「アフリカは何世紀にもわたって香水業界の鍵を握ってきた。しかし、私たちのような存在(調香師・創設者)は多くはない。私たちは大陸の内外の消費者に響く、本当に特別なものを創り出そうとしている。」
── エチエンヌ・アダッド(共同創設者)
基本情報
設立年: 2024年(セネガル・ダカール)
創設者: エチエンヌ・アダッド(Etienne Haddad)、バレリア・コジェヴニコフ(Valeria Kozhevnikov)
公式サイト: https://reserve1934.com
創設者・ブランドの成り立ち
一族の起点──1934年、セネガルへ
レゼルブ アン アフリクの物語は、ブランド名に刻まれた年号、1934年から始まる。
その年、エチエンヌ・アダッドの祖父はレヴァント(現在の地中海東岸地域、レバノン・シリア周辺を指す地名)からセネガル西部のシヌ・サルーム地方へと移住した。新天地を求めての旅だったという。奇しくも同じ1934年、一族が拠点とした土地の近くに位置する森が保護区として指定された。このシヌ・サルーム・デルタは後にユネスコ世界遺産(文化遺産)にも登録される豊かな生態系の地で、マングローブ、砂丘、サバンナが複雑に交わり、400種を超える鳥類や多様な哺乳類が暮らす場所であった。
一族はダカールに根を張り、以来3世代にわたってこの森の保全活動に関わり続けることになる。彼らが守ろうとした自然は、単なる風景ではなく、家族のアイデンティティそのものだったとも言えるだろう。
エチエンヌの「目覚め」
3世代にわたり保全活動に関わってきたこの家族に育ったのが、ブランドの共同創設者エチエンヌ・アダッドである。
ダカールで育ち、幼少期から自然の香りに囲まれていた彼が転機を迎えたのは、ある朝ジャングルを歩いたときのことだ。太陽が昇るとともに、木々が放つ青々とした芳香がゆっくりと立ち上る瞬間を体験し、「日の出と共に香りが起き上がる」という感覚に強く心を揺さぶられたという。その体験は彼に、「この大地が生み出す香りを、ボトルの中に閉じ込めたい」という確信をもたらした。
パートナーと共に、ブランド誕生へ
エチエンヌはその思いを、パートナーであるバレリア・コジェヴニコフと共有した。バレリアの詳細な経歴は現時点では公開情報の中に見当たらないが、ふたりは志を同じくし、2024年にダカールからブランドを立ち上げた。
ブランド名「レゼルブ アン アフリク(Réserve en Afrique)」は、フランス語で「アフリカの保護区(自然保護区)」を意味する。一族が長年守り続けてきたあの森、そして広大なアフリカの自然そのものへのオマージュだ。名前に「1934」を冠するのは、すべての始まりとなった祖父の旅を、ブランドの礎として永遠に刻んでおくためである。
世界の香水業界への発信
ブランドが外部に向けて本格的に動き出したのも早い。2025年2月にはイタリア・ミラノで開催された世界最大級の香水見本市、エサンス(ESXENCE)2025に出展し、新作2作品を発表した。フレグランス開発の初期段階から、DSM-フィルメニッヒ(dsm-firmenich)とも協働するフレグランスコンサルタントのイザベル・ファン・インゲン(Isabelle van Ingen)が香りの開発協力として関わっていたことも明らかになっており、創業直後にして世界水準の調香師ネットワークと連携していることが窺える。2025年10月には東京・伊勢丹メンズ館で開催された「サロン ド パルファン 2025」にも先行出展し、同年12月5日にノーズショップ(NOSE SHOP、高輪・麻布台・オンライン)を通じて日本市場に本格上陸した。
ブランドのこだわり
香りづくりの哲学──アフリカの素材で描く大陸の物語
レゼルブ アン アフリクが最も強くこだわるのは、「トップ、ボディ(ミドル)、ベースに至るまで、アフリカ産原料をできる限り活かす」という一点である。マダガスカル産バニラ、ソマリア産オポポナックス(※樹脂系香料の一種)、ナイジェリア産ジンジャー、モロッコ産ローズ、南アフリカ産タンジェリン、コモロ産イランイランなど、アフリカ大陸の多様な生態系が育む原料を厳選し、各フレグランスはアフリカの一場面──夜明けのサバンナ、深夜の焚き火、砂漠のオアシス──を立体的に再現している。
原料の背後にある産地のコミュニティへの敬意も明確に打ち出している。原料の調達においては、透明性、社会的インパクトの測定、ポジティブな貢献に取り組むパートナーのみと協働するという方針を掲げ、単に素材を使う側でなく、その土地の人々の営みと連帯する姿勢を示している。
サステナビリティへの真摯な姿勢
