酸化したラベンダー油に、アレルギー反応は出る?

酸化したラベンダー油に、アレルギー反応は出る? 香りの科学

精油は、多くの成分が混ざったものです。空気に触れて酸化すると、もとの成分とは違う物質が生まれることもあります。では、酸化したラベンダー油への接触アレルギーは、主な成分だけを調べれば捉えられるのでしょうか。

Lina HagvallとJohanna Bråred Christenssonが2016年に発表した研究は、皮膚炎の患者を対象に、この点を調べました。酸化したラベンダー油と、主要成分をそれぞれ酸化した試料への皮膚反応を比べ、診断で見逃される反応がないかを検討した研究です。

精油そのものと、主要成分を分けて調べる

ラベンダー油の主な成分には、リナロールと酢酸リナリルがあります。これらは空気中の酸素と反応し、ヒドロペルオキシドという酸化生成物を作ることがあります。先行研究では、こうした生成物が皮膚の感作に関わることが示されていました。

感作とは、ある物質に対して免疫系が反応する状態になることです。感作された人がその物質に再び触れると、遅れて皮膚炎が起こることがあります。今回のパッチテストは、このような接触アレルギーを調べるための診断用検査です。

研究者らは、ラベンダー油と酢酸リナリルを45週間、リナロールを25週間、空気に触れさせました。酸化した試料をそれぞれ6%の濃度でワセリンに混ぜ、検査に使っています。家庭で使う新鮮な精油を、そのまま試したものではありません。

さらに、酸化試料と検査用製剤を化学分析し、主要な酸化生成物がどれくらい含まれるかを調べました。同じ「6%」でも、混合物に含まれる各酸化生成物の濃度まで同じになるわけではありません。

対象は、皮膚炎を調べるために受診した1693人

対象は、2008〜2010年にスウェーデンのサールグレンスカ大学病院で検査を受けた患者1693人です。男性517人、女性1176人で、平均年齢は45.7歳でした。アレルギー性接触皮膚炎が疑われ、通常の基準となる一連の検査も受けた人たちです。

検査では、試料を背中の上部に48時間貼り、3〜4日目と7日目に皮膚反応を判定しました。これは医療機関で決まった条件と基準に沿って行う検査であり、家庭で精油を塗って反応を見る方法ではありません。

酸化したラベンダー油に47人が陽性

酸化したラベンダー油に陽性反応を示したのは、1693人中47人、2.8%でした。陽性のうち30人は弱い反応、17人はより強い反応でした。

この2.8%は、皮膚炎のために検査を受けた患者の中での陽性率です。一般の人がラベンダー油を使うと2.8%の確率でアレルギーになる、という意味ではありません。検査が新たなアレルギーを作った割合を数えたものでもありません。

また、はっきり陽性とは判断できない「疑わしい反応」は55人、3.2%に見られました。著者らも、疑わしい反応が多いことを踏まえ、刺激による反応などを陽性と誤る可能性には注意が必要だと論じています。疑わしい反応を陽性47人に足した数字ではありません。

主要成分の検査だけでは、拾えない反応があった

この研究の中心は、陽性率そのものより、どの試料に反応が重なったかです。酸化ラベンダー油に陽性だった人のうち、三つの試料を比較できた44人では、19人が、酸化したリナロールと酸化した酢酸リナリルのどちらにも反応しなかったと報告されています。

つまり、この患者群では、主要な二成分を酸化した試料だけを使うと、酸化した精油全体への反応をすべて捉えることはできませんでした。逆に、主要成分の酸化試料に反応しても、精油全体には反応しない人もおり、三つの検査は完全に置き換えられるものではありません。

通常の検査に含まれる香料関連の指標物質との重なりも調べました。比較できた44人のうち23人は、少なくとも一つの指標に陽性でした。著者らは、こうした検査に加えて、組成をそろえた酸化ラベンダー油の製剤が、診断の助けになる可能性を提案しています。

なぜ、精油全体でだけ反応するのか

考えられる説明の一つは、複数の物質が一緒に存在することで、皮膚の反応が強まることです。もう一つは、複雑な混合物の中で成分同士が反応し、主要二成分の酸化試料だけにはない物質ができる可能性です。

ただし、今回、主要二成分に反応しなかった人について、原因となる別の物質をすべて突き止めたわけではありません。混合物としての作用や未知の生成物は、結果を説明するために著者らが挙げた仮説です。

酸化状態をそろえることが、診断にも重要

精油は、名前が同じでも、時間とともに中身が変わりえます。著者らは、検査に使う油の酸化状態が分からなければ、施設や時期による結果の違いを比べにくくなると指摘しています。

そのため、単に「酸化しているらしい」と測るだけでなく、どの酸化生成物がどれくらいあるかを、適切な分析法で確認する必要があります。組成が標準化された検査製剤を作ることと、化粧品などに含まれる酸化生成物を検出する方法を進めることが、論文の重要な提案です。

この研究だけでは分からないこと

陽性だった患者それぞれの普段の皮膚炎が、実際にラベンダー油への曝露によって起きていたかという「臨床的な関連性」は、この研究では個別に評価していません。パッチテスト陽性と、いまの症状の原因であることは、同じではありません。

また、新鮮な精油と酸化した精油を同じ患者で比較した試験でも、天然由来と合成由来の同一成分を、ほかの条件をそろえて比べた試験でもありません。日常の製品でどの程度酸化し、どの濃度で触れると症状が出るかを、この結果だけから数値化することはできません。

著者らは利益相反なしと申告しています。検査に使う試料の濃度や酸化条件は研究用のもので、自己判断で同じ試験を再現するための目安にはできません。

まとめ

皮膚炎患者への検査では、酸化したラベンダー油に陽性反応が見られ、主要二成分を酸化した試料だけでは捉えられない反応もありました。精油を複雑な混合物として、さらに酸化によって変化するものとして調べる意味を示しています。

著者らが求めているのは、天然か合成かというラベルだけでの判断ではなく、実際に触れる物質と、検査する物質の中身を詳しく知ることです。酸化状態をそろえた診断材料と、酸化生成物を捉える分析法が、接触アレルギーをより適切に調べるための課題になります。

参考文献

Hagvall, L., & Bråred Christensson, J. (2016). Patch Testing with Main Sensitizers Does Not Detect All Cases of Contact Allergy to Oxidized Lavender Oil. Acta Dermato-Venereologica, 96, 679–683. DOI: 10.2340/00015555-2319 / 原著全文。原著のライセンス:CC BY-NC 4.0。