抽出法で、ローズマリーの成分は変わる?

抽出法で、ローズマリーの成分は変わる? 香りの科学

同じ「ローズマリーのオイル」でも、蒸留した精油と、葉を植物油に漬けて作る油では、中身が同じとは限りません。成分を何に溶かし、どのような条件で取り出すかが、得られるものを変えるからです。

Maha Mohamed Soltanらが2024年に発表した研究は、水を使う蒸留、オリーブ油への浸漬、超臨界二酸化炭素による抽出を比較しました。調べたのは成分の組み合わせと、培養した微生物に対する作用です。

三つの方法は、違う形の抽出物を作る

研究には、エジプトの市場で流通する乾燥ローズマリーが使われました。基準にしたのは、植物を水とともに加熱し、立ち上る蒸気を冷やして精油を集める水蒸留です。

二つ目は、粉砕した原料をオリーブ油に浸し、室温で24日間置く方法でした。得られるのは、ローズマリーの成分が溶け込んだオリーブ油です。精油だけを分離したものではありません。

三つ目は、高い圧力をかけた二酸化炭素を溶媒として使う方法です。この研究では40℃、100〜300バールの条件を用い、得られたものはペースト状でした。水蒸留の精油、浸漬したオリーブ油、ペースト状の抽出物という、性質の異なる三つを比べている点が重要です。

共通する主成分でも、その割合は違う

GC–MSで揮発性成分を分析すると、三つの抽出物はいずれも1,8-シネオールが多く、カンファーも主要な成分でした。ただし、測定信号の面積に占める割合は異なっていました。

1,8-シネオールの割合は、水蒸留で約51%、超臨界CO₂抽出で約38%、油への浸漬で約63%でした。α-ピネンは、水蒸留と油浸漬で目立つ一方、超臨界CO₂抽出では小さく、逆にボルネオールは超臨界CO₂抽出で多いという違いがありました。

これらは、分析した成分の中での相対的な割合です。油浸漬の63%という数字は、瓶の中身の63%がシネオールであることを意味しません。また、成分の割合が高いことから、その匂いが同じ比率で強く感じられるとは言えません。この研究では、人が嗅いで香りを比較する試験は行われていません。

水蒸留で検出されたp-シメンなどの一部の少量成分は、他の方法では検出されませんでした。著者らは、油への溶け込みやすさや、抽出条件の違いによって、取り出せる成分が変わると考えています。

「7割を抽出」は、残りから求めた見積もり

水蒸留では、乾燥原料100グラムあたり1.4ミリリットルの精油が得られました。油浸漬後に残った植物を再び水蒸留すると、0.42ミリリットル相当が残っていたため、差の0.98ミリリットル、つまり基準の約70%が油へ移ったと推定しています。

これは、オリーブ油から精油をすべて分離して直接量った値ではありません。ペースト状だった超臨界CO₂抽出物は重量で報告されており、その数値を精油の体積と並べて、どれが最も多く取れたかを単純に順位付けすることもできません。

著者らは、混ぜ方、原料の細かさ、温度などを検討すれば、油浸漬での回収を改善できる可能性を提案しています。ただし、提案した条件をすべて比較して最適化を終えた研究ではありません。

微生物への作用は、試験条件ごとに読む

微生物の試験では、細菌4種、酵母2種、カビ2種を培養した平板に、試料を含ませた紙の円盤を置きました。円盤の周りに微生物が増殖しない領域ができるか、その直径を測っています。

試した条件では、三つの抽出物が細菌と酵母に対して増殖を抑える領域を作り、超臨界CO₂抽出物で、その直径が大きい傾向でした。一方、2種のカビに対して領域ができたのは水蒸留の精油だけで、油浸漬と超臨界CO₂抽出物では確認されませんでした。

ただし、精油はオリーブ油で薄め、浸漬油はそのまま、超臨界CO₂抽出物は別の溶媒に溶かして使っています。量の表し方も揃っていません。成分だけでなく、溶媒や平板の中への広がり方も結果に関わるため、この直径の差を、そのまま抗菌力の順位や薬の効き目の倍率にはできません。

著者らは、少量成分や成分同士の組み合わせが、微生物ごとの差に関わる可能性を考えています。しかし、個々の成分を取り除くなどして原因を確かめたわけではありません。

まとめ

ローズマリーという植物名が共通していても、取り出し方が変わると、得られる成分の割合と製品の形が変わりました。油浸漬は脂に溶けやすい成分を取り込む方法として検討する価値があり、超臨界CO₂抽出も、蒸留とは違う組成を得る選択肢になるというのが、著者らの結論です。

原著は化粧品や感染症への応用にも期待を述べていますが、今回測ったのは成分と培養平板上の作用です。人での治療効果、皮膚への安全性、家庭での調製や長期保存の安全性は確認していません。応用を進めるには、目的に合う抽出条件を選び、製品の形と濃度を揃えて作用を検証することが必要です。

参考文献

Soltan, M. M., Mahfouz, S., Motawe, F. H., Karam, E. A., & El-Hagrassi, A.(2024). In sight on olive oil maceration and supercritical CO₂ in extracting rosemary essential oil. Scientific Reports, 14, 29730. DOI: 10.1038/s41598-024-79832-y/原著全文。

化学分析はエジプトNational Research Centre、公開費用はSTDFとEgyptian Knowledge Bankの支援を受けています。著者らは利益相反なしと申告しています。原著:© 2024 The Author(s)、CC BY 4.0。