retaW(リトゥ)|香りをつくりたいという会話から、暮らしのさまざまな場所へ

retaW liquid perfume ALLEN* 50mLの公式写真を、ブランドの白いタイル・金属・ガラスをもとにした創作背景に配置したブランドサムネイル。

香りのあるものをつくりたかった。

— 藤原ヒロシ

retaW(リトゥ)の棚では、ALLEN*という一つの名前が、香水にも、ボディシャンプーにも、布用スプレーにも並ぶ。香りを決め、その香りをどこで、どんな形で使うかを考える。2009年に東京で始まったこのレーベルは、洗う時間から服を着るとき、部屋で過ごすときまで、生活の中へ香りを広げてきた。

きっかけは、音楽やファッションの仕事をしてきた藤原ヒロシと、化粧品の知識を持つ村上大介の会話だった。気に入った香りを、日々使える形にすること。その考え方は、液体香水へ進む前の製品づくりにも、現在の簡潔なパッケージにも表れている。

基本情報

  • 設立:2009年、日本・東京
  • 創業のパートナー:藤原ヒロシ、村上大介
  • ブランド名:Waterを逆から綴ったretaW
  • 運営:株式会社blender。会社設立は2008年7月29日、代表取締役は村上大介
  • 主な分野:香水、ボディ・ヘアケア、布用の香り、ホームフレグランス、カータグ
  • 公式サイト:retaW

創業者とブランドの成り立ち

伊勢で出会ったパンクから、東京、ロンドンへ

藤原は伊勢で育った。13歳で出会ったパンクロックに強い影響を受け、その服を買うために東京や英国へ行きたいと思うようになる。18歳で東京へ移った背景には、友人や、ファッション業界で働く姉の友人とのつながりもあった。

ファッションか音楽で、何かをやりたかったですね。

— 藤原ヒロシ

1982年に訪れたロンドンでは、著名なデザイナーと学生が同じ場所で過ごす、年齢や立場を越えた関係に驚いたと振り返っている。藤原は、マルコム・マクラーレンにニューヨーク行きを勧められたことを回想している。現地でヒップホップに触れ、DJや服の仕事を経て、後に小規模なデザイン組織Fragmentを展開していく。

香りをつくりたい人と、化粧品を知る人

retaWの直接の出発点は、blender代表の村上との会話だった。藤原には香りのあるものをつくりたいという希望があり、村上には化粧品の知識があった。香りを扱うこと自体、当時の藤原には新しい分野だった。村上は、2017年にeye_Cが掲載したintelligence magazineの取材抜粋で、医師として紹介されている。

2009年に始まったブランドの最初の製品は、ボディシャンプーだった。特別な日のための香水だけでなく、身体を洗うという日常の行為から香りを届けていったのである。後には、持ち運べるソリッドパフュームや布用スプレー、液体の香水へと、使う場面が増えていった。

株式会社blenderの設立は2008年で、retaWの開始はその翌年である。retaWを運営する同社は、フレグランス製品の企画・開発・販売を現在の業務に掲げている。

アイデアを、毎日使える製品へ仕上げる

Masako Toshineは、2013年当時、マネージングディレクターを務めていた。以前は客室乗務員として働き、旅先で数多くの製品を見て、試してきた人だった。藤原が名前や香りづくりに関わる一方、それを使える製品に仕上げる仕事にも時間がかかった。

カータグには約3か月、ボディクリームには1年以上の開発期間をかけたという。いずれも2013年に紹介された当時の開発例である。紙に香りを持たせるものと、肌に使うものでは、形や使い心地を確かめる仕事も異なる。その製品をどう暮らしへ迎えるかについて、Toshineは服を選ぶ行為に重ねて語っている。

毎朝、服を選ぶように香りを選ぶべきです。

— Masako Toshine

ブランドのこだわり

音楽の名前と、香りのひねり

音楽とのつながりは、香りの名前にも残っている。NATURAL MYSTIC*はボブ・マーリーの曲、ALLEN*はリリー・アレンから来た名前である。

retaWでセールスとPRコミュニケーションを担うキーフ咲は、日常使いの中にも、わずかに独特なところを残す香りについて語っている。

ちょっとユニークな部分があるような香り。

— キーフ咲

ALLEN*のリキッドパフュームはユリを中心にしたフローラルである。キーフはALLEN*に込めたイメージを、山中にひっそり咲き、香りで存在を伝えるヤマユリに重ねている。ファッションやカルチャーが集まる原宿で、澄んだ空気の中、心地よい香りに触れられる店でありたい。その店舗の思いも、この花のイメージに託されている。

一方、NATURAL MYSTIC*はパチュリとバニラを軸に、ハーブやスパイスを重ねる。

容器で香りを決めつけない、ミニマルな包装

簡潔な文字と形でまとめられた容器も、その考え方を支えている。キーフは、容器だけで香りの印象を先に決めないようにする意図を語っている。

使ってはじめて良さを感じてもらいたい。

— キーフ咲

買ったらすぐに使えるよう、包装の取り出しやすさも考えられている。

一つの香りを、身体、服、空間へ

同じALLEN*でも、リキッドパフュームは肌にまとうオードパルファム、ボディシャンプーは身体と髪を洗う製品である。ファブリックスプレーは、服やソファカバー、カーテンなどの布に使うためのもの。香りの名前が共通していても、使う形と場所は分かれている。

公式サイトには、製品カテゴリーとは別に、香りの名前から選ぶ入口もある。まず気に入った香りを見つけ、その香りをシャワーの時間に置くのか、肌や服とともに持ち歩くのかを選ぶ。retaWの広がりは、香りそのものと、それを日々使うための形の両方にある。

参考文献