CHIARA FIRENZE(キアラ フィレンツェ)は、2014年にイタリアのトスカーナで香りづくりを始めたブランドである。フィレンツェの香りの文化を、現代の暮らしへと移す。その題材には、ワインづくりや柑橘を育てる庭など、土地に根づいた営みがある。
出発点となったのは、家や部屋を香らせるホームフレグランスだった。現在は肌にまとうオードパルファムも手がけている。キアラ フィレンツェを知るには、香りの名前とともに、それが描く土地の暮らしや、一瓶を仕上げる手仕事に目を向けたい。
基本情報
- ブランド開始年:2014年
- 誕生の地:イタリア・トスカーナ州モンテルーポ・フィオレンティーノ
- 公式サイト:CHIARA FIRENZE
ブランドの成り立ち
2014年、モンテルーポで始まった香りづくり
キアラ フィレンツェが生まれたモンテルーポ・フィオレンティーノは、フィレンツェ近郊の町である。ブランドはこの地で、トスカーナの自然、文化、ライフスタイルを香りで表現するホームフレグランスづくりを始めた。
フィレンツェの歴史を受け継ぐという考えは、香りの題材と製品をつくる方法に表れている。土地の食や植物の文化を作品に取り込み、瓶への充填から仕上げまでを手で行う。地域との結びつきが、香りの中にも、その容器にも置かれているのである。
2019年の新拠点と、香りを担うダニエーレ・ジンゴーニ
2019年6月30日、キアラ フィレンツェは同じ町のアルティ・エ・メスティエリ通りに、以前より広い新拠点を開いた。顧客、仕入れ先、代理店、従業員、友人たちが集まり、市長も参加した開所の催しである。
市長とともにテープカットに立ったのは、経営者であり、会社の「鼻」として香りづくりを担うDaniele Zingoni(ダニエーレ・ジンゴーニ)だった。彼は集まった人々に感謝を伝え、モンテルーポの一部を香りによってイタリア各地や国外へ届けることに誇りを示した。
この拠点には、手作業で行う製造の各工程が集められた。香りを遠くへ届けるための事業が広がっても、一瓶ずつ人の手で仕上げるという方法は、ブランドのものづくりの中心にあった。
ブランドのこだわり
手作業の充填と、木栓・銅線を使うボトルデザイン
ホームフレグランスのボトルには、木栓と、飾りとして添えられる銅線が用いられる。中身を充填し、栓をして、ラベルを貼る。キアラ フィレンツェは、こうした仕上げの工程を一つずつ手で行っている。
紙や木を優先し、プラスチックの使用をできるだけ抑えることも、容器や包装の方針である。手仕事を見えない製造工程の中だけにとどめず、手に取る瓶の素材にも表す。木栓や銅線は、その考えを具体的に伝える要素になっている。
数か月の香りの調整と、アルコールの素材選び
キアラ フィレンツェは、一つの室内用フレグランスをつくるために数か月の調整を重ねる。香りの立ち上がり、中心、余韻の釣り合いを整え、部屋に広がる一つの香りへとまとめていくのである。
香りづくりには精油や天然のアブソリュートを用い、現在の本国の方針では、アルコールに砂糖大根由来のバイオアルコールを採用している。アブソリュートは、花などから香りの成分を抽出して得る濃厚な香料である。
ワイン文化をブドウの香りで表す「ネロ ディ バッコ」
ネロ ディ バッコ(Nero di Bacco)は、トスカーナのワイン文化を題材にした室内用フレグランスである。中心にあるのは、ウーヴァ・フラーゴラと呼ばれるブドウ、ブドウの搾り汁であるモスト、サワーチェリーの香りだ。
ブドウそのものと、その搾り汁を香りの異なる段階に置く構成に、収穫物からワインへ続く土地の営みが重なる。飲み物の名前を借りるだけでなく、ワインづくりの出発点となる果実に焦点を当てた作品として読むことができる。
柑橘を冬に守る文化から生まれた「リモナイア」
リモナイア(Limonaia)の題材は、冬の間に柑橘を保護するための施設、リモナイアである。トスカーナの庭園に根づいたこの文化を、キアラ フィレンツェは室内用フレグランスの名前と着想にしている。
レモンとライムに、レモンの葉、塩を思わせるアクセントを組み合わせる。果実の明るさに葉の香りを重ねるところに、植物を育て、冬を越させる場所という題材とのつながりが見える。柑橘の香りを、土地の庭の暮らしへ結びつけた作品である。
春を描く「クローリ」と、肌にまとう香水への展開
現在、キアラ フィレンツェはクローリ(Clori)、ゼフィーロ(Zefiro)、クピード(Cupido)のオードパルファムもつくっている。ホームフレグランスから広がった香りの世界を、クローリを通して見ることができる。
クローリは、室内用とオードパルファムのどちらでも春を表現している。スグリにジャスミンやオレンジの花を重ね、バニラとサンダルウッドで支える構成を共有する。花の題材に、果実と甘さ、木の要素を組み合わせて、春を柔らかなまとまりとして描く。
同じ作品の題材が、部屋に広がる香りと肌にまとう香りの両方に置かれているのである。一方、オードパルファムの瓶は、透明なキャップと、淡い色から深い紫へ移るガラスのデザインを持つ。木栓を用いたホームフレグランスとは異なる造形に、同じブランドのもう一つの香りの楽しみ方が表れている。
ちなみに…
2026年8月、キアラ フィレンツェが本拠地のそばにある二つの公共花壇を整備する提案を、モンテルーポ市が受け入れた。計画には、ラベンダーを植え、地元の農業事業者と協力して水やりや剪定を続けることが含まれる。花壇は公共の場所のままである。香りの題材にしてきた土地に、実際の植物を育てる場をつくるという小さな地域活動でもある。
参考文献
- BONITA — キアラ フィレンツェのブランド開始年と誕生の地 — https://www.bonita.jpn.com/brands/66
- CHIARA FIRENZE公式 — ブランドの考え方と手仕事、素材の方針 — https://chiarafirenze.it/pages/azienda
- CHIARA FIRENZE公式 — Nero di Baccoのワイン文化への着想 — https://chiarafirenze.it/products/nero-di-bacco
- CHIARA FIRENZE公式 — Limonaiaの題材と香りの構成 — https://chiarafirenze.it/products/limonaia
- CHIARA FIRENZE公式 — 現行オードパルファムのコレクション — https://chiarafirenze.it/collections/eau-de-parfum
- gonews.it — モンテルーポの新拠点の開所とダニエーレ・ジンゴーニ(2019年7月3日) — https://www.gonews.it/2019/07/03/chiara-firenze-inaugurazione-montelupo-azienda/
- CHIARA FIRENZE公式 — 香りの開発とホームフレグランスの展開 — https://chiarafirenze.com/
- CHIARA FIRENZE公式 — 室内用Cloriに描いた春 — https://chiarafirenze.it/products/clori
- CHIARA FIRENZE公式 — Clori Eau de Parfumの春の表現 — https://chiarafirenze.it/products/clori-eau-de-parfum
- モンテルーポ・フィオレンティーノ市 — キアラ フィレンツェによる公共花壇の整備計画(2026年8月7日) — https://www.comune.montelupo-fiorentino.fi.it/novita/quando-le-aziende-private-si-prendono-cura-di-un-bene-pubblico-chiara-firenze-adotta-due-aiuole-in-via-del-lavoro/


