パイナップルの香りには、フルーティーな成分だけでなく、単独では肉やタマネギを思わせると記述される成分も含まれます。2012年の研究は、中国で栽培された「台農4号」と「台農6号」を比較し、同じ交配の組み合わせから育成された品種でも、香りに寄与しそうな成分の顔ぶれが異なることを示しました。
台農4号では甘くカラメル様のフラネオール、台農6号では果実様の2-メチル酪酸エチルが、濃度とにおいの感じやすさから計算する指標で特に高い値を示しました。硫黄を含むエステルも、両品種に共通する重要な候補でした。
二つの品種を、同じ方法で調べた
研究の目的は、二品種それぞれの特徴的な香りを担う成分を探し、その違いを説明することです。中国・広東省の研究機関から得た果実を各品種3個使い、果皮と果肉の色、可溶性固形分も測定しました。
香りの分析には、皮を除いて粉砕した果肉10gを使いました。容器内でかき混ぜながら25℃で40分間、果肉から空気中へ出た成分を吸着させ、ガスクロマトグラフィー質量分析で調べています。標準物質やデータベースと照合し、内部標準を使って量を求めました。
このため、測定したのは粉砕した果肉から、この条件で回収できる揮発成分です。食べたときの好みや、切っていない果実の香りの強さを直接評価した試験とは目的が異なります。
多く含まれる成分と、感じやすい成分は違う
両品種とも、分析された成分量ではエステル類が中心でした。台農4号で特に多かったのは、3-(メチルチオ)プロピオン酸メチルという、硫黄を含むエステルです。台農6号では、そのエチル体が最も多く検出されました。
ただし、量が多い成分が、そのまま香りの主役になるとは限りません。そこで研究者は「OAV」という指標を計算しました。成分の濃度を、そのにおいを感じ始める濃度で割った値です。少量でも感じやすい成分は、OAVが高くなります。
この研究では、過去の文献にある水中のにおいの閾値を使っています。OAVが1を超える成分を、香りへの寄与が見込まれる候補として選びました。混ざり合った果肉の中での実際の寄与を、直接測った数値ではない点が読み方の要所です。
台農4号は甘い香り、6号は果実様の成分が有力
台農4号では、フラネオールのOAVが2549で最も高くなりました。原著は、その香りを甘く、パイナップルやカラメルを思わせるものと記述しています。次に高かったのは、ココナッツ様とされるδ-オクタラクトンでした。さらに、硫黄を含むエステルのメチル体とエチル体も1を超え、計4成分が特徴的な香りの候補に挙がりました。
台農6号では、果実様の2-メチル酪酸エチルが約3707で最も高く、リンゴ様の2-メチル酪酸メチルも高い値を示しました。ほかにデカナール、ヘキサン酸エチル、硫黄を含むエステルのエチル体を合わせ、計5成分が選ばれています。
著者らは、この果実様の成分の組み合わせが、台農6号が「リンゴパイナップル」と呼ばれることを説明する可能性を述べています。OAVの約3707という数字は、果実が3707倍強く香るという意味ではなく、選んだ閾値に対する濃度の比です。
タマネギ様の成分が、果実香の一部になる
硫黄を含む二つのエステルについて、原著の香調表には肉様・タマネギ様という記述があります。同じ表は、低い濃度ではメチル体が果実様、エチル体がパイナップル様にも感じられるとしています。一つの成分名に一つのにおいだけを割り当てると、このような濃度による表情の違いを見落とします。
エチル体のOAVは両品種で1を超えました。一方、メチル体は台農4号では3.46、台農6号では0.18でした。6号にも存在はするものの、今回の閾値を使う計算では、単独の寄与候補としての重みが小さかったわけです。
著者らは、エステル、硫黄を含む成分、テルペンなどの組み合わせがパイナップルの香りを形づくると考えています。ただし、この研究では成分を混ぜ直して果実香を再現したり、一成分を抜いて変化を確かめたりする実験までは行っていません。各3果という試料規模も含め、今回の結果は品種の違いを説明する化学的な手掛かりとして読むのが適切です。
まとめ
二つのパイナップル品種は、成分量だけでなく、においの閾値を考慮した主要候補も異なりました。台農4号では甘いフラネオールとココナッツ様のラクトン、台農6号では果実様のエステルが目立ち、硫黄を含むエステルのエチル体は両方に共通していました。
パイナップルらしさを考えるときには、甘い果実香だけでなく、濃度によって肉やタマネギ、果実の表情を見せる成分にも目を向ける必要があります。含有量と感じやすさを組み合わせることで、香りの違いをより具体的に捉えられます。
研究は中国農業部の公益性農業研究資金、海南省の自然科学基金、中央研究機関の基礎研究資金、雲南省教育部門の研究助成を受けています。著者らは利益相反なしと申告しています。
参考文献
Zheng LY, Sun GM, Liu YG, et al. Aroma Volatile Compounds from Two Fresh Pineapple Varieties in China. International Journal of Molecular Sciences. 2012;13:7383–7392. 原著論文


