Crazy Jasmine(クレイジージャスミン)— 向田陽子の歩みと、咲きたての花を再現する香りづくり

白いジャスミンの花と葉を背景に、金色のキャップを持つCrazy Jasmine No.1 Jasmine Sambacのボトルとティールの箱を配したブランド紹介画像

1年中この香りを楽しみたい!

向田陽子 — 自宅で育てるジャスミンの香りについて

Crazy Jasmine(クレイジージャスミン)は、伊藤園でジャスミン茶のパッケージを手掛けてきた向田陽子が起案した、日本のフレグランスブランドである。出発点は、絵に描くために自宅で育てたジャスミンだった。花の形を知ろうとしたデザイナーは、咲きたての香りに惹かれ、その香りを季節の外へ持ち出そうと考える。

生花を分析して香りを再現すること、木のバングルから肌に纏う香水へ用途を変えること、香りの変化よりも花の印象を優先すること。その一つひとつに、ジャスミンを好きな人へ何を届けるかという判断がある。

基本情報

  • ブランドの事業始動:2023年
  • 発案者・ブランド創設者:向田陽子(むかいだ・ようこ/Yoko Mukaida)
  • 誕生の国:日本
  • 運営会社:株式会社Crazy Jasmine Tokyo(2026年5月1日設立、伊藤園の全額出資)
  • 公式サイト:Crazy Jasmine

創設者とブランドの成り立ち

茶のパッケージデザインから、ジャスミンの栽培へ

向田は2006年に伊藤園へ中途入社し、お茶の製品のデザインを担当した。「Relax JASMINE」のパッケージには17年間携わっている。花を描くにも、ジャスミン茶に使われるのはどのジャスミンなのか、まず確かめる必要があった。

撮影の準備をする寒い季節には生花がなく、造花やイラストで表現することもあった。もっと花を知りたいと、向田は苗を少しずつ集め、自宅で栽培を始める。花の形だけでなく、一重咲き、八重咲き、薔薇咲きによる香りの違いにも気づいていった。

ジャスミンサンバックは、ジャスミン茶の香り付けに使われる花である。日本で咲くのは暑い時期に限られるが、向田はその咲きたての香りを一年中楽しみたかった。現在は自宅で14種類を育てている。日々の栽培が、ブランドの題材を増やす場にもなっている。

バングルの売り場で見つけた、香水への需要

伊藤園の社内ベンチャー制度で、向田はジャスミン専門ショップの企画を提案した。2023年には、クレイジージャスミンが事業として動き始める。当初つくったのは、香りを染み込ませる木製バングルと、そこに付けるロールオン型のアロマオイルだった。身に着けたり外したりして、香りを使う時間を切り替える設計である。

ところが、店頭で売れていったのはロールオンの方だった。香りだけが欲しい、肌へ直接つけたいという声が届く。そこで向田は、化粧品として肌に使えるスプレー香水へ転換し、さらに事業を検証する道を選んだ。客が求めた「この香り」を使う方法から、製品の形を考え直したのである。

Crazy Jasmineという名は、ギフトショーへの出展でブース名が必要になった際につけたものだ。込めたのは、ジャスミンが好きでたまらない人の気持ち。「Crazy for Jasmine」という意味が、ブランドの名になった。

店頭での検証と、2026年の分社化

売り場での実証と並行して、2024年9月にはECサイトを開いた。一度香りを知った人が、次の一本を買える場をつくるためである。2025年5月には、店舗営業やEコマース営業を経験していた露内がチームに加わった。向田が本社の廊下で声をかけ、ポップアップの販売を手伝ってもらったことが出会いのきっかけだった。

事業実証の2年目には、東京だけでなく地方も含め、一年間に14回のポップアップを開催した。売り場は香りを伝える場であると同時に、地域ごとの反応を知り、買わなかった理由も聞く場になった。向田はロゴやパッケージに加え、香りを体験しやすい什器のデザインにも取り組んでいる。

イメージしたことを絵に描いて、使う色のトーンを揃えることも大切にしました

向田陽子 — ポップアップの空間づくりについて

約3年間の実証を経て、2026年5月1日、伊藤園の全額出資で株式会社Crazy Jasmine Tokyoを設立した。向田は代表取締役社長となり、飲料会社の中で始めた挑戦を、新しい事業会社として育てる段階へ進んだ。

茶と香水には、香りを楽しむという接点もある。向田は、花の香りを知ることが、お茶を試すきっかけにもなってほしいと考えている。茶のパッケージから生まれた仕事が、香りを通じて再び茶へつながっていく。

ブランドのこだわり

咲きたての香りを残す、シングルノートの選択

クレイジージャスミンは、生花の香りを分析し、その印象を香水へ再現する。目標に据えたのは、向田が育てて知った、咲きたての花の香りである。

香水化の過程では、時間とともに香りを変える構成も試した。しかし、ムスクなどを加えると、向田が届けたかった花の印象から離れていく。そこで、評判のよかったロールオンの香りを優先し、持続時間を延ばすより、最初の状態で販売して客の声を聞くことを選んだ。

「No.1 Jasmine Sambac(ジャスミン サンバック)」は、ベースノート(香りの後半を支える部分)を持たないシングルノートとしてつくられている。シングルノートとは、ここではジャスミンという一つの香りの主題を通す設計である。つけた瞬間の花の印象から、やさしく消えていくまでを、ブランドは一つの体験として提案する。

花の咲き方と種類の違いを、香りに映す

向田が栽培で知ったのは、ジャスミンを一つの香りで括り切れないことだった。茶に使うサンバックを題材にしたNo.1に対して、「No.2 Jasmine Green(ジャスミン グリーン)」では薔薇のように咲くサンバックを取り上げる。生花を分析し、みずみずしいグリーンの印象を再現した。

一方、「No.5 Jasmine Jasmine(ジャスミン ジャスミン)」は、No.1と「No.3 Royal Jasmine(ロイヤル ジャスミン)」の組み合わせから生まれた。ロイヤルジャスミンの、百合を思わせる甘さやウッディな印象を、サンバックと重ねる。異なる花の姿を見分け、香りでもその違いや組み合わせを楽しむ方向へ、題材を深めている。

香水のほか、アロマオイルやホームフレグランス、ハンドクリームにもジャスミンの香りを展開する。肌に纏うだけでなく、部屋や手元へも花の印象を置く。咲く季節や場所に限られず、暮らしの中でジャスミンと接するためのものづくりである。

参考文献

  1. 向田陽子インタビュー「ひとりの“ジャスミン狂”の熱意が生んだ香りのブランド『Crazy Jasmine』」(前篇・全3ページ)— CREA、2026年7月21日
  2. ブランドストーリーと会社概要 — Crazy Jasmine公式「About us」
  3. 伊藤園、社内ベンチャー発のフレグランスブランド「Crazy Jasmine」を新会社化 — 伊藤園、2026年5月1日
  4. 向田・露内への当事者取材「社内ベンチャー第1号が分社化。香水ブランド『Crazy Jasmine』が花開くまでの3年間」— ARCH Toranomon Hills、2026年5月27日
  5. Japan perfume industry taps vending machines, consultations to win buyers — Kyodo News International/MarketScreener、2026年6月19日
  6. 向田陽子インタビュー後篇 — シングルノートを選んだ理由、CREA、2026年7月21日
  7. No.1 Jasmine Sambac オードパルファム — Crazy Jasmine公式
  8. No.2 Jasmine Green オードパルファム — Crazy Jasmine公式
  9. No.5 Jasmine Jasmine オードパルファム — Crazy Jasmine公式
  10. No.3 Royal Jasmine オードパルファム — Crazy Jasmine公式