Flora Notis JILL STUART(フローラノーティス ジルスチュアート)— 花の香りと触感から、シグネチャー香水へ

フローラノーティスのアイコニックブルームを描いたブランド紹介画像。花の雫を思わせる瓶と、ローズ、マグノリアを配した生成ビジュアル。 ブランド創業者

シルキーでラグジュアリーな質感も大切にしました。

ガブリエラ・チェラリウ(アイコニックブルームの調香師)

香水の質感を、花びらが肌を包むように考える。Flora Notis JILL STUART(フローラノーティス ジルスチュアート)が2026年に発売したアイコニックブルームには、そんな調香師の選択が込められている。

その発想は、2018年のブランド誕生から続く、香りと感触を一緒に考えるものづくりにつながる。花を思わせる香りだけでなく、オイルの軽さやクリームのしっとりした触感も選べるようにする。フローラノーティスは、ジル・スチュアートが愛する花々の世界を、日々の暮らしに迎えるためのブランドである。

基本情報

  • ブランド名:Flora Notis JILL STUART(フローラノーティス ジルスチュアート)
  • 誕生:2018年8月31日、日本
  • 創設・展開企業:コーセー
  • 世界観の基礎となる人物:ジル・スチュアート(ファッションデザイナー)
  • 名前に込めた意味:「花の本質」
  • 公式サイト:Flora Notis JILL STUART

創設者とブランドの成り立ち

ジルのファッションから、ビューティへの展開

ジル・スチュアート(Jill Stuart)は、レディースウェアメーカーを経営する両親のもと、ニューヨークで育った。15歳で発表したジュエリーとバッグのコレクションが、百貨店ブルーミングデールズの目に留まる。本格的にファッションデザインを学び、27歳で自身のブランドを設立。ソーホーに旗艦店を開き、1993年にニューヨークコレクションでデビューした。

2005年にはビューティの展開が始まる。コーセーは同年のライセンス契約以降、日本で化粧品の開発・製造を手がけ、2009年にはグローバルでの化粧品商標権を取得した。ジルの服や装身具から広がった世界を、化粧品として形にする事業の歩みである。

2018年、コーセーが花の暮らしを提案する

ビューティのデビューから13年後、コーセーは新しい生活提案ブランドを立ち上げた。フローラノーティスである。高付加価値のボディケアやフレグランスへの関心が高まる中、メイクアップを中心とする既存ブランドから、花に包まれた暮らしへと提案を広げた。

中心に置いたのは、ジルが愛する花々だった。2018年8月31日、花を六つのブーケとして表現した香りとともに、オードパルファンやボディケアなどを発売。新宿のルミネエストに第一号店を開いた。ジルの花への愛情を世界観の基礎に、コーセーが製品と生活の提案へ展開したブランドである。

誕生時には、英語の美容媒体A Touch of Blusherも、香水とボディケアを軸にした生活提案ブランドとして紹介した。既存のジルスチュアート ビューティと並べて販売するのではなく、独自の店舗とオンラインショップで始める点にも触れている。花の香りを主役に据えた、独立した売り場の構想だった。

2020年、花を届ける空間とヘアケアへ

花のある暮らしという発想は、製品の外にも広がった。2020年には札幌ステラプレイスに、「Duo Flower」をコンセプトとするショップを開き、ドライフラワーを展開した。香りで花を迎えることと、実際の花を飾ることを、一つの空間に重ねたのである。

同年9月4日には、リペアヘアオイルを発売した。香りごとに触感を変え、軽い仕上がりからコクのある仕上がりまで四つのタイプを用意。髪に纏う香りにも、見た目や手触りから選べる道筋をつくった。

ご自身のお好きな香りやテクスチャー、仕上がりからお選びいただけます。

小池田杏子(2023年当時のフローラノーティスPR担当)

2023年にヘアオイルの選び方をこう説明したPR担当の小池田は、香りだけでなく、髪に求める仕上がりも入口にしていた。花の香水を肌、髪、部屋へと広げる中で、それぞれの使う場所に合った感覚を考えてきたのである。

