仕事の成績や家事の作業量を測った結果ではありません。鼻の快適さが高く感じられても、マスクのあらゆる使い心地が一様によく評価されるわけではない点も、研究者が注目したところです。

測ったのは鼻の不快感で、通気や炎症ではない

この研究の強みは、日常生活で実際に長く着けながら、時間経過を追ったことです。一方、装着や再発香の指示が常に守られていたかを、センサーなどで確認したわけではありません。

また、鼻を通る空気の量、鼻粘膜の炎症、花粉へのアレルギー反応は測定していません。メントールなどによる鼻の感覚と、香りから生じる気分や期待を切り分ける条件もありませんでした。著者も、直接的な感覚と気分を介した働きの区別を、今後の課題にしています。

したがって、この結果から分かるのは、今回の参加者と着用条件で、鼻の不快感がどう感じられたかです。花粉症の治療効果や、鼻づまりそのものが改善したことまでを確かめた研究ではありません。

まとめ

ミント着香マスクは、無香マスクに比べて、着用直後の鼻の不快感をより小さく感じさせました。その後の時系列でも着香条件は快適側でしたが、時間がたつほど改善が進んだり、香りを出し直すたびにさらによくなったりする効果は、明確ではありませんでした。

仕事や家事への前向きさの自己評価にも違いがありました。香りのある製品を評価するときは、最初の快適さ、時間の経過、刺激を出し直したときの変化を、それぞれ確かめる必要があると教えてくれる研究です。

本研究はユニ・チャーム、北海道大学、福山大学の共同研究として実施され、利益相反欄にその関係が記載されています。研究当時、著者6人のうち3人はユニ・チャームに所属していました。北海道大学大学院文学院「共生の人文学」プロジェクトの助成も受けています。

参考文献

前澤知輝,宮崎由樹,松長芳織,若杉慶,柴田彰,河原純一郎.衛生マスクへの着香が花粉症の不快感低減に及ぼす効果とその時間的推移.人間工学.2020;56(1):29–33.原著論文(公開全文)。