ECOYA(エコヤ)|ソイワックスのキャンドルから始まった、暮らしの香りづくり

ECOYA Sandalwood & Amberキャンドルと箱を、明るい暮らしのイメージに配置

私たちの製品は絶えず進化していて、それが面白さや刺激を生んでいます。

クレア・バーンズ

ECOYA(エコヤ)の出発点は、大豆由来のソイワックスを使うキャンドルだった。オーストラリアで始まり、現在はニュージーランドでデザインと製造を行うこのブランドは、部屋に置く香りから、身体、台所、車、洗濯やリネンへと仕事を広げてきた。

その歩みを支えたのは、初期のキャンドルづくりを始めた共同創業者、消費者向けブランドを育ててきた経営陣、販売の現場を知るクレア・バーンズ、そして調香師たちである。香りを一つ増やすだけでなく、その香りをどこへ、どのように届けるか。エコヤの歴史には、香りを暮らしの中へ移していく、いくつもの選択がある。

基本情報

  • 創業活動の起点:2003年。事業会社は2004年4月に発足
  • 共同創業者:Shane McGrath(シェーン・マクグラス)、Kurt Schweighoffer(カート・シュワイグホファー)
  • 誕生の地:オーストラリア・シドニーのボタニー湾沿い
  • 現在のデザイン・製造拠点:ニュージーランド
  • 主な分野:キャンドル、ディフューザー、ボディケア、キッチン、ランドリー
  • 公式サイト:ECOYA New Zealand / 日本公式サイト

創設者とブランドの成り立ち

2003年の創業活動と、ボタニー湾のキャンドルづくり

シェーン・マクグラスが香りの仕事に入ったのは、エコヤの共同創業者となった2003年のことだった。ともに創業したのが、カート・シュワイグホファーである。事業会社が発足したのは翌2004年4月。場所はシドニーのボタニー湾沿いだった。

最初の柱となったのは、天然のソイワックスを使う香り付きキャンドルである。ECOYAという名前も、着想を与える環境を示す「ECO」と、キャンドルの基礎となった大豆ワックスの「SOYA」から生まれた。素材の選択が、そのままブランド名の一部になっている。

マクグラスは、後に香料会社ルクサロマを共同で立ち上げる。エコヤで始まった香りとの仕事は、彼にとって、その後も続く仕事の入口となった。

42 Below出身の経営陣が加わる

その後の拡大に加わったクレイグ・シュワイグホファーは、ウォッカブランド「42 Below」のオーストラリア事業を率いていた人物である。エコヤに出資したのは2006年。2008年2月には、42 Below出身者たちの投資会社ザ・ビジネス・ベーカリーが株式を取得し、クレイグがCEOとなった。

クレイグが担ったのは、販売網や海外市場を開く段階の経営だった。香りをつくる事業に、消費者向けブランドの流通や海外展開を経験した人々が加わったのである。

2010年には、ニュージーランドでの株式公開に向けて海外市場の拡大計画を示している。当時すでに、キャンドルだけでなく、ディフューザーやハンドウォッシュ、ローション、石けんも製品に含まれていた。生活用品へ香りを広げる仕事は、早い時期から始まっていたのである。

営業からブランドを育てたクレア・バーンズ

2009年に地域営業の担当として加わったのが、Claire Barnes(クレア・バーンズ)である。それ以前は、ファッションブランド「Moochi(ムーチ)」のマーケティング、広告業界での仕事、雑誌のアカウントマネジメントなどを経験していた。

バーンズは、商品の魅力を店頭へ伝え、顧客と話す側からエコヤを知っていった。入社当時のチームは五人。その後、セールスマネージャー、ブランドのゼネラルマネージャーを経て、2022年にCEOへ就任した。

仕事では、一週おきにニュージーランドとオーストラリアを行き来していた時期もある。市場へ出て顧客に会えることを喜ぶ一方、家族と離れる時間も長くなる。バーンズは、新しい製品をつくる楽しさと、人との関わりを、自分の仕事の大切な部分としてきた。

小さなチームの頃から関わった彼女の歩みは、キャンドルという一つの製品を届ける仕事が、多様な暮らしの香りをつくる仕事へ変わっていった時間とも重なる。創業者だけでなく、売り場と使い手を知る人が、長くブランドを育てている。

調香師アイザック・シンクレアとの仕事

海外で2011年に発表されたキャンドルコレクション「Decadence(デカダンス)」は、アール・デコ期を象徴する四人の女性を題材にした。企画の舞台は、1920年代のニューヨーク、ロンドン、パリ、上海。都市と女性たちの人生やスタイルを結び、香りで描いている。人物の生き方が香りの出発点となり、その人らしさをどう表すかが制作の問いになる。

