To Define(トゥ ディファイン)|感情を、香りと形へ。

青灰色とシャンパン色の紙の図形を背景にしたTo Defineのワンス50mLボトル

多様なスタイルで、土地の文化の核を表現しようとしてきた。

シュー・ビンスー

To Define(トゥ ディファイン/寓义)は、中国・寧波を拠点に、感情や記憶を香りと視覚表現へつなぐブランドである。共同創設者でアートディレクターのシュー・ビンスーは、香りの物語だけでなく、それを包む文字、瓶、紙の手触りまで考える。短い詩のような名前と、大胆な図形。その間を結ぶのは、使い手の気持ちをどう表すかという問いだ。

基本情報

  • ブランド名:To Define(トゥ ディファイン/寓义)
  • 拠点:中国・浙江省寧波
  • 共同創設者・アートディレクター:徐宾粟(Simin Xu/シュー・ビンスー)
  • 主な分野:香水、ホームフレグランス
  • 日本公式取扱:NOSE SHOP

共同創設者とブランドの成り立ち

家庭用の香りから、身にまとう香水へ

ブランドの出発点には、家庭用の香りの商いがある。ブランド責任者の耿荧は、住宅市場が拡大していた時期にホームフレグランスの可能性を見いだし、試すような気持ちで参入したと振り返る。最初は電子商取引で試用サイズを届け、ホテルの香りとの親しみやすい接点から顧客を増やした。その後、国際的な調香師を迎え、肌にまとう香水へと領域を広げている。

使う人から考える、デザイナーの仕事

共同創設者のシュー・ビンスーは、大学でデザインを学び、2022年には実務経験を8年重ねていた。制作では、使い手の生活、読書の習慣、色の好みに目を向けてから表現を考え、予算や素材、工程を検討する。目指すのは、形の面白さだけで記憶に残る製品ではない。

使い手に、デザインと製品をはっきり理解してもらうこと。

シュー・ビンスー

平面のデザインに加え、製品のアイデアやブランドの企画にも携わり、2023年にはType Directors ClubのAscendersに選ばれた。香りを作る調香師とは異なる立場から、物語を、手に取り読める形にまとめる役割を担っている。

感情の観察が、シリーズの出発点になる

香型を先に決めるのではなく、人が自分とどう付き合い、他者と関係を築き、不安を抱えて暮らしているかを観察して題材を選ぶ。自己理解の「I KNOW ME」、親密な関係の「Love Actually」、日々の小さな感情を扱う「The Hours」は、その問いの違いから生まれたシリーズだ。

2023年に始めた都市巡回型の「城市游牧计划」は、2025年に「气味回响计划」へ発展した。香りの物語を空間でも体験できるようにし、製品を売る場を、感情を共有する場へ広げてきた。

ブランドのこだわり

香り、物語、形に同じ気質を通す

デザインと香り、製品と物語は、同じ気質でなければならない。

シュー・ビンスー

2021年に刷新したフレグランススプレーでは、三角形と円で噴霧の瞬間を図形化し、箱に製品の種類を大きく示した。瓶の数字と香りの名前は別の面へ置き、手で返すと新しい情報に出会う。物語を飾りとして添えるだけでなく、読む順序や扱う動作にも組み込む方法である。

I KNOW ME:読む角度と開く順序を設計する

「I KNOW ME」の包装では、中国語と英語の物語名をシルクスクリーンで瓶の周囲に印刷する。見る角度によって読める言葉が変わり、光の下では文字の影が現れる。自己を探るという題材を、瓶を眺める体験へ広げた設計だ。

外箱は開く段階ごとに形が現れる構造をとり、輸送包装やサンプルにも同じ要素と印刷基準を通す。香りの物語を、瓶だけで完結させない。アートディレクションを担うシューに加え、楊暁天らが関わる共同制作として形にしている。

OnceとDolce Far Niente:愛の中の、異なる時間

Once(ワンス)の中国語名は「少年游」。南宋の詞人・劉過の詞を手がかりに、過ぎた若さの中にも残る気概を題材にする。ベルガモットとシトロン、ジンとホワイトティー、トンカマメという構成は、その物語を、柑橘の明るさと温かさの組み合わせへつないでいる。文学の言葉が、香りを作る具体的な題材になる一例だ。

Dolce Far Niente(ドルチェ ファール ニエンテ)が扱うのは、誰かと何もせずに過ごす時間である。マテとピーチに、イリスやオスマンサスを重ね、シダーウッド、ガルバナム、ムスクへつなぐ。若い日の心を呼び戻すOnceに対し、こちらは、何も起きない共有のひとときに意味を見いだす。同じシリーズでも、感情のどの場面を取り出すかが異なる。

物語を届けるために、包装を見直し続ける

シューは、市場の反応に応じて製品とシリーズを調整し、包装の構造も改善すると語る。その課題は、見栄えの工夫だけではない。

不要な資材のコストを減らし、輸送中に製品が破損するリスクを減らす。

シュー・ビンスー

題材を形にする仕事は、家庭用の香りにも続く。コーヒーを扱う「UTOPIA」では、ハンドドリップの漏斗とカップを組み合わせた容器、暗い木の台座、銀色の仕上げ、可変的な字形を使った。香りの着想を、持つ物や読む文字へ展開する。その一方で、届けるための材料と強度も考えるところに、このブランドのデザインの幅がある。

参考文献