私たちは、表面的な「東洋」の記号を製品に使いません。
— 夏甦 — ジウジ共同創設者
中国の草木や古典文化を、現代の香水へと移す。Zhiwuzhi(ジウジ、中国名:挚物志)は、そのための香りの表現を探るブランドである。薬瓶を思わせる容器には、自分をいたわる時間を香りでつくりたいという考えが重ねられている。
基本情報
ブランド名:Zhiwuzhi(ジウジ)/挚物志
設立:2022年(NOSE SHOPの表記。年については末尾の補足を参照)
創設者:夏甦、阮暁晶(阮晓晶)
誕生の国:中国
ブランド紹介:NOSE SHOP(日本正規取扱元)
創設者とブランドの成り立ち
ブランド戦略の仕事から、自分たちの香水へ
夏甦と阮暁晶は、十年以上にわたりブランド戦略やマーケティングの相談に応じ、大手企業やさまざまなブランドの仕事をしてきた。他社のブランドを育てる一方、自分たちのブランドを持ちたいという思いがあった。
夏甦にとって、香りは幼い頃から身近なものだった。家族の年長者から、西洋の香水にも中国の香の文化にも影響を受け、自身も香水を使い込み、香りを評する側に立っていた。その個人的な関心と、中国の香水市場に自国のブランドが育つ余地を見いだしたことが、創業へ向かう理由になった。
二人が目指したのは、アジアの人々の嗅覚に寄り添い、日常に取り入れられる香水である。阮暁晶は、中国発という枠に閉じこもることなく、東洋の文化を現代の表現で伝えようとした。
香水を贅沢品ではなく、日常の消費品に戻したいのです。
— 阮暁晶 — ジウジ共同創設者
古典的な香の文化を、今の暮らしの中で使うものへ。その方向を示す素材が、ハーブ、木々、かつて薬用として親しまれた植物である。ブランド名には「魂に大切にされる物」という思いを込め、物を通して感情を伝えることを大切にしている。
マネの調香師との共同制作:花の青さと木の力強さ
香りを形にする仕事には、香料会社マネ(MANE)の調香師たちが加わった。マキシム・エクスラー(Maxime Exler)が手がけた「梵天境(Fantianjing/Abode of Brahma)」では、花とグリーンノート(葉や草を思わせる香り)の組み合わせが制作の核になる。
梵天境では、花の素材に、力強く神秘的なグリーンノートを組み合わせました。
— マキシム・エクスラー — 梵天境の制作について、2024年
バジルやルバーブの葉に、ジャスミン・サンバックやオレンジの花を重ねる構成である。花だけを取り出して描くのではなく、葉の青さを強く残す。草木への関心が、花とグリーンの対比という具体的な組み立てに表れている。
同じくマネのウーゴ・シャロン(Ugo Charron)は、「不忘川(Buwangchuan/Beyond Lethe)」を手がけた。
ジウジの不忘川は、木々の爆発です。
— ウーゴ・シャロン — 不忘川の制作について、2024年
シダーウッドやパチョリ、ベチバーを軸に、セージやニガヨモギ(ワームウッド)、香を焚いたようなインセンスを組み合わせている。梵天境の花と葉の対比に対し、不忘川では木の存在感を前へ出す。草や木を使うという共通点があっても、それを一律に穏やかな香りへまとめてはいないのである。
店頭での体験とホームフレグランスへの展開
ジウジの出発点は五つの香水だった。2024年末のブランドのポップアップを経て、2025年3月には最初の店頭カウンターを開く。二人は、香りをその場で試す体験を大切にしながら、ホームフレグランスや香りのあるケア製品にも活動を広げている。
ブランドのこだわり
植物の表現:クチナシを青い蕾として描く
夏甦は、クチナシに青々とした、まだ開ききらない蕾の姿を求めた。一方、キンモクセイは、2026年9月の時点でも、自分が納得する表現に届かず発売していなかった。身近な花を題材にしても、その名前に似合う香りをすぐに商品にするのではない。どの姿を香りに残すかが、制作の判断になる。
中国文化を香りにする:竹林の七賢と雨上がりの風景
「ジェード バンブー ソナタ(Jade Bamboo Sonata/翠竹雅鸣)」は、世俗から距離を置いて語り合った「竹林の七賢」を題材にする。調香師はダイアナ・ジャイ(Diana Zhai)。文化の物語を、雨上がりの竹林という風景に重ねた作品である。
ミントで清涼感を、スズランやヒヤシンスで花の気配を、松葉で青さを描き、パチョリとモス(苔の香り)で湿った地面へつなぐ。竹の名を掲げながら、周囲の空気、花、葉、土を組み合わせて林を表す構成だ。人物の物語と、それを包む自然を一つの香りの中で結びつけている。
薬瓶に着想を得たボトルデザイン
薬瓶型のボトルは、自分をいたわるための「魂の解毒剤」という比喩を形にしたものだ。手に収まる輪郭と、細やかなミストを放つノズルにも気を配る。香りを身にまとう小さな動作まで、ものづくりの一部としているのである。
補足
設立年は、日本正規取扱元のNOSE SHOPが2022年と記している。一方、阮暁晶は2023年を創立初年として振り返っており、年の表記に相違がある。
参考文献
- 挚物志夏甦、阮晓晶:从20家直营店到巴黎快闪,一个东方香氛品牌的生长路径 — 赢商网/品牌数读、2026年9月15日、創業者二人の直接取材 — https://m.winshang.com/news742139.html
- Zhiwuzhi|ジウジ — NOSE SHOP、日本正規取扱元によるブランド紹介 — https://noseshop.jp/collections/zhiwuzhi
- A new creation crafted for the Chinese brand Zhiwuzhi — マキシム・エクスラー本人の制作投稿、2024年8月2日 — https://www.linkedin.com/posts/maxime-exler-55119478_a-new-creation-crafted-for-the-chinese-brand-activity-7225025178903150592-vqYR
- Abode of Brahma 梵天境 — Bloom Perfumery、作品名と調香師 — https://bloomperfume.com/products/abode-of-brahma
- BUWANGCHUAN from the brand ZhiWuZhi — ウーゴ・シャロン本人の制作投稿、2024年7月19日 — https://www.linkedin.com/posts/ugocharron_new-launch-china-activity-7220047926847287296-a4wE
- Beyond Lethe 不忘川 — Bloom Perfumery、作品名と調香師 — https://bloomperfume.com/products/beyond-lethe
- ジェード バンブー ソナタ|翠緑竹の奏鳴曲 — NOSE SHOP、題材・香りの構成・調香師・商品画像 — https://noseshop.jp/products/zwz-pf-js
- U NOSE SHOP 心斎橋、取り扱いブランド紹介 — NOSE SHOP、薬瓶型ボトルと噴霧の設計 — https://noseshop.jp/blogs/blog/u-noseshop-shinsaibashi-lineup