2026年、シグネチャー香水とブランド像を見直す

2026年1月9日には、ブランドの想いを体現する初のシグネチャーフレグランス、アイコニックブルーム オードパルファンを発売した。香水そのものは2018年から展開しており、新作はブランドを象徴する一作という位置づけである。

この時期、フレグランスブランドとしての存在感を高めるため、利用者への伝わり方も見直した。担当した小池田杏子は、2007年にコーセーへ入社して営業に従事し、PR会社への転職を経て、2019年からフローラノーティスのPRを担った。2026年7月にはマーケティングプランナーとなる。香りをつくる調香師とは異なる立場から、人々の暮らしとブランドをつなぐ仕事である。

CLASSY.の読者へのアンケートと、9人の座談会では、香りの取り入れ方やブランド像を聞いた。ジルスチュアートの名前から、自分には若すぎると感じていた人も、実際に試すと香りを好意的に受け止めた。小池田は、名前に伴う先入観と、体験した印象の間にある違いを、今後の表現や接点づくりに生かそうとした。

上品な華やかさがありつつも、自立したカッコよさもある。

小池田杏子

小池田がCLASSY.に感じ、ブランド像とも重なると語ったのは、この二つの要素だった。花の可憐さを残しながら、大人の日常にも届く香りとして伝える。その姿を、利用者の具体的な声から確かめる転換であった。

ブランドのこだわり

花の香りごとに、触感を変える

フローラノーティスの特徴は、香りの違いを手触りにも展開することにある。発売時から、ボディオイル、ボディミルク、ハンドクリームに、さらりとした軽さからしっとりしたリッチな感触まで違いを持たせていた。

現在のボディケアやハンドケアでも、フローラルグリーンは軽い使用感、リッチカメリアは最もしっとりした使用感として設計されている。香りのイメージだけでなく、季節や肌の状態、その日に触れたい感触も選択に関わる。花ごとに、香りと肌での体験を一緒に考える方法である。

同じ花の世界を、オイルでの手入れ、ミルクの感触、香水の香り立ちへと重ねていくことも提案している。異なる使い方を通じて、同じ花の印象を暮らしへ取り込む展開である。

アイコニックブルームで、繊細さと力強さを両立

アイコニックブルームの調香を担ったのは、ルーマニア出身でニューヨークを拠点とするガブリエラ・チェラリウ(Gabriela Chelariu)である。彼女はピンクローズを中心に、花が咲く瞬間のフレッシュさと繊細さを捉えながら、強く、長く心に残る香りを目指した。

そのために重視したのが、柔らかさと存在感の釣り合いである。ローズに、みずみずしいマグノリアやミュゲを重ねたフレッシュフローラルとして構成し、花びらが肌を包むようなシルキーな質感も求めた。生花の軽やかさを描くことと、香水として余韻を残すことを、同時に考えた一作である。

主要な素材には、トルコ産ダマスクローズのアブソリュートを選んだ。アブソリュートは、溶剤を使った抽出などを経て得られる濃縮された香料である。花の名を並べるだけでなく、ローズの深みと温もりを香りの核に据えている。

自然由来のアルコールや香料成分を配合し、アイコニックブルームは、水を含むISO 16128に基づく自然由来指数96%として設計されている。これは香料だけの比率ではなく、製品全体の由来を示す数値である。

着想には、花を見つめ、触れ、香りに意識を向ける「フラワーメディテーション」がある。ブランドはこれを、五感を通じて自分の内面と向き合う時間として説明している。暮らしの中で花に注意を向ける所作を、一つの香水へ集めた発想である。

アートコレクションから着想した、花の雫の瓶

アイコニックブルームの瓶は、ジルが愛するアートコレクションから着想し、花の雫をイメージしてつくられた。丸みのあるガラスの肩には、ロゴを刻んだゴールドプレートを配している。

キャップは、細かな縦の溝を刻むローレット加工のゴールドと、重なる花びらを思わせるカッティングで構成した。花の柔らかい輪郭に、金属やカットの明確な線を合わせる造形である。

ジルの花への愛情を、そのまま花形の飾りにするだけでなく、雫の輪郭、素材の光、香りの質感へと置き換える。花を暮らしに取り入れるという2018年の提案が、この象徴的な瓶にもつながっている。

参考文献