洗濯を「早く終わらせたい作業」から、「今日はどの香りにしようと考える時間」へ。柔軟剤を自宅で使った女性34人への面接から、香りへの驚きや期待、家族との会話、香りを選ぶ楽しさといった体験が浮かび上がりました。
2026年に公開された研究は、香りを嗅いだ瞬間の反応よりも、洗濯という一連の家事をどう経験するかに注目しています。複数の香りを使い分けることや、使う期間によって、語られる内容がどう違うかも調べました。
洗濯中に香りを感じやすい柔軟剤を、自宅で使う
参加者は20〜30代の女性34人です。普段から週3回以上洗濯し、柔軟剤を自分で選び購入している人で、試験品の特徴を説明した文章に魅力を感じた人が選ばれました。
試験品は、パウダリー・フルーティ・フローラル調、フルーティ・フローラル調、フルーティ・ウッディ・フローラル調の3種類でした。香りとラベルのデザインが異なり、共通して洗濯作業中に香りが広がりやすい設計です。透明な容器に入った液体は透明で、一般的な柔軟剤より流動性が高い特徴もありました。
参加者は、3種類を使い分けて4週間使う9人、同じく1週間使う8人、1種類だけ4週間使う8人、同じく1週間使う9人の四群に分かれました。1種類の群は、香りの説明文から最も使いたいと答えた製品を使います。3種類の群は、使う順番や頻度を指定せず、自由に選びました。
数値の改善率より、体験の内容を整理する研究
使用中は洗濯の記録や感じたことをオンラインで回答し、最終日には1人ずつ、23〜59分の面接を受けました。研究参加前の洗濯についても、この最終面接で振り返って答えています。
研究者は発言を意味のまとまりに分け、3,489のラベルを作りました。その内容を複数人で協議してまとめるKJ法により、洗濯中の心理状態や変化をカテゴリーとして整理しています。何%ストレスが改善したかを測る試験ではなく、どんな変化が語られるかを探る質的研究です。
香りへの驚きが、期待や会話につながる
試験品の使用中の発言には、洗濯中に香りが広がることへの驚きや、このあとどのような気分になるかという期待が見られました。以前は汚れや悪臭を取り除くことに意識が向いていた人が、洗濯で気分のよい時間を持てることに注目するようになった、と研究者は解釈しています。
たとえば、香りを家族にも知ってほしくて呼んだり、いつもと違う香りが会話のきっかけになったりする体験がありました。洗濯が楽しみになった、自分のための時間に感じられた、といった内容も、使用中の発言から抽出されています。
こうした体験は全員に同じ形で生じたという意味ではありませんが、洗い上がった衣類だけでなく、洗濯している最中の香りが、家事の受け止め方に関わる可能性を示しています。
使い分ける人は、「どうなりたいか」も考えていた
3種類を使い分けた群には、天気や時間帯、家族の心地よさ、自分がそのとき望む気分を考えて香りを選ぶ発言が見られました。夜、疲れているときには甘い香りを選ぶ、自分をすっきりさせたいときには別の香りを選ぶ、といった具体例です。
選ぶ理由は、今の洗濯時間だけに限りません。寝具を使うときに落ち着きたい、洗った服を着るときに演出したい印象があるなど、少し先の自分を想像した選択もありました。著者らは、前者を気分に合わせた香りの使用、後者を化粧や香水で自分を表現することに似た体験として整理しています。
また、普段なら買わないタイプの香りを試し、意外によいと感じる発見もありました。使い分けの楽しさへの言及は使用中の自由記述にも現れ、面接だけでなく、途中の記録とも共通していました。
4週間使った人が気付いたのは、香り以外の使いやすさも
4週間の群では、1週間の群には見られなかった「洗濯の負担が減った」というカテゴリーが抽出されました。ただし、その内容は、香りの効果というより、さらりとした液体が注ぎやすい、容器や投入口に残りにくい、衣類が絡まりにくく取り出しやすい、といった使い心地でした。
研究者は、使う回数が増えたことで、事前の説明では強調していなかった特徴にも気付きやすくなったと考えています。一方、香りに関するカテゴリーには、1週間と4週間の群で違いは認められませんでした。長く使うほど香りによる気分の改善が大きくなった、と結論づける結果ではありません。
著者らが提案した、洗濯体験の二つの流れ
著者らは、発言をもとに二段階のモデルを提案しました。一つ目は、洗濯中の香りなどの特徴に気付き、驚きや期待を持つことが、洗濯への好意的な印象につながる流れです。二つ目は、香りを使い分けるときに、なりたい気分や自分の姿を考えることが加わる流れです。
これは面接から組み立てた解釈であり、因果関係を統計的に確定したモデルではありません。香りなしの対照はなく、ラベルや容器、粘度なども体験に含まれます。参加者も、もともと試験品のコンセプトに魅力を感じた女性に限られ、参加前の状態は面接時の回想です。香りを好まない人を含め、誰にでも同じ体験が生じるとは限らない点を踏まえる必要があります。
まとめ
自宅で柔軟剤を使った人の語りから、洗濯中の香りへの驚きや期待、家族との会話、洗濯を楽しみにする気持ちが見つかりました。複数の香りを選べる場合には、今なりたい気分や、衣類を使うときの自分を考える体験も加わりました。
使用期間の比較では、4週間の群に使いやすさによる負担軽減の発言がありましたが、香りに関するカテゴリーの違いはありませんでした。香りの作用を一つの効果量にまとめるのではなく、選ぶことや作業の流れを含めて、日用品の体験を理解する手掛かりとなる研究です。
研究費はライオンが負担し、第1・第2著者は研究当時同社所属でした。第3著者が所属するイデアラボは、研究実施時にライオンと技術指導業務の委託契約を結んでいたと利益相反欄に記載されています。
参考文献
斎藤快・大木亨・浅野昭祐(2026).衣料用柔軟剤の香りが洗濯中の心理状態に与える影響の探索的検討:半構造化面接法を活用した質的研究.日本感性工学会論文誌,早期公開(2026年1月29日).https://doi.org/10.5057/jjske.TJSKE-D-25-00045(原著PDF)


