「自然な香り」と聞いて、どんな匂いや色を思い浮かべる?

「自然な香り」と聞いて、どんな匂いや色を思い浮かべる? 香りの科学

「自然な香り」と聞くと、どんなにおいを思い浮かべますか。花や草の香り、みずみずしさ、軽やかさ。フランスとアメリカで行われた調査では、こうした言葉が多く挙がりました。

ところが、「自然なら、においはごく弱いはず」と思われていたわけではありません。また、自然な製品に合う色を尋ねると緑や白、黄色が選ばれやすかった一方、対象をイチゴに絞ると赤が中心になりました。自然らしさは、一つのにおいや色だけで決まるイメージではないようです。

実物を嗅がずに、言葉と色から期待を調べる

この研究が調べたのは、「自然な製品」からどんな香りや色を期待するかという、消費者の連想です。実際の香りを嗅いで天然か合成かを当てる試験ではありません。

オンライン調査には、フランス838人、アメリカ505人が回答しました。年齢と性別の構成が、それぞれの人口構成に近づくように重み付けして解析しています。

まず、自然なにおいと、不自然なにおいから連想する形容詞を、それぞれ一つから三つ挙げてもらいました。次に、自然な食品、パーソナルケア製品、家庭用製品について、どの程度のにおいの強さや色の鮮やかさを期待するかを8段階で評価してもらいます。

さらに、自然な製品に合う色を、色見本から複数選んでもらいました。広い製品カテゴリーだけでなく、具体的な「イチゴ」についても自然な色と人工的な色を選んでもらい、対象がはっきりすると答えが変わるかを調べています。国と製品カテゴリーによる違いは、この研究のもう一つの中心的な目的でした。

「フレッシュ」は、新鮮さにも清涼感にもつながる

両国で自然なにおいとよく結びついたのは、フレッシュさや、花を表す言葉でした。「よい」「心地よい」といった肯定的な言葉や、植物の例も挙がっています。不自然なにおいでは「化学的」が目立ち、「臭い」「不快」といった否定的な言葉も見られました。

フランスの回答には軽さや単純さ、アメリカの回答には清潔さとの結びつきも見られました。ただし、これは言葉の連想です。自然由来のものは必ず心地よく、安全で、人工的なものは不快だという性質を実験で示したわけではありません。

著者らが注目したのは、フレッシュという言葉の曖昧さです。採れたての果物のように、元の素材に近く新鮮であることも、ひんやり、すっきりした感覚も表せます。この調査だけでは、回答者がどちらを意味したのかを分けられませんでした。

「単純な香り」という表現も、成分の数を数えたものではありません。たくさんの分子が混ざっていても、一つの花らしい香りとしてまとまって感じられることがあります。連想としての分かりやすさと、化学的な組成の複雑さは、別に考える必要があります。

軽やかなイメージでも、無香を期待してはいない

自然なにおいには「軽い」「ほのかな」といった言葉が結びつき、不自然なにおいには「強い」「圧倒される」といった言葉が結びつきました。ところが、期待する強さを数値で尋ねると、自然な製品のにおいや色は、おおむね8段階の4〜5付近でした。

つまり、自然なにおいのイメージに軽さがあっても、ほとんどにおわないものを望んでいるとは限りません。著者らは、人工的な製品のほうが強く香り付けされているという対比が、言葉に反映された可能性を考察しています。

具体的なイチゴのにおいには、食品全般、パーソナルケア製品、家庭用製品より高い強さが期待されました。後者三つのカテゴリー間では、においの期待強度に有意な差はありませんでした。一方、色の鮮やかさは、食品、家庭用製品、パーソナルケア製品の順に高く期待されました。

アメリカの回答者はフランスの回答者より、においも色も強いものを期待していました。若い年齢層や男性の回答者でも、期待する強さが高い傾向が報告されています。これは想像した強さの違いで、嗅覚が敏感かどうかを測った結果ではありません。

自然な製品に合う色は、何を想像するかで変わる

パーソナルケア製品と家庭用製品では、両国とも緑、白、黄色が選ばれやすい色でした。食品では、アメリカは緑、オレンジ、黄色、フランスはそれらに白も加わりました。すべてのカテゴリーで、全く同じ色の組み合わせになったわけではありません。

国の違いでは、フランスの回答者はアメリカの回答者より、白を多く選びました。また、食品にはオレンジや茶色などが、食品以外の製品には青や白などが結びつきやすく、製品カテゴリーによって色の分布が変わりました。

ここでの選択は複数回答です。論文の色ごとの割合は、選ばれた色の総数に占める割合であり、「その割合の人が、その色だけを選んだ」という意味ではありません。

イチゴなら赤。「自然らしい色」は対象次第

対象をイチゴに限定すると、両国で鮮やかな赤と暗い赤が自然な色として選ばれました。自然な製品全般では緑などを連想しても、「イチゴらしさ」を考えると答えが変わるのです。

人工的な色としては、鮮やかなピンクが両国で選ばれやすくなりました。アメリカでは、鮮やかな赤も人工的な色として選ばれました。同じ色が自然側にも人工側にも出てきた点について、著者らは、用意した18色では微妙な色合いを表しきれなかった可能性を挙げています。

この結果は、緑にすれば何でも自然に見えるという単純な見方を避ける手掛かりになります。製品全般のイメージと、具体的な素材が本来持つ色のイメージは、重なりながらも別に働くと考えられます。

自然な「由来」と、自然らしい「におい」

自由回答には、加工されていない、添加物がない、花から抽出したといった作り方に関する言葉と、バラや草のような自然物そのものの例が、どちらも現れました。自然な香りという言葉は、自然な方法で得られた香りと、自然物らしく感じられる香りという、二つの意味を含んでいそうです。

また、国による差には、市場で見慣れた製品、色の象徴的な意味、数値尺度の使い方などが関わる可能性があります。今回の回答だけで、その原因を文化の一面に決めることはできません。

研究はV. Mane et Filsの助成とANRTの支援を受け、同社所属の著者も参加しています。フランスの回答者は同社のオンラインパネルから募集されました。著者らは、執筆・出版に関する潜在的な利益相反はないと申告しています。

まとめ

「自然な香り」は、フレッシュさ、花や植物、軽やかさなどと結びついていました。ただし、期待するにおいの強さは中程度で、自然ならほぼ無香という結果ではありませんでした。

色や期待する強さは、国と製品カテゴリーでも異なり、イチゴでは一般的な自然色より、イチゴらしい赤が選ばれました。自然な由来を語っているのか、自然物らしい感じ方を語っているのか。香りを説明するときに、その意味を一歩具体的にすると、相手とのイメージの違いも見えやすくなります。

参考文献

Dantec M, et al. Olfactory attributes and colors associated with naturalness. Food Quality and Preference. 2022;98:104495. doi:10.1016/j.foodqual.2021.104495