冷凍していても、食品は冷凍庫のにおいをもらう?

冷凍していても、食品は冷凍庫のにおいをもらう? 香りの科学

冷凍食品の風味が変わる理由は、乾燥や油の酸化だけではなさそうです。2016年の研究では、家庭の冷凍庫で袋を開けたまま1か月保存したからあげに、周囲の揮発性成分が取り込まれ、実際に異臭を感じる例がありました。さらに、袋の閉じ方によって、取り込まれる成分の量も変わりました。

研究者たちが調べたのは、家庭の生活環境にある成分が、冷凍中の食品へ移る「収着」です。成分が表面に付いたり、内部へ取り込まれたりする現象を指します。冷凍庫内の成分調査、食品による違い、開封後の包装方法を組み合わせて確かめています。

家庭の冷凍庫で、開封したからあげを保存

最初の試験では、社内の協力者1家庭の冷凍庫で、市販の冷凍からあげの袋の一辺を開け、約−18℃で1か月保存しました。同時に、周囲の揮発性成分を取り込む専用フィルムを置き、食品とフィルムに共通して現れる成分を分析しました。

保存後のからあげは所定の方法で加熱し、専門パネル6人が未開封品と比較しました。他の食品も一緒に入っていた条件では、6人全員が樹脂や薬品を思わせる異臭を認めました。一方、試料のからあげだけを入れた条件では、明確な異臭を認めた人はいませんでした。

この試験では、開封品に水分の減少や、油の酸化に関わる酸価・過酸化物価の上昇は確認されませんでした。そのため著者たちは、今回の風味変化を、乾燥や脂質の酸化だけで説明するのは難しく、周囲から取り込まれた成分が関わったと考えています。

成分が見つかることと、異臭の原因が分かること

続いて別の7家庭で同様の1か月試験を行うと、どの家庭の試料でも、6人中少なくとも1人が異臭を認めました。表現には樹脂様、柑橘様、塗料様、洗剤様などがあり、感じた人数や成分構成は家庭ごとに違いました。

研究で注目した成分は、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)とスチレンです。両方とも、この7家庭のからあげと捕集フィルムから検出されました。著者たちは、生活環境や冷蔵庫の材料に由来する成分が、冷凍保存中にも食品へ取り込まれたかを調べる指標として、この二つを取り上げています。

重要なのは、両成分の濃度と、異臭を認めた人数には相関が見られなかったことです。成分の検出は移行を追う手掛かりになりますが、異臭の強さをそのまま表す指標にはなりませんでした。実際にどの成分、あるいはどの組み合わせが異臭を生んだのかは、この研究では特定されていません。

また5家庭で、冷凍庫内と近くの台所に捕集フィルムを置くと、p-DCBはどの家庭でも庫内側のフィルムに多く取り込まれました。これはフィルム中の濃度の比較です。低温や空気の入れ替わりが収着に影響するため、庫内の空気濃度そのものが高いと直接読み替えることはできません。

食品の種類によって、取り込み方が違う

次の試験では、からあげ、ハンバーグ、今川焼、枝豆、野菜ミックスの5食品を使いました。開封口を折りたたんで輪ゴムで留め、最長91日間、p-DCBとスチレンの濃度を追いました。

枝豆と野菜ミックスでは、この2成分の顕著な増加は見られませんでした。一方、からあげ、ハンバーグ、今川焼では増加し、特にからあげで大きくなりました。この試験では28〜35日ごろに急な増加がありましたが、その日数をすべての食品に共通する保存期限とすることはできません。

著者たちは、油脂とのなじみやすさや、衣・生地の表面構造が違いに関わった可能性を挙げています。ただし、食品の組成、表面、元の包材はまとめて異なっており、油脂だけの効果を分離した試験ではありません。

開封口を広く閉じた条件では、成分の収着が少なかった

最後に、からあげを1か月保存する方法を5条件で比べました。未開封、開封したまま、折りたたんで輪ゴムで留める、開封品をチャック付きポリエチレン袋に入れる、開封口を折りたたみ全面クリップで留める、という条件です。

開けたままの袋と比べ、輪ゴムで留めた条件の濃度は、p-DCBが約3分の2、スチレンが約4分の3でした。抑制は比較的小さく、開封口を全面クリップで閉じた条件では、両成分とも約5分の1になりました。

チャック付きポリエチレン袋に入れた条件では、p-DCBは約3分の1、スチレンは約4分の1でした。未開封品では、保存前からの増加が小さく保たれました。袋の口を閉じることに加え、包材自体の成分の通しにくさも関わる、というのが著者たちの解釈です。

この比較の対象は、特定のからあげと包材、厚さ0.04mmのポリエチレン袋などです。数値はその条件での2成分の濃度であり、異臭全体が同じ割合で減ったという意味ではありません。健康影響や食品の安全性を判定する試験も行っていません。

まとめ

開封した冷凍食品は、凍っている間も周囲の揮発性成分を取り込み、風味が変わることがあります。この研究では、保存後のからあげに異臭が認められ、5食品の比較では、からあげなどの方が枝豆や野菜ミックスより指標成分を多く取り込みました。

また、からあげの開封口を全面クリップで閉じた条件は、開けたままの条件より、p-DCBとスチレンの収着濃度が低くなりました。「冷凍だから香りの移動も止まる」とは限らず、開封後の包装も風味を左右する要素だと分かります。異臭の原因成分そのものを突き止めることは、引き続き課題として残りました。

著者4人は、論文掲載時にニチレイの品質保証部食品安全センター所属と記載されています。独立した研究資金・利益相反の申告欄は確認できませんでした。

参考文献

倉員貴昭・鈴木稚子・伊藤千恵子・島原義臣(2016)「家庭用冷蔵庫内における揮発性有機化合物の冷凍食品への収着に関する研究」日本食品化学学会誌、23(2)、95–101。doi:10.18891/jjfcs.23.2_95(原著全文)