足の甲と足裏、においのもとは同じ?

足の甲と足裏、においのもとは同じ? 香りの科学

足の甲と足裏は、同じ靴下の中にあっても、菌の暮らし方やにおい成分が違うようです。足の複数の場所を調べた研究では、足裏のほうが細菌数が多く、ブドウ球菌属が大きな割合を占めていました。足臭に関わるイソ吉草酸も、調べた10人の足裏では8人から検出され、甲では検出されませんでした。

この研究は、足の菌を場所ごとに数えること、菌の構成を調べること、皮膚から出る揮発成分を測ることを組み合わせています。足を一つの場所として扱うのではなく、においが生まれる分布を調べた研究です。

菌の数、種類、揮発成分を分けて測る

最初の調査は男女各8人、計16人が対象でした。洗い方をそろえてから24時間、足を洗わず、足用製品も使わず、支給された靴下を履きました。その後、左右それぞれの足から、甲の4か所、足裏の4か所を採取しました。

採取液を培養し、ブドウ球菌、好気性コリネバクテリウム、グラム陽性嫌気性球菌を数えました。培養では、用意した条件で育つ菌を捉えます。そこで男女各5人、計10人には、甲と足裏の各1か所から細菌のDNAを取り、16S rRNA遺伝子の配列から菌の構成を調べる解析も行いました。

揮発成分の測定は男性6人、女性4人の10人です。こちらは洗浄後48時間、足を洗わず、途中で新しい支給靴下へ交換しました。甲と足裏に、成分を取り込むシリコーン系の薄いパッチを30分間置き、回収した成分を加熱してGC–MSで分析しています。菌の測定とは採取手順も時間も異なり、人数を足し合わせて一つの調査集団とみなすことはできません。

足裏は菌が多く、甲は構成が多様だった

培養で数えた三つの菌群はいずれも、甲より足裏で多くなっていました。足裏の中でも、前方の指の付け根付近はかかと側より多い傾向がありましたが、嫌気性球菌では一部の地点間に有意差がありませんでした。最も多く検出されたのはブドウ球菌で、コリネバクテリウム、嫌気性球菌が続きました。

DNA解析でも違いは明瞭でした。足裏の採取部位ではブドウ球菌属が平均98.6%を占め、甲では26.9%でした。甲にはコリネバクテリウム属12.1%など、より多様な菌が見られました。これは解析した配列から求めた菌の相対構成で、98.6%がにおいへの寄与率という意味ではありません。

菌の構成全体は、甲と足裏で異なっていましたが、男女差は有意ではありませんでした。培養菌数も多くの地点では男女差がなく、例外として足裏前方の2地点の嫌気性球菌は女性で多くなっていました。大きな違いは、今回の集団では性別より採取した場所に表れていました。

イソ吉草酸は足裏で検出され、ほかの酸も多かった

揮発成分では、酢酸、酪酸、吉草酸が甲より足裏で多く検出されました。特に目立ったのが、チーズ様・酸っぱい足臭に関わるとされるイソ吉草酸です。足裏では10人中8人から検出され、甲では全員が検出されない結果でした。

「検出されない」は、用いた採取・分析方法で測定できる量に達しなかったという意味です。甲が完全に無臭であることを示すものではありません。また、この研究は成分量を測っており、評価者が足の各部位を嗅いで強さや不快さを採点した試験ではありません。

先行研究では、足にいるブドウ球菌がアミノ酸のロイシンを利用し、イソ吉草酸を作ることが示されています。今回、ブドウ球菌が多い足裏でその成分も検出されたことから、著者らは菌の分布が足臭成分の分布に関わると解釈しました。

足裏の環境と、菌の働きが次の問いになる

足裏と甲では、角質の厚さ、皮膚の脂質、かかる圧力などが異なります。著者らは、こうした環境の違いが菌の住み分けに関わる可能性を挙げています。例えば、脂質を必要とする菌にとって、足裏の脂質の少なさが影響するかもしれない、という説明です。どの要因が決め手かは今回の比較だけでは分かりません。

また、角質を分解する菌として足臭研究で注目されてきたキトコッカス属などは、今回の足裏では少数でした。著者らは、特定の角質分解菌が多くいなくても、においに関わる酸が生じうる点を指摘しています。足臭を、一種類の菌だけの問題として説明するのは難しそうです。

一方、足裏のブドウ球菌の割合がここまで高かった背景には、洗浄や靴下の条件を厳しくそろえた影響があるかもしれません。菌と揮発成分を同じ皮膚部位から同時に採ることもできておらず、どの菌がどれだけ成分を作ったかを個人ごとに直接結びつける解析は、今後の課題として挙げられています。

指の間は、面積当たりの菌数をそろえて採る手法がなかったため、今回測定していません。消臭製品や洗い方、角質ケアを比べた研究でもないので、結果から特定の対策の効果を判断することはできません。

まとめ

足裏は甲より培養できる細菌が多く、菌の構成はブドウ球菌属に偏っていました。甲は菌の構成がより多様でした。揮発成分も足裏で酢酸・酪酸・吉草酸が多く、イソ吉草酸は足裏の8人から検出され、甲では検出されませんでした。

足のにおいを理解するには、足全体の菌数だけでなく、どの場所にどの菌がいて、どんな成分が出てくるかを合わせて見ることが役立ちます。菌と成分の分布を対応づけ、より直接的にその関係を確かめる道筋を示した研究です。

研究の所属・利益相反:研究当時、著者12人のうち9人はUnileverに所属していました。論文は利益相反なしと申告しています。独立した研究資金の開示欄は確認できませんでした。

参考文献

Stevens D, Cornmell R, Taylor D, et al. Spatial variations in the microbial community structure and diversity of the human foot is associated with the production of odorous volatiles. FEMS Microbiology Ecology. 2015;91(1):1–11. doi:10.1093/femsec/fiu018(オンライン公開2014年)