調香師Isaac Sinclair(アイザック・シンクレア)のデカダンスには、既製の香りから独自の調香へ向かう変化が表れている。

ニュージーランド出身のシンクレアは、香水を集めるうちに、それをつくる職業への関心を深めた。まず香水を販売する仕事に就いたが、望んでいたのは創作の側に立つことだった。

自分が本当にやりたいのは、つくる側の仕事だと分かっていました。

アイザック・シンクレア

香水の専門家マイケル・エドワーズへの質問をきっかけに、南フランスの業界会議へ足を運ぶ。そこで人々を紹介され、奨学金を得てミラノで五感を学び、その後はパリで調香の訓練を受けた。エコヤが協働してきた調香師には、販売から創作へ進み、異なる国々で経験を重ねた人物がいる。

日本での展開と、新たな出発

日本との接点は、2012年3月に発表された絹株式会社との独占販売契約にさかのぼる。同年9月の日本向け発表には、デカダンスも含まれていた。海外へ香りを届ける歩みの中で、日本での流通も組み立てられていった。

2026年には、msh株式会社が新たに日本向けの発売を発表した。

ブランドのこだわり

香りとワックス、芯、ガラスを一緒に設計する

香りの処方ができても、それだけでキャンドルは完成しない。バーンズが挙げるのは、ガラス、芯の構成や大きさ、ワックスと香料の相性まで含めた設計である。

人々が思うほど、どんな器にでも芯と香料とワックスを組み合わせればよい、という単純なものではありません。

クレア・バーンズ

エコヤのキャンドルには、天然のソイワックスと、鉛を含まないコットン芯が使われる。中心的な「Madison(マディソン)」は、香料を混ぜたワックスをガラスの器へ注ぎ、銀色の蓋を合わせる。香りの創作に、燃焼と容器の設計が重なって、一つの製品になる。

建物と周囲の風景を、香りでつなぐ視点

シンクレアの記憶に残る空間に、ストックホルム近郊の小さな島で訪れた、伝統的な木造のサマーハウスがある。島には松が茂り、家もその木で建てられていた。室内にいても、外の風景とつながるような香りがしたという。

香りは「目に見えない雰囲気」をつくることができます。

アイザック・シンクレア

建物の素材、周囲の植物、その中で過ごす時間。この体験には、香りを容器の中だけで考えず、空間全体の印象として捉える視点がある。

フレンチペアーとサンダルウッド&アンバーの構成

代表的な「French Pear(フレンチペアー)」は、クイーンズランドの樹上で熟した洋梨を題材に、バニラとクローブを重ねた香りである。洋梨の果実感を、甘さとスパイスで包む構成に、この香りの焦点がある。キャンドルのほか、リードディフューザーやルームスプレーなどにも展開されている。

一方、「Sandalwood & Amber(サンダルウッド&アンバー)」では、ジンジャーとライムなどの柑橘、バイオレットやローズに、サンダルウッド、ムスク、アンバーを組み合わせる。こちらは木を支える要素に、スパイスや柑橘を重ねた構成だ。同じブランドの中でも、果実を中心にした香りと、木を中心にした香りでは、素材の組み合わせ方が異なる。

台所の作業を香りでつなぐキッチンコレクション

キッチンコレクションでは、「Tahitian Lime & Grapefruit(タヒチアンライム&グレープフルーツ)」が、食器用洗剤、ハンドウォッシュ、サーフェススプレーをつなぐ。グレープフルーツやレモン、タヒチアンライムに、ルバーブと茶のニュアンスを添えた香りである。

部屋に香りを拡散する製品から、洗う、拭くといった作業のための製品へ。台所で使う物に香りを組み込み、一つの生活空間の中でつながりを持たせている。

布向けに香り立ちを調整するランドリーコレクション

ランドリーコレクションは、室内用の香りとは分けて、布にやわらかく残る香り立ちを考えたシリーズである。「Wild Sage & Citrus(ワイルドセージ&シトラス)」では、セージや柑橘に、いちじく、アンバー、サンダルウッドを重ねる。

洗剤、リネンスプレー、クローゼット用タグなどを通じて、洗うときから収納まで、異なる場面へ香りを届ける。同じブランドの香りを、用途に応じた形と強さで設計する仕事である。

季節の香りと器のデザイン

日々使うコレクションとは別に、季節の香りと造形を組み合わせる限定品もある。2026年のホリデーコレクションでは、「Fresh Pine(フレッシュパイン)」を、季節を知らせる香りとして位置づけている。切りたての松を思わせる題材に、ローズウッドや柑橘、シダー、スパイスを組み合わせた香りだ。

この年のマディソンキャンドルは、季節の色を施した器と、繰り返し使える缶のパッケージを採用した。定番の香りを暮らしに根づかせる仕事と、季節の記憶に合わせて香りや器をつくる仕事。その両方が、キャンドルから広がったエコヤのものづくりを支えている。

参考文献