飲料のラベルは、香りで印象が変わる?

飲料のラベルは、香りで印象が変わる? 香りの科学

飲み物のパッケージに「100%天然」「砂糖の添加なし」と書かれていると、味や健康によさそうかという期待が生まれます。そのラベルを見るとき、飲み物に合う香りが一緒に届いたら、印象は変わるのでしょうか。

Schickerらが2025年に発表した研究は、マンゴーとチョコレートの飲料ラベルに、対応する香りを添え、人の評価と脳の反応を調べました。言葉が匂いの感じ方を変える方向だけでなく、匂いがラベルを含む商品の受け取り方を変える方向に注目した研究です。

2種類の飲料と、5種類の表示を組み合わせる

使ったのは、マンゴー飲料とチョコレート飲料のラベル画像です。それぞれについて、特別な文言のないものと、「100%天然」「人工的な成分なし」「自然由来の糖だけ」「砂糖の添加なし」に当たるドイツ語の文言を入れたものを用意しました。

これは、実際の飲料の栄養成分を比較した研究ではありません。「天然」という表示なら健康的だという前提を置いたものでもなく、そうした言葉を見た人がどう受け取るかを調べています。

ラベルの条件は計10種類。それぞれに、飲料に合う香りを送る条件と、匂いのない溶媒を使う対照条件を設け、計20条件にしました。合わない香りとの比較は行っていません。

同じ人が、香りのある場合とない場合を見る

機能的MRI、略してfMRIによる脳の解析には63人が参加しました。商品の評価は、課題を誤解したと報告した3人を除く60人のデータを用いています。参加者は22〜67歳で、ドイツ語を流暢に使い、所定の嗅覚検査などの基準を満たした人たちでした。

撮像中は、吸うタイミングを示す合図に合わせて息を吸い、ラベル画像を見ます。条件は順序を調整して繰り返し提示されました。機能撮像のあと、各条件をもう一度見せ、匂いの強さや快さ、商品の好ましさ、買いたい度合い、健康的だと思う度合いを0〜10で評定してもらいました。

飲料を実際に飲んだり、お金を払って購入したりする課題ではありません。調べたのは、ラベルと香りから生まれる期待や、その場で表した購入意向です。

香りがあると、商品は好ましく見えた

全体として、対応する香りがある条件では、商品の好ましさと購入意向の評価が高くなりました。上がり方は、マンゴーよりチョコレートで大きく、チョコレートの香り自体がより好まれたことが関わる可能性を、著者らは挙げています。

表示による違いもありました。商品の好ましさでは「100%天然」が、文言のないラベルや「人工的な成分なし」より高く評価されました。購入意向では、文言のないラベルより「100%天然」と「砂糖の添加なし」の評価が高くなりました。

また、商品の好ましさについては、香りの効果が表示によって異なるという統計的な結果も得られました。「100%天然」と「砂糖の添加なし」での香りによる上がり幅は、「人工的な成分なし」より大きくなっていました。

したがって、言葉はまったく関係なく、香りだけが一律に印象をよくしたとは言えません。一方、この結果だけで、「なし」という否定の言い回しを、香りが打ち消したとも判断できません。文言の意味やなじみやすさなども異なるためです。

「健康的に見える」は、別の結果だった

健康的だという期待は、マンゴー飲料のほうがチョコレート飲料より高く、表示では「100%天然」が最も高い評価になりました。しかし、香りがあることで健康的だと思う度合いが上がるという全体の効果は、統計的な有意の基準に達しませんでした。

原著では、その確率値は0.055でした。好ましさや購入意向で見えた効果を、そのまま健康的だという評価にも広げることはできません。もちろん、どの評価も飲料そのものの健康効果を測ったものではありません。

脳では、どんな違いが見えた?

fMRIでは、神経活動に伴う血液の酸素化の変化を手がかりに、脳の反応を調べます。香りがある条件では、匂いの処理に関わる梨状皮質や扁桃体、眼窩前頭皮質などで活動が増えていました。ラベル画像や文言の違いは、視覚に関わる領域などの違いとしても現れました。

ただし、脳全体の解析では、香りの影響が表示によって変わるという交互作用は有意ではありませんでした。商品の好ましさの評定に交互作用があったことと、同じ形の交互作用が脳画像で見つかったことは、別です。

研究者は、領域全体の活動の大きさだけでなく、小さな区画に活動がどう分布するかも比べました。たとえば、総量が同じでも、反応する場所の組み合わせが違うことがあります。この模様の似かたを、香りの有無や商品の評価の似かたと照らし合わせています。

その結果、右の背外側前頭前皮質、左の腹側線条体、右の扁桃体・梨状皮質を含む領域では、香りの有無に応じて活動パターンが異なりました。これらには、感覚情報の扱いや価値判断などに関わる領域が含まれます。

一方、このパターン解析では、香りの有無を考慮したあと、商品への好ましさや購入意向などの評価の違いを、脳の模様が有意に表すという証拠は得られませんでした。個別の領域と評定の関連も調べていますが、香りによる脳の変化から、商品の評価が上がる仕組みまで一直線に説明できたわけではありません。

よい香りの印象が、商品に移ったのかもしれない

著者らは、香りの心地よさを、同時に見ているラベルや商品自体のよさとして受け取った可能性を提案しています。また、香りによって飲んだときの感じを想像しやすくなり、期待外れへの不安や不確かさが減った可能性も挙げています。

どちらも、今回の結果を説明する候補です。香りの快さを商品へ取り違えた過程や、購入の不安が減った過程を、独立に操作して確かめたわけではありません。脳領域の間のつながりや情報の流れを調べることも、次の課題とされています。

さらに、今回の表示は、基本的に肯定的な特徴を伝えるものか中立のものです。「健康的だが、おいしくなさそう」といった否定的な期待を強く起こす表示を、香りが補えるかは、今後確かめる必要があります。

店頭や別の商品でも、同じとは限らない

対象は2種類の飲料と、限られたドイツ語の表示でした。買う場面では価格、個人の好み、空腹、周囲の状況なども関わります。今回の評価が、そのまま店頭の売上や飲む量、食生活の改善に結びつくとは言えません。

著者らの一人は研究後に香料関連企業dsm-firmenichで働いていることを開示していますが、同社は研究や結果の解釈には関与していないと記されています。

まとめ

飲料に合う香りを添えると、ラベルから受け取る商品の好ましさや購入意向は高まりました。ただし、健康的だという期待への効果や、香りと表示が脳内で組み合わされる詳しい仕組みまで、同じように確認されたわけではありません。

この研究は、ラベルが目で読む情報だけでは完結せず、同時に届く香りと一緒に受け取られることを示しています。表示の意図をどう伝えるかを考える際、言葉だけでなく感覚の組み合わせにも目を向ける。その重要性と、さらに検証すべき仕組みを提示した研究です。

参考文献

Schicker, D., Khorisantono, P. A., Rramani Dervishi, Q., Lim, S. X. L., Saruco, E., Pleger, B., Schultz, J., Ohla, K., & Freiherr, J. (2025). Smell the Label: Odors Influence Label Perception and Their Neural Processing. Journal of Neuroscience, 45(14), e1159242024. DOI: 10.1523/JNEUROSCI.1159-24.2024 / 原著全文。原著:Copyright © 2025 the authors, SfN exclusive license。