香り付きの製品は、自分で選んで使うものだけではありません。職場の清掃用品、公共施設の芳香剤、近くの人が身につけた製品など、避けにくい場所にもあります。そうした環境で、喘息のある人はどんな困りごとを報告しているのでしょうか。
Anne Steinemannが2018年の学術誌に掲載した研究は、米国のオンライン調査から、この問題を調べました。ここでの「喘息のある人」には、喘息そのものに加え、喘息に似た状態と医療者から告げられた、と本人が回答した人も含まれます。診療記録を確認した患者調査とは異なる点が、結果を読む出発点になります。
1137人の調査から、305人の回答に注目する
調査は2016年6月、米国の18〜65歳1137人を対象に行われました。オンライン調査会社の登録者から、年齢、性別、地域の構成が米国の人口を反映するように集めた標本です。
そのうち305人が、喘息または喘息に似た状態について、医療者から告げられたと回答しました。この人たちを研究では一つの群にまとめ、残りの832人と比較しています。以下では、前者を「喘息等の自己申告群」と呼びます。
尋ねたのは、香り付き製品を使う頻度や周囲から触れる機会、製品と関連づけて感じた健康上の問題、公共の場所や職場での困難、香りのない環境への希望などです。以前に発表された一般人口の調査と同じ回答を、喘息等の有無に注目して詳しく分析した研究です。
対象となる製品には、香水だけでなく、芳香剤、消臭剤、洗剤、柔軟剤、清掃用品、せっけんやシャンプーなどが含まれています。特定の香水や、特定の合成香料を単独で試したものではありません。
健康上の問題を報告した割合には差があった
香り付き製品によって何らかの健康上の問題を経験すると答えたのは、喘息等の自己申告群の64.3%でした。それ以外の群では23.8%で、前者のほうが高い割合でした。
喘息等の自己申告群305人を分母にすると、呼吸の問題は43.3%、片頭痛は28.2%、喘息発作は27.9%が報告しました。一人が複数の症状を答えられるため、これらを足して人数の割合にすることはできません。
ここで示されているのは、回答者が製品との関連を感じて報告した経験です。研究者が発作をその場で確認したり、肺機能を測ったりした割合ではありません。また、香り付き製品を使うと新たに喘息になる確率を調べた研究でもありません。
自分で使わなくても、困る場面がある
喘息等の自己申告群では、99.3%が、自分または他人による香り付き製品の使用に、少なくとも週1回接していると回答しました。
具体的な場面では、芳香剤や消臭剤による健康上の問題を41.0%、香り付き製品で掃除したあとの部屋では42.3%、香り付き製品を身につけた人の近くでは46.2%が報告しました。乾燥機の排気から来る、香り付き洗濯用品の匂いでは28.9%でした。
これらも、喘息等の自己申告群全体を分母にした回答割合です。各場面で実際に吸い込んだ量や、どの成分に反応したかまでは測っていません。複数の場面で困った人も含まれるため、互いに独立した人数ではありません。
症状だけでなく、場所の利用や仕事にも影響
この研究の特徴は、症状の種類だけでなく、日常生活への支障を尋ねたことです。喘息等の自己申告群の36.7%が、芳香剤などのため公共のトイレを利用できないことがあると答えました。香り付き製品で具合が悪くなるため行けない場所がある、という回答は43.9%でした。
また、職場の香り付き製品によって、体調を崩す、仕事を休む、仕事を失う、といういずれかを経験したかという質問には、35.4%が「はい」と答えました。これは三つをまとめた項目であり、35.4%が失職した、あるいは全員が欠勤した、という意味ではありません。
健康上の問題を報告した196人に限ると、62.8%は、その問題が呼吸や集中、仕事などの主要な日常活動を大きく制限すると回答しました。この数字は305人全体の割合ではなく、また、法的な障害認定を受けた割合でもありません。
著者は、自分では選びにくい曝露が、仕事や公共施設を利用する機会の制約につながっている点を重視しています。香りの好き嫌いだけでは捉えられない生活上の困難を、質問票で可視化しようとした研究です。
香りのない環境への希望も調べた
喘息等の自己申告群では、職場で香り付き製品の使用を控える方針を支持する人が66.2%、支持しない人が16.1%でした。医療施設や医療従事者が香り付き製品を使わないことを望む人は、72.1%でした。
これらは、回答者がどんな環境を望むかを示しています。実際に方針を導入した前後で、発作や欠勤がどれほど減ったかを測った数字ではありません。
調査から分かることと、残る問い
著者は、特に職場や医療施設などで、香り付き製品に触れる機会を減らすことが、健康や社会参加への負担を軽くする実用的な方法になりうると提案しています。同時に、どの成分や成分の組み合わせが、どの症状と関係するのかを調べる研究が必要だと述べています。
ただし、この調査は一時点の自己申告です。症状を思い出すときの偏りや、原因を製品に結びつける判断、調査に参加する人の特徴などが結果に影響する可能性があります。年齢、性別、地域をそろえたオンライン標本でも、すべての米国人の経験を漏れなく代表するとは限りません。子どもや66歳以上の人も対象外でした。
また、製品の放出成分や曝露量を直接測っていないため、この研究だけで、原因物質や発症の仕組みを特定することはできません。自己申告にはこうした限界がありますが、それを理由に、報告された不調や生活の支障そのものを否定することもできません。
まとめ
米国のこの調査では、喘息または喘息様の状態について医療者から告げられたと答えた人が、香り付き製品に関連づける症状や生活上の困難を、より多く報告していました。公共の場所や職場など、自分の選択だけでは調整しにくい場面も含まれていました。
原因を実験で確定した研究ではありませんが、どこで誰が困っているかを知る資料になります。曝露を減らす環境づくりの可能性を検討し、その効果と仕組みを別途確かめる。症状への対応と、社会参加を妨げる条件の両方に目を向ける必要性を示しています。
参考文献
Steinemann, A. (2018). Fragranced consumer products: effects on asthmatics. Air Quality, Atmosphere & Health, 11, 3–9. DOI: 10.1007/s11869-017-0536-2 / 原著全文。原著のライセンス:CC BY 4.0。(オンライン公開2017年、巻号2018年)


