同じ洗濯機で洗ったタオルは、見た目がきれいになるだけでなく、付いている菌の顔ぶれまで似てくるのでしょうか。
2023年の研究では、30人が使った綿タオルを調べ、洗う前には人ごとに異なっていた菌の構成が、洗濯後には似通うことが示されました。さらに、比較した二つの洗剤のうち抗菌作用を持つ処方では、洗濯後の菌数と悪臭に関わる成分が少なく、湿度の高い条件に置いた後のにおいも、人が嗅ぐ評価でより好ましく受け止められました。
洗濯中の「菌の移動」と、その先のにおいを調べる
P&Gと中国科学院などの研究チームが調べたのは、実際に使われたタオルの菌が洗濯中にどう移り、その変化がにおいにつながるかという問題です。実験用の布に一種類の菌を付けるだけでは、家庭で使った布にいる多様な菌の関係を捉えきれません。
そこで、菌のDNAを調べて種類の構成を捉える解析と、培養して増える菌の数の測定、揮発するにおい成分の分析、人が嗅いだ評価を組み合わせました。菌の構成を「属」より細かい「種」の単位で見たことも特徴です。同じグループの菌でも、においを作る性質は一様とは限らないためです。
30人のタオルを半分にして、二つの洗剤で比較
大阪の30人に、滅菌した新品の綿ハンドタオルを3日間使ってもらいました。回収したタオルはそれぞれ半分に切り、一方を抗菌作用のない比較洗剤、もう一方を抗菌洗剤で洗いました。同じ人が使ったタオル同士を比べられる設計です。10人分ずつ、3つの洗濯バッチに分けています。
洗濯は小型の市販洗濯機で、25℃の精製水6Lに洗剤を1L当たり1g入れ、10分洗った後、3分のすすぎを2回行いました。毎回、洗濯機を分解してエタノールで消毒し、洗濯槽に残っていた菌の影響をできるだけ小さくしています。
二つの洗剤は、抗菌成分一つだけが違う処方ではありません。比較洗剤の製品pHは8.7、抗菌洗剤はクエン酸によるpH調整を含み、製品pHは2.5でした。したがって、結果は今回使った二つの処方の比較として読む必要があります。
洗濯前、洗濯直後、その後の変化を調べるために集めた試料は計124点です。室内干しを模した工程では、布を25℃、相対湿度90%超で24時間置きました。家庭の部屋で自然乾燥させた試験ではなく、湿った状態が続く高湿度の実験条件です。
洗う前の個人差が、洗濯後には小さくなった
洗濯前のタオルでは、菌の種類と割合が大きく異なっていました。ところが、一緒に洗った後は菌の構成が似通い、その傾向は高湿度で置いた後にも残りました。これは3回の洗濯バッチで観察され、どちらの洗剤でも起きていました。
菌の数にも似た動きがありました。もともと菌が多いタオルでは洗濯後に減る一方、少ないタオルでは増える場合があり、洗濯後にはタオル間のばらつきが小さくなりました。洗濯を「どの布からも菌が同じ割合で落ちる工程」と考えるだけでは捉えられない変化です。
研究チームは、新しく滅菌した布も一緒に洗いました。この布にも、使用済みタオルと似た菌の構成が現れました。さらに、すすぎ水に別の滅菌布を2分間浸す試験でも、その水に似た菌の構成が見られました。これらは、洗濯中の布同士の接触と、水を介した移動が、菌の混ざり合いに関わるという解釈を支えています。二つの経路がそれぞれ何割を占めるかまでは分けていません。
抗菌洗剤では菌数が少なく、その差は乾燥後にもつながる
培養できる菌の数を比べると、抗菌洗剤で洗ったタオルは比較洗剤より1.45 log10低い値でした。これは約28分の1に相当する差で、統計的にも有意でした。DNA量を使った別の測定でも、菌量が少ないという方向が確かめられています。
ただし、高湿度で24時間置く間には、どちらの処方でも菌が増えました。増加幅は比較洗剤で1.51 log10、抗菌洗剤で1.41 log10と近く、今回の抗菌処方は、その後の増殖を完全に止めたわけではありません。洗い終えた時点の菌量を低くしたことが、その後の状態にも関わっていました。
抗菌洗剤の群では、洗濯後のタオル同士の菌の構成が、比較洗剤の群ほど一様になりませんでした。すすぎ水に浸した新品の布にも菌が少なかったことと合わせ、菌を減らすことによって洗濯中の移動も弱まったと研究チームは考えています。
においの分子と、人が嗅いだ印象を確かめる
菌が少ないという結果だけで、においが弱いとは決まりません。研究では、悪臭成分を作ることが知られている6種の菌をタオルから検出しました。そのうち5種を実際に分離して培養すると、ジメチルジスルフィド(DMDS)が発生しました。DMDSは硫黄を含む揮発性の分子で、研究チームが室内干しの悪臭を調べる指標にした成分です。
抗菌洗剤で洗った布では、これらの悪臭に関わる菌の量が少なく、無作為に選んだ10枚の使用済みタオルを用いる成分分析でも、比較洗剤よりDMDSが少ない結果でした。これは機器で測った、特定のにおい成分の違いです。
これとは別に、5人の評価者が、使用済みタオル由来の布、一緒に洗った滅菌布、すすぎ水に浸した布のにおいを評価しました。室内干しを模した工程の後には、抗菌洗剤で処理した布がより好ましく評価されています。菌の数、におい成分、人の感じ方が、いずれも同じ方向の違いを示した点が、この研究の重要な成果です。
なお、DMDSだけでタオルのにおい全体が決まるわけではありません。著者らも、布の悪臭には複数の菌と、それらが作る多様な成分が関わると議論しています。
家庭の洗濯に重ねるときの範囲
この研究は、実際に人が使った布を出発点にした一方、洗濯機を毎回消毒し、精製水と決められた量の洗剤を使った比較です。長く使っている洗濯機、異なる繊維、別の洗剤、風通しのよい室内干しまで同じ結果になるとは限りません。
また、菌のDNAによる構成解析は、生きた菌と死んだ菌を区別しません。培養による測定を併用していますが、DNAで見つかったすべての菌がその場で増え、においを作っていたと読むことはできません。調べたのは洗濯中の菌とにおいであり、感染症の発生や健康への影響ではありません。
製品の酸性度は作用を考える手がかりですが、クエン酸を家庭で洗剤に足す実験をしたわけではありません。今回の結果は、成分の組み合わせを含む洗剤処方の評価です。
まとめ
使用済みの綿タオルでは、洗濯前の菌の構成は人によって違い、一緒に洗うと似通いました。新品の滅菌布とすすぎ水を使った試験も、洗濯中に菌が布や水を通じて移動することを支持しています。
今回の抗菌洗剤は、比較洗剤より洗濯後の菌数を低くし、悪臭に関わる菌とDMDSを減らしました。高湿度の模擬室内干し後には、人によるにおいの評価にも違いが表れました。洗濯後のにおいを考えるときには、洗う前に付いていた菌だけでなく、洗っている間の移動と、その後に増える過程までつながっているのです。
著者のうち10人はP&Gの社員です。研究はP&G–中国科学院のiMicroCare共同研究基金の支援を受け、中国の国家重点研究開発計画、中国科学院、中国国家自然科学基金の支援も記載されています。
参考文献


