香りカプセルの「生分解率」は、何を測る?

香りカプセルの「生分解率」は、何を測る? 香りの科学

洗濯用品などで香りを保つ小さなカプセルには、香料を包む殻があります。使った後にその殻が環境中に残るなら、微生物によって分解されるかどうかは、材料を選ぶうえで大切な性質です。

ところが、「生分解率が高い」という数字が、必ずしも殻そのものの分解を表しているとは限りません。2024年、香料会社GivaudanのKaterina Karagianniらは、試験前にカプセルをどう洗い、何を取り除くかで、結果がどれだけ変わるかを調べました。

酸素の消費からは、分解された成分を選べない

この研究で使ったのは、微生物が試料を分解するときに消費する酸素を測る方法です。下水処理場から採取した微生物を含む汚泥と試料を、一定温度の閉じた容器に入れます。試料を入れない容器での消費を差し引き、試料の元素組成から計算した酸素の必要量と比べて、分解の割合を求めました。

ただし、測定器が捉えるのは酸素消費の合計です。殻、中に入っていた香料、殻に結びつかず残った材料のうち、どれが分解されたかを個別に教えてはくれません。香料や残留物がよく分解されれば、分解しにくい殻でも、高い値が出る可能性があります。

研究者らは、OECD 301Fという試験法を基に、観察期間を60日まで延ばして測定しました。通常の28日間の試験と、今回の60日間の結果は、分けて考える必要があります。また、これは酸素消費に基づく評価で、カプセルの重量が何%消えたかを直接量った数字ではありません。

香料を抜くだけでは、殻だけにならない

対象は、殻の組成が異なる5種類の香りカプセルです。研究者らは、精製の程度を変えた五つの準備方法を比較しました。すべてのカプセルに五つすべてを試したわけではなく、まず一種類で全方法を比べ、他のカプセルでは一部の方法で確かめています。各生分解試験は2回ずつ行いました。

最も簡単な方法では、分散液から水を取り除くだけで、中の香料や残留物は残します。別の方法では、溶媒で香料を抜き、さらに水に溶ける残留物を洗い流します。それでも、水に溶けない細かな材料が、殻と一緒に残る場合がありました。

そこで最も念入りな方法では、遠心分離でできる層を選び分けました。上に集まるカプセルの層だけを残し、水の層だけでなく、下に沈んだ別の材料も除きます。そのうえで香料を溶媒で取り除き、殻の試料を作りました。原著では、これを方法Eと呼んでいます。

香料を除く方法では、残った香料が試料重量の1%未満であることを分析で確かめています。しかし、香料が少ないことだけでは、他の残留物まで十分に除けたとは言えません。水に溶けるものと溶けないものを、両方扱う点が今回の工夫でした。

同じカプセルでも、91%からほぼゼロへ

五つの準備方法すべてを試したカプセルでは、水を除いただけの試料が、60日後に約91%という値を示しました。香料を抜くと約54%になり、水に溶ける残留物も除く方法の一つでは約35%になりました。

最も念入りに精製した方法Eでは、殻の分解はほぼ認められませんでした。表に示された値はマイナス2%ですが、これは試料なしの測定値を差し引く計算上の変動を含み、分解が逆向きに起きたという意味ではありません。著者らは、この条件では実質的に分解なしと解釈しています。

一方、別のカプセルでは、水を除いただけで約84%、方法Eで精製した後も約62%でした。このカプセルは、余分な成分を取り除いても、研究者らが用いた60日間で60%という判断基準を上回りました。精製するとすべての材料が分解しなくなる、という結果ではありません。

5種類すべてに方法Eを使った場合、60%を超えたのは、この一種類だけでした。生分解性があるとして供給された二つのカプセルは、同じ精製後の試験で約11%と約35%でした。ただし、供給者の申告値とこの研究の値は、同一の準備方法で行った再現実験の対ではありません。著者らは、今回の方法では、その二つの生分解性の主張を裏づけられなかったとしています。

洗い方の効果も、分析で確かめる

研究者らは、洗う回数を増やせばよいと考えたわけではありません。カプセルの一種類で洗浄液を分析すると、水で2回洗うまでに、回収された残留物の95%以上が取り除かれ、その後の洗浄で増える分はわずかでした。

2回、3回、4回洗った試料の生分解試験でも、差は試験のばらつきの範囲に収まりました。こうした分析を組み合わせ、香料や殻に結びついていない材料を除きながら、殻の性質を評価できる試料を作ることが重要だと、著者らは述べています。

まとめ

香りカプセルの生分解性を調べるには、試験の手順に加えて、試験容器へ何を入れたかが重要です。この研究では、香料や残留物が一緒に分解されることで、殻の分解を過大に見積もる場合がありました。一方、十分に精製しても基準を上回る殻もあり、適切な準備は、生分解する材料を見分けるためにも必要でした。

著者らは、方法Eまたは同等の準備法を使い、カプセルの仕組みに合わせて調整したうえで、洗浄液と残った殻を分析することを提案しています。今回の結果は、実験室で殻の性質を正確に評価するためのものです。海や土の中で同じ速さで分解することや、製品全体の環境負荷が小さいことまで示したわけではありません。

参考文献

Karagianni, K., Kuntzmann-Dembele, F., Bocokic, V., Charbonnier, A., Harrison, I., Kreutzer, G., Mendoza, A., & Jenner, K.(2024). Fragrance Encapsulates: Effect of Polymeric Shell Purification Method on the Accuracy of Biodegradability Testing. Environmental Toxicology and Chemistry, 43(6), 1242–1249. DOI: 10.1002/etc.5852/原著全文・権利表示。

著者はGivaudanのフランス、スイス、英国の研究者で、試験も同社の施設で行われました。外部資金なし、利益相反なしと申告しています。原著の著作権表示:© 2024 Givaudan France SAS。