歯みがき剤で、翌朝のにおい成分はどこまで変わる?

歯みがき剤で、翌朝のにおい成分はどこまで変わる? 香りの科学

歯磨きの後にすっきり感じることと、においの原因になる成分が少なくなることは、別々に調べられます。2011年の研究は、二つの歯磨き剤を使った後の口の中の気体を分析し、翌朝まで硫黄化合物がどれだけ残るかを比較しました。

試験した処方は、0.1%のo-cymen-5-olと0.6%の塩化亜鉛、フッ化ナトリウムを含むものです。フッ化ナトリウム入りの対照歯磨き剤に比べ、1週間使った後の翌朝、硫化水素とメチルメルカプタンの合計が、開始値を調整した比較で27.0%低いという結果が得られました。

同じ人が二つの歯磨き剤を使う試験

研究は英国の1施設で行われました。89人を調べ、78人を二つの使用順序に無作為に割り付けています。割り付け時の内訳は男性18人、女性60人、平均年齢46.3歳でした。効果の解析に含まれたのは75人で、全日程を完遂しなかった人は10人です。解析対象の人数と完遂人数は同じではありません。

参加者は口や全身がおおむね健康で、少なくとも3回の検査で、口の気体に含まれる硫化水素が300 ppbを超える人に限りました。におい成分が繰り返し検出される人で比較するためです。

各人は、まず一方の歯磨き剤を朝晩7日間使い、7〜21日の間隔をあけて、もう一方を7日間使いました。このように同じ人を二つの条件で比べる方法を、クロスオーバー試験といいます。歯磨き剤はどちらも白色で、コードを付けた白いチューブに入れられ、評価者には中身を知らせませんでした。

「12時間後」は翌朝、その後にもう一度磨いて測定

各期間の初日に、使用前の口の気体を3回採って基準にしました。その後は朝晩の歯磨きを続け、8日目の朝、前夜の歯磨きから約12時間後の気体を採取します。

その場で指定の歯磨き剤を使って1分間磨き、口に残った歯磨き剤を含む液をさらに10秒間行き渡らせてから吐き出しました。続いて、直後、1時間後、2時間後、3時間後にも測っています。つまり、同じ朝から12時間ずっと追ったのではなく、一晩後の測定と、翌朝の再度の歯磨き後の測定を組み合わせた設計です。

検査前はにおいの強い食品などを控え、気体は決められた採取手順で集めました。分析にはガスクロマトグラフィーを使い、硫化水素とメチルメルカプタンを別々に測定しています。論文で「総VSC」と呼ぶ値は、この2成分の合計です。

低い濃度は翌朝にも確認された

試験処方では、硫化水素、メチルメルカプタン、その合計が、調べたすべての時点で対照処方より有意に低くなりました。開始時の値や使用順序などを考慮した合計値の比較は、次のとおりです。

  • 翌朝の12時間後:対照より27.0%低い。
  • その朝の歯磨き直後:対照より91.8%低い。
  • 1時間後:81.1%低い。
  • 2時間後:64.8%低い。
  • 3時間後:57.5%低い。

これらは、対数変換して解析した濃度について、開始時からの変化を調整した処方間の相対差です。本人が感じる爽快感や、他者が感じる口臭の強さが、そのまま同じ割合で変わったという数値ではありません。

個別成分でも、翌朝は試験処方の硫化水素が対照より28.5%、メチルメルカプタンが23.7%低くなりました。一方、対照処方にも、1〜3時間後の合計値が使用開始前より低くなる結果がありました。歯磨きだけの変化もある中で、試験処方に追加の差が見られたという比較です。

香りで覆っただけか、成分が減ったか

この研究が機器分析を選んだ理由の一つは、歯磨き剤の香味が、人の嗅いだ口臭評価に影響し得るためでした。特定の成分を測れば、製品の香りによる印象とは分けて、口の気体に含まれる量を確認できます。

著者は、o-cymen-5-olと塩化亜鉛の組合せについて、既報の抗菌作用と、亜鉛によるにおい成分の化学的な中和を、作用の背景として挙げています。今回の試験は、その組合せを含む歯磨き剤で硫黄成分が減ることを示しました。

ただし、菌数や個々の反応を直接追った実験ではなく、各成分を単独で使う条件もありません。どちらの成分がどれだけ働いたか、組み合わせることで相乗効果があったかは、今回の結果だけでは分離できません。

においの評価と安全性について残る範囲

硫化水素とメチルメルカプタンは口臭を調べる重要な指標ですが、息にはほかの成分もあります。この試験では、人が嗅ぐ官能評価や、本人の爽快感・生活上の変化は測定していません。結論は、まず測定した2成分の濃度に関するものとして読むのが適切です。

試験中に報告された有害事象は26人で31件、そのうち口に関するものは12件で、いずれも軽度でした。製品と関連するとされた口の事象は、試験処方で唇の刺激感1件、対照処方で口の乾燥と歯茎の痛みの2件です。重篤な有害事象はありませんでした。

各処方を使った期間は1週間で、参加者も一定以上の硫化水素がある人に選ばれています。この条件での効果と観察された有害事象を示す研究であり、長期使用や、異なる原因の口臭を広く評価した試験とは区別が必要です。

まとめ

o-cymen-5-olと塩化亜鉛を含む試験歯磨き剤を1週間使うと、対照歯磨き剤に比べ、硫化水素とメチルメルカプタンが、歯磨き直後だけでなく翌朝も低くなりました。2成分の合計では、開始値を調整した翌朝の処方間差が27.0%でした。

この研究の読みどころは、口に残る香りや爽快感とは別に、時間をあけたにおい成分の量を測ったことです。歯磨き剤の「においへの働き」を考える際には、何を、いつ、どんな対照と比べた結果なのかが大切になります。

研究費はGlaxoSmithKline Consumer Healthcareが提供し、研究当時、著者5人のうち4人が同社に所属していました。社外著者は原稿作成の追加報酬を受けておらず、同社所属著者は潜在的な利益相反はないと申告しています。

参考文献

Payne D, Gordon JJ, Nisbet S, Karwal R, Bosma ML. A randomised clinical trial to assess control of oral malodour by a novel dentifrice containing 0.1%w/w o-cymen-5-ol, 0.6%w/w zinc chloride. International Dental Journal. 2011;61(Suppl 3):60–66. 原著論文(公開全文)。