同じ濃さの砂糖水でも、加えた香りや、目にする食べ物の画像によって甘さの評価は変わるのでしょうか。2011年の研究では、いちごやキャラメルだと分かる画像を見るグループの方が、色や模様を残した抽象画像を見るグループより、香りつき砂糖水を全体として甘く評価しました。
この研究が注目したのは、色だけでなく「何の食べ物か分かること」です。味覚・嗅覚・視覚が合わさるとき、画像の意味や、画像と香りの組み合わせがどう働くのかを調べています。
砂糖の濃さをそろえ、画像の分かりやすさを変える
参加者は健康な成人48人で、24人ずつの二つのグループに無作為に分けられました。一方には、いちごとキャラメルの具体的な画像を提示。もう一方には、元画像の色や細かな質感を保ちつつ、物の形を崩した画像を提示しました。先に具体的な画像を見ることで抽象画像の正体が分かってしまうのを避けるため、両方を見る設計にはしていません。
本試験の液体は、いずれもショ糖6%の水溶液です。ここに、いちごの混合香料、キャラメル様の香りを持つフラネオール、ブイヨンのような香りを持つアブヘキソンのいずれかを加えました。3種類の香りは、事前に訓練パネルで強さをそろえています。
液体は装置で1mLずつ舌の先へ送り、画像のある試行では4秒間表示しました。参加者は飲み込んだ直後に甘さを0〜100で答え、間には水で口をすすぎました。最初には、香りのない4%・6%・8%の砂糖水も評価し、甘さの範囲を経験しています。
いちごの香りと、具体的な画像のグループで高い評定
最初の香りなしの砂糖水では、砂糖が濃いほど甘いと評価され、二つのグループ間に有意な差はありませんでした。その後の香りつき試料について、参加者ごとの尺度の使い方と6%砂糖水の評定を調整して解析すると、具体的な画像のグループの方が全体として甘さの評定が高くなりました。
香りによる違いもあり、全条件をまとめた比較では、いちごの香りの方がキャラメル様の香りより甘く評価されました。ブイヨン様の香りとの差は、この比較では有意に達しませんでした。画像がない試行に限ると、いちごの香りは残りの2種類より高い甘さ評定でした。
キャラメル様の香りがブイヨン様の香りより甘さを強める、という予想は支持されませんでした。著者は、キャラメルとブイヨンには単一成分を用いたため、普段経験する複雑な食品の香りとの違いが関係した可能性を挙げています。具体的な香りの選び方によっても、結果が変わり得るという点です。
抽象画像では、表示した試行の評定が上がる
画像がない試行と、画像がある試行を比べると、抽象画像のグループでは画像があるときに甘さの評定が高くなるパターンが見られました。一方、具体的な画像のグループでは、画像なしの試行ですでに評定が高く、画像表示による追加の上昇は明確ではありませんでした。
著者は、この組み合わせを「具体的な画像は記憶を介して長く働き、抽象画像はその場で一時的に働く」という二つの過程で説明しています。ただし、この持続性の解釈には原著の記載上の問題があります。手順の節には、画像なしの6試行を先に行い、休憩後に画像ありの12試行を行うとあります。一方、結果と図の説明では、画像なしの試行が画像ありの試行の間に混ざっていたと記されています。
この順序の食い違いは、画像を見た効果が後まで残ったのかを判断するうえで重要です。群ごとの評定パターンは報告されていますが、それだけから「写真の甘さ効果が長く続く」と確定することはできません。
画像と香りの一致は、いちごで効き方が違った
研究者は、いちご画像といちご香のような一致した組み合わせ、いちご画像とキャラメル香のような別の甘い食品同士の組み合わせ、ブイヨン様の香りとの組み合わせも比較しました。
一致の程度を全体でまとめた効果は有意ではありませんでしたが、画像の種類によって結果が変わりました。いちごの画像では、いちごの香りを組み合わせた方が、キャラメル様の香りを組み合わせたときより甘く評価されました。キャラメル画像では、同じような一致の利点は見られませんでした。
したがって、「香りと画像が一致すれば必ず甘くなる」とも、「一致は関係ない」とも一括りにはできません。何の食品を連想させるかという、具体的な組み合わせが大切です。
画像の意味は手掛かり、記憶の仕組みは仮説
この研究では脳活動や記憶を直接測っていません。抽象画像も、参加者の一部には元の食品が分かり、半数には部分的に分かったと報告されています。また、甘さだけを答える課題なので、香りなどほかの印象の違いが甘さの点数に入り込む可能性も残ります。
画像は、別の参加者を使った事前試験で甘さを高めやすかったものが選ばれています。今回の2種類の画像から、あらゆるパッケージや料理写真の効果を予測するには、さらに比較が必要です。
まとめ
香りつき砂糖水の甘さは、いちごやキャラメルだと分かる画像を見るグループで、抽象画像のグループより全体として高く評価されました。いちごの香りはキャラメル様の香りより甘く評価され、いちご画像では香りとの一致による利点も見られました。
色や模様に加えて、「何の食べ物か」という意味も、香りと味の組み合わせを考える重要な手掛かりになります。一時的な効果と長く続く効果の区別は、原著の提示順序の記載に食い違いがあるため、今後の検証が必要な解釈として受け取れます。
論文では、著者の一部が研究当時、Top Institute Food and Nutrition、Profactor GmbH、Center for Innovative Consumer Studiesに雇用されていたことを、資金・利益相反欄で開示しています。関連する特許や開発中・販売中の製品はないと申告しています。
参考文献
van Beilen M, et al. (2011). Effects of Visual Priming on Taste-Odor Interaction. PLOS ONE, 6(9), e23857. 原著論文・公開全文


