初めて会ったのに、なぜか気が合う。そんな友人同士は、体のにおいも似ているのでしょうか。
2022年の研究では、出会ってすぐに親しくなったと答える同性の友人同士は、無作為に組み合わせた人同士より、体臭の特徴が似ていました。さらに、面識のない人が無言でやり取りする実験でも、電子鼻で測った体臭が近い組ほど、互いに「気が合った」と答えやすい関係が見られました。
友人の共通点として、体臭に注目する
Ravrebyらが調べたのは、同性で、恋愛関係ではない友人同士です。研究の問いは二つありました。すぐに気が合った友人の体臭は似ているのか。そして、その類似は長年一緒に過ごした結果だけでなく、初対面のやり取りとも関わるのか、という問いです。
まず235人に「すぐに気が合う友情」を自由に説明してもらい、意味が分かると答えた225人の記述を整理しました。そこから得た、すぐに結びつきを感じる、波長が合う、といった上位20の特徴を、友人募集の基準に使っています。
最終的に、双方が基準を満たす同性の友人20組40人が参加しました。男性10組、女性10組で、友情の継続期間は平均約6.2年でした。したがって、この段階で測ったのは、出会った瞬間のにおいではなく、すでに関係が続いている友人のにおいです。
シャツに集めた体臭を、電子鼻と人の鼻で調べる
参加者は、指定された無香料の石けんで洗い、提供された綿100%のTシャツを2晩、各晩6時間以上着ました。香水やデオドラントなどを避け、体臭に影響しやすい食べ物や、寝具への他人・ペットのにおいの付着にも注意するよう求められました。回収したシャツは冷凍保存しています。
電子鼻は、複数のセンサーが気体に反応したパターンを数値化する装置です。今回使った装置の10センサー中、体臭に反応した5センサーの値で各人の特徴を表し、シャツを入れた瓶の中の空気を比べました。
実際の友人20組は、同じ40人を無作為に組み替えた同性の組より、センサー反応のパターンが近くなりました。組み替えを1万回行う解析で、偶然の組み合わせとの差を検討しています。ただし、この装置で特定の分子を同定したわけではありません。
人の鼻でも似ていたが、課題によって結果が違う
人が嗅ぐ試験では、まず24人に、友人2人と無関係な1人の計3つの体臭を提示し、仲間外れを選んでもらいました。この方法では、友人の組を十分に見分けられたとは言えませんでした。
一方、一つずつの体臭を快さや強さなど五つの項目で評価すると、その評定の組み合わせは友人同士で近くなりました。嗅いだときの吸気の長さにも、友人の組で差が小さいという結果がありました。
さらに別の25人が、二つの体臭を直接比べて似ている程度を答えると、友人同士は無作為の組より似ていると評価されました。別の25人が写真で行った比較でも、友人同士の外見の類似が見られています。三つから選ぶ課題と、二つを直接比べる課題では、記憶や比較の負担も異なります。
重要なのは、電子鼻による似ている程度と、人の鼻による似ている程度は、組ごとには相関しなかったことです。両方で友人の類似は見られましたが、機械と人が同じ手がかりを拾っていたとは限りません。
初対面17人が、2分間の無言のゲームをする
友人のにおいが似ているだけでは、食事や生活の共有で似てきた可能性が残ります。そこで研究チームは、個人的な面識のない17人の体臭を集め、同性同士で短い対面課題を行いました。
課題は、50cm離れて向き合い、2分間、互いの手の動きを鏡のように合わせる「ミラーゲーム」です。会話はせず、同じ性別の全員と順に組み合わせました。男性7人、女性10人から、合計66組のやり取りが生まれました。66組は独立した132人ではなく、同じ17人が複数の組に入っています。
各回の後には、相手との親近感、また会いたいか、波長が合うかなどを答え、双方が「気が合った」と報告したのは22組でした。電子鼻で測った体臭の特徴は、この22組で、双方の一致がなかった組より近くなりました。
また、体臭が近いほど親近感や再会への意欲などが高いという関係が、13指標中10指標で見られました。同じ人が複数の組に入ることや、複数の指標を調べることを考慮した解析でも、関係が残っています。
ただし、映像から求めた動作の同期の程度と、体臭の類似には関連がありませんでした。この実験で体臭との関係が明確だったのは、主に参加者が報告したやり取りの質です。
「71%予測」の数字は、どう読むか
研究チームは、電子鼻のデータから、双方が気が合った組と、それ以外の組を分類するモデルも試しました。66組から1組ずつ外して予測する交差検証では、正答率は71.21%、分類の性能をまとめるAUCは0.67でした。
これは、同じ17人の中で作られた組についての内部検証です。残りの学習データにも同じ参加者が含まれ得るため、初めて見る人たちの将来の友情をその精度で予測できる、という意味にはなりません。
また、双方が気が合った組は22、それ以外は44と偏っています。すべてを多数派の「双方の一致なし」と答えても約66.7%になるため、正答率だけを見るより、集団の構成とAUCを併せて読むことが大切です。
においの類似は、関係の一つの手がかり
この研究は、すでにいる友人と、初対面のやり取りという二つの場面で、体臭の類似との関係を示しました。一方、香りを入れ替えて人間関係が変わるかを試した実験ではなく、共通する別の要因が体臭と親しさの両方に関わった可能性は残ります。
対象は同性・非恋愛の関係で、初対面課題も無言の短時間のゲームでした。その後に長期の友情が生まれたかは追っていません。会話や共有する経験が豊富な日常では、体臭の役割は今回と異なるかもしれません。どの分子が関わるかも、今後の課題です。
まとめ
すぐに親しくなった同性の友人20組は、無作為の組より体臭の特徴が似ていました。人の直接の類似評定でも同じ方向の結果が得られましたが、三つから仲間外れを選ぶ課題では明確な判別はできませんでした。
初対面17人の実験でも、電子鼻で体臭が近い組ほど、互いに気が合ったと答え、親近感などを高く評価する関係がありました。体臭の類似は、人と人の親しさを考える一つの手がかりになり得ると示した研究です。
本研究はイスラエル科学財団(ISF)とAriane de Rothschild Women’s Doctoral Programの支援を受けています。著者らは利益相反なしと申告しています。
参考文献
Ravreby I, Snitz K, Sobel N. There is chemistry in social chemistry. Science Advances. 2022;8(25):eabn0154. doi:10.1126/sciadv.abn0154. 公開原著全文.