香りの哲学と切り離せないのが、サステナビリティへの取り組みである。
- アルコールベース: 天然アルコールはビートルート由来のものを使用
- ヴィーガン&クルエルティフリー: ペタ(PETA)のヴィーガン&クルエルティフリーのリストに掲載。すべての製品が動物性成分・動物実験フリー
- ジェンダーレス: すべてのフレグランスは男女の別なく纏える設計
- 成分管理: パラベン、フタル酸エステル、シリコーン、鉱物油、石油由来成分、パラフィン、遺伝子組み換え成分(GMO)、ラウリル硫酸ナトリウム/ラウレス硫酸ナトリウム(SLS/SLES)を使用せず
- 規制準拠: 欧州連合(EU)の化粧品規制および国際フレグランス協会(IFRA)の基準に準拠するとしている
- 保全活動: ブランド公式サイトによれば、利益の5%を、アフリカ全土の生物多様性保護団体・森林保全プロジェクトを含む非営利団体へ寄付
プロダクトの広がり──香水から手仕事の品へ
レゼルブ アン アフリクはフレグランスにとどまらない。ソイ(大豆)& ココナッツワックスを使った手注ぎのキャンドルや、手描きのアフリカシーンで装飾されたアルチザン・ソープギフトセットも展開しており、ブランドの世界観を日常のあらゆる場面に持ち込める。ソープパッケージの「手描き」という要素は、アフリカの工芸的な伝統への敬意でもある。
なお、ボトルデザインの詳細なコンセプトや素材については、現時点では公式サイト等での説明が確認できなかった。
香水ラインナップ
アフリク エクストラオーディネール コレクション
ブランドの原点となるのが、アフリク エクストラオーディネール コレクション(Afrique Extraordinaire Collection)である。「アフリカ大陸の多様な風景や生態系のなかで出会う、唯一無二の自然体験」をインスピレーション源とするシリーズで、各フレグランスはひとつの「アフリカの場面」を主役に据えた独立した物語として構成されている。
ブランド創業時は4作品だったが、2025年のエサンス出展時に2作品が追加され、同コレクションは計6作品へと広がった。
オーブ ルミヌーズ(Aube Lumineuse)──「輝きの夜明け」
南アフリカのタンジェリンとブラッドオレンジがトップノートを担い、モロッコのオレンジフラワーとナイジェリアのジンジャーが清冽な光のような香りを描く。サバンナの夜明け、アカシアの木陰に集まる動物たちが目覚める一瞬をイメージした、フレッシュシトラス系の一本。あるレビューは「澄み切ったシャツのような清潔感」と表現し、後半のシダーウッドが自然の土台をしっかりと支えると評している。
アフリク アン フルール(Afrique en Fleurs)──「アフリカの花々」
オレンジ(南アフリカ)、ジンジャー(ナイジェリア)、ローズ(モロッコ)、アイリス(コートジボワール)、カモミール(エジプト)、バニラ(マダガスカル)、サンダルウッド(ソマリア)という7種のアフリカ産原料が重なり合う。熱風と砂、そして荒地に力強く咲く花の対比を香りで描いた、フローラルウッディ系の作品。
オー レジェンデー(Eau Légendaire)──「伝説の水」
モロッコ産のレンティスカス(マスティックの木脂)とソマリア産のオリバナム(乳香)が霧のようなオープニングを作り、ネロリ(モロッコ)とローズ(モロッコ)のフローラルが中心を担う。「密林の霧の中から湧き出る、伝説に値する水源」というコンセプト通り、清冽さとやや神秘的な奥行きを合わせ持つアロマティック系。
フー サクレ(Feu Sacré)──「聖なる炎」
クローブ(マダガスカル)とピンクペッパー(南アフリカ)が火の粉のように弾けるオープニングから、バニラ(マダガスカル)とミルラ(エチオピア)が温かいハートへと移行し、オポポナックス(ソマリア)とサンダルウッド(ソマリア)の深みあるベースへ落ち着く。「漆黒の闇の中で燃える焚き火」をテーマにしたスパイシーウッディ系で、初期4作品のなかで最も官能的かつメディテーティブな一本と言える。
ヴァニーユ マフォンジャ(Vanille Mafonja)──2025年作
「マフォンジャ」を名に冠し、満ち潮が引いたときのみ姿を現す、マダガスカルの秘められた入り江をイメージしている。フルール・ドゥ・セル(塩の花)から始まり、シナモン・ピンクペッパー(モーリシャス)・ナツメグが温もりを重ね、イランイラン(コモロ)のクリーミーな花が咲く。ミルラ・オリバナム(ソマリア)とダークアンバーが深みを与えるバニラ主役のオリエンタル系。
ルージュ カルカデ(Rouge Karkade)──2025年作
