緊張してかく汗は、運動後の汗と同じにおい?

緊張してかく汗は、運動後の汗と同じにおい? 香りの科学

緊張してかいた汗と運動中の汗は、においも同じなのでしょうか。2013年の研究では、同じ男性から集めた汗を比べると、緊張場面の試料は運動時より汗の量が少ないのに、においは強く評価されました。

この比較に加え、研究の主な目的は、ロールオン、スティック、エアゾールという三つの形の無香料制汗剤が、緊張時の汗とにおいを抑えられるかを確かめることでした。数日間使った後、最後の塗布から48時間を空けて評価しています。

面接と暗算で、緊張する場面を作った

研究者らが使ったのは、模擬面接と暗算を組み合わせたTSSTというストレス課題です。参加者は、短い準備の後、委員の前で就職面接を想定したスピーチを行い、続いて2023から17ずつ引く暗算をしました。間違えると最初からやり直す、計15分の課題です。

実際に緊張反応が起きたかは、心拍数と唾液中のコルチゾール、本人の質問紙回答で確認しました。各製剤群で心拍数とコルチゾールは上がり、本人もストレスを感じたと報告しています。無処置側の脇では、15分間に平均約0.3 gの汗が集まりました。

緊張時の試験には95人を募集し、製品の塗布量の逸脱、採汗パッドのずれ、外れ値などを除いた製剤の効力解析は84人分でした。各製剤28人で、全員に三つの製剤を使った設計ではありません。なお、無処置側の発汗量をまとめた解析は88人で、製剤の効力解析とは人数が異なります。

片方の脇に塗り、反対側と比べる

健康な非喫煙の男女を対象に、使用前の洗浄や製品使用をそろえた後、左右どちらか一方の脇へ試験品を塗りました。塗る側は無作為に決め、反対側は無処置としました。ロールオンは4日間、スティックとエアゾールは5日間連続で使用し、最後の使用から48時間後にストレス課題を行いました。

三つの製剤にはアルミニウム塩などの制汗成分と亜鉛化合物が含まれ、香料は入っていませんでした。エアゾールには男女別の処方もあります。形だけを変えた同一処方ではなく、成分や塗布量にも違いがあります。

汗は脇に固定した綿のパッドで集め、重さの増加を測定しました。においは凍結保存したパッドを室温に戻して、訓練された6人が0〜5の尺度で評価しています。

汗量は三製剤とも減少、においには一部例外

緊張課題中の汗量は、三製剤とも男女それぞれで無処置側より少なくなりました。個人ごとの減少率を平均すると、ロールオンは男性51%・女性55%、スティックは男性58%・女性50%、エアゾールは男性33%・女性50%でした。個人差は大きく、同じ製剤群内での男女差は有意ではありませんでした。

においの評点も、男性の三群と女性のロールオン・エアゾール群では塗布側が低くなりました。例外は女性のスティック群で、無処置側1.86、塗布側1.74という平均値の差は有意ではありませんでした。著者らは、この群では無処置側のにおいがもともと弱かったことを説明の候補に挙げています。

この結果は、試験した処方と使用手順において、最後の使用から48時間後にも緊張時の汗量への作用が確認できた、というものです。香りで覆う試験ではありませんが、汗の減少と細菌への作用を個別に切り分けた試験でもありません。数値の大小だけから、剤型の一般的な優劣を決めることはできません。

暑さによる汗でも、ロールオンを確認

研究には別の温熱試験もあり、ロールオンを代表として調べました。82人を募集し、76人が完了しています。約38℃の部屋で40分間過ごした後、20分間の汗を集めました。こちらも4日間塗布し、最後の使用から48時間後に測定する手順です。

無処置側では約1 gの汗が集まり、塗布側の汗量は男女とも有意に少なくなりました。個人ごとの減少率の平均は全体で28%でした。緊張課題とは参加者や環境、採汗時間が異なるため、減少率だけを直接比べて、どちらの汗に何倍効くと考えることはできません。

緊張時は、汗が少なくてもにおいが強かった

もう一つの比較では、男性19人から緊張課題と自転車エルゴメーター運動の汗を集めました。運動は製剤を使い始める前に行い、25分間のうち最後の15分間に採汗しています。同じ人の無処置側の汗を比べると、運動時は平均0.601 g、緊張時は0.402 gでした。

しかし、訓練パネルによるにおい強度は、緊張時2.77、運動時2.13で、緊張時のほうが有意に高くなりました。汗の重さが大きいほど、必ずにおいも強い、という関係にはなっていなかったのです。

さらに、訓練を受けていない男女20人が、同じ人の二つの試料から緊張時のものを選ぶ課題を行いました。平均正答率は約56%で、偶然の水準をわずかに上回りました。「区別できない」という回答も可能な課題でした。これだけで、普段の生活で他人の緊張を正確に嗅ぎ取れるとまでは言えませんが、二つの状況の汗が同じ感覚特性ではないことを支えています。

分かったのは、特定の製剤と試験条件での効果

ストレス試験は塗布の有無を隠さない設計で、無処置側との比較です。採汗パッドの固定状態によって汗の回収量が変わりうることや、解析から除外された参加者がいることも、著者らが注意点として挙げています。

また、汗のにおいの化学成分や皮膚の菌を直接分析していないため、緊張時のにおいを強くした分子はこの研究では特定されていません。結果は市販の制汗剤すべてや、任意の使い方に当てはまる保証ではなく、検討した製剤の評価として読むのが適切です。

まとめ

同じ男性の汗を比べると、緊張時は運動時より採れた量が少なくても、においは強く評価されました。汗の量だけでは、感じるにおいを説明しきれないことが分かります。

製剤試験では、数日間使った三つの無香料制汗剤が、最後の塗布から48時間後の緊張時の汗量を、無処置側より減らしました。においも多くの群で低下しましたが、女性のスティック群では有意差がありませんでした。別の温熱試験でもロールオンの汗量低下が確認され、汗が出る状況と、汗量・においの両方を分けて評価する意義を示しています。

研究の資金・所属:研究費はBeiersdorfが全額提供し、研究当時、著者6人は全員同社に所属していました。独立した利益相反の申告欄は確認できませんでした。

参考文献

Schmidt-Rose T, Lehmbeck F, Bürger A, Windisch B, Keyhani R, Max H. Efficient sweat reduction of three different antiperspirant application forms during stress-induced sweating. International Journal of Cosmetic Science. 2013;35:622–631. doi:10.1111/ics.12086