「カルカデ」とはハイビスカスティーのこと。サハラ砂漠に夕陽が沈む頃、ヤシの木立に囲まれたオアシスで振る舞われるルビー色の飲み物からインスピレーションを得た。カルカデ(ノースアフリカ産)とザクロジャム、ブシュ(南アフリカ産のハーブ)がタルトな開幕を作り、ハイビスカス・イランイラン・バニラの甘い花芯へ。シダーウッドアトラス(モロッコ)とウードスモークが砂漠の夜の神秘で締める。
ちなみに…
レゼルブ アン アフリクの「1934」という数字は、ブランドの正式名称に組み込まれている。単なるヴィンテージ感の演出ではなく、「祖父がセネガルに渡り、保護区の森と出会った年」という具体的な歴史を指す点が、ブランドのオーセンティシティを支えている。
ブランドが拠点とするシヌ・サルーム・デルタは、2011年にユネスコ世界文化遺産に登録されており、マングローブ、砂丘、海洋環境、乾燥林が複合した「世界でも最も美しいデルタのひとつ」と称されている。ブランドの物語では、祖父が暮らした土地の近くの森が1934年に保護区となったとされ、その歴史は、ブランド名の重みをさらに増させる。
また、エサンス 2025の出展作品リストに「レゼルブ アン アフリクのヴァニーユ マフォンジャ(Reserve en Afrique Vanille Mafonja)」と並んで、「ボワ ドリヴィエ(Bois d’Olivier)」という名も原稿の参考資料に挙げられていた。ただし、後者を同ブランドの作品と確認できる公式情報は見当たらず、同コレクションの作品としては扱えない。
参考文献
- The Founders Pushing African Fragrance Into the Mainstream | BoF
- Die Gründer drängen afrikanische Düfte in den Mainstream – Germanic Nachrichten
- アフリカの雄大なる自然を香りに閉じ込めた「Reserve en Afrique(レゼルブ アン アフリク)」が12/5(金)日本へ本格上陸!大自然を描写するように生み出された4種の香水を展開
- アフリカの雄大なる自然を香りに閉じ込めた「Reserve en Afrique(レゼルブ アン アフリク)」が12/5(金)日本へ本格上陸!大自然を描写するように生み出された4種の香水を展開
- Story & Impact
- Jo's Scent Notes: Réserve en Afrique Aube Lumineuse
- Discover the magnificent attractions of the Sine Saloum
- Saloum Delta – World Heritage Memory Net
- RÉSERVE EN AFRIQUE – Collective Africa
- セネガル発アフリカの自然を纏う香水「Reserve en Afrique」 …
- Isabelle van Ingen's Post – LinkedIn
- 250 NEW RELEASES • ESXENCE 2025 – ScentAdvice
- Réserve en Afrique 1934 Aube Lumineuse Eau de Parfum
- Vanille Mafonja and Rouge Karkade are coming soon, expanding …
- Réserve en Afrique 1934 Afrique en Fleurs Eau de Parfum
- Réserve en Afrique 1934 Eau Légendaire Eau de Parfum
- Feu Sacre | Reserve en Afrique 1934 – Bloom Perfumery
- VANILLE MAFONJA (2025) • RESERVE EN AFRIQUE – ScentAdvice
- ROUGE KARKADE (2025) • RESERVE EN AFRIQUE – ScentAdvice
- Réserve en Afrique 1934 – Rouge Karkade – PAROLE Passage
- Reserve en Afrique Discovery Gift Set – Indiehouse Fragrances
- レゼルブ アン アフリク公式「ヴァニーユ マフォンジャ」
- レゼルブ アン アフリク公式「香水コレクション」
- ユネスコ「サルーム・デルタ」


