皮膚に試験物質を貼るパッチテストで、香料成分へのアレルギー反応が出た。その場合、日常の製品に近い、より低い濃度でも皮膚炎が起きるのでしょうか。検査で反応できることと、ある製品の使い方で実際に症状が起きることは、関連していても同じ問いではありません。
Thanisorn Sukakulらが2024年に報告した研究は、リナロールの酸化によって生じる「リナロールヒドロペルオキシド」を対象に、この関係を調べました。リナロールは香料に使われる成分ですが、今回測ったのは元のリナロール一般の作用ではなく、酸化生成物への皮膚反応です。
パッチテストと、繰り返す塗布を比べる
スウェーデンの皮膚科で48人を登録し、最初の判定日に来られなかった一人を除く47人が研究を完了しました。過去または今回のパッチテストで、リナロールヒドロペルオキシドに陽性だった31人と、陰性の対照16人を比べています。対照も皮膚炎の診療を受けた患者で、健康な一般人から集めた群ではありません。
試験には、この酸化生成物を44、140、440 ppm含む三種類のクリームと、加えていない対照クリームを使いました。ppmは濃度の単位で、440 ppmは0.044%に相当します。著者らは、製品の分析や症例報告に見られる範囲を参考に、この濃度を選びました。すべての市販品の濃度を代表するわけではありません。
参加者は、見た目に皮疹のない前腕の決められた部位へ、各クリームを一日二回、28日間塗りました。貼って覆うパッチテストと違い、塗った場所を開放したまま繰り返す試験で、ROATと呼ばれます。クリームは記号で区別し、参加者と評価者には中身を伏せました。皮膚科医が数日ごとに反応を判定しています。
同時に、背中では複数の濃度を使ったパッチテストも行いました。貼付は48時間で、その後に判定します。濃度、クリームやワセリンという基剤、覆うかどうか、部位や曝露時間が違うため、二つの検査を単純に同じ刺激として比べることはできません。
28日目に陽性となったのは一人
反復塗布では、31人の陽性群のうち、一人が28日目に最高濃度の440 ppmで陽性となりました。対照16人では陽性者はいませんでした。ただし、人数が少なく、群間の陽性割合に統計的な有意差はありませんでした。
21日目には、最高濃度の部位に小さな盛り上がりや赤みが出た人が二人いましたが、その時点では研究で決めた陽性の基準に達していませんでした。そのうち一人で反応が進み、28日目に陽性となったのです。陽性と判定されなかったことと、皮膚に一切変化がなかったことは区別する必要があります。
著者らは、今回の濃度のクリームを、明らかな皮疹のない皮膚へ四週間使う条件では、陽性の反応はまれだったと結論づけています。この物質にアレルギー反応を起こしうる状態になっていることを「感作」と呼びます。今回も一人には反応が起きており、感作されている人なら誰でも使えるとする結果ではありません。
再検査で陰性でも、アレルギーがなくなったとは言えない
パッチテストの再検査にも、重要な結果がありました。過去に陽性だった人のうち13人は、今回は陽性になりませんでした。この13人も、既往があるため陽性群に含めています。反対に、過去は陰性だった一人が今回陽性になり、群を移りました。
過去の反応が弱い陽性だった20人では12人が再検査で陰性となり、強い、または非常に強い陽性だった10人では一人でした。この違いは統計的に有意でした。弱い反応ほど再現しにくかったのです。
著者らは、それでも再検査の陰性だけで、接触アレルギーがないと結論してはいけないと指摘しています。皮膚の反応の出やすさや、それまでの曝露などが変わる可能性があるためです。今回のデータは、検査の陽性・陰性を一回の固定した性質として扱う難しさも示しました。
濃度だけでなく、皮膚の状態も課題に
原著は、以前の反復塗布研究では、より高い濃度や多い塗布量が使われていたことに注目しています。今回反応が少なかったことを、過去の研究が間違っていた証拠とするのではなく、皮膚へ届く量の違いを考慮すべきだと論じています。基剤や対象者、塗る期間が異なる研究同士でも、陽性者の割合だけを直接比べることはできません。
また、今回陽性となった人には、手や手首の皮膚炎の既往がありました。著者らは、見た目には問題のない前腕にも、ごく小さな炎症や皮膚のバリアの弱まりがあった可能性を挙げています。成分が入りやすくなり、反応につながったのかもしれませんが、これは実測して確かめた機序ではありません。
この試験では、荒れた皮膚に塗る条件を検証していません。また、指示どおりに塗布したかを客観的に測る仕組みがなかったことを、著者らは限界として挙げています。製品の種類を変えた場合や、長期間の使用、吸入による症状まで、この結果で判断することはできません。
まとめ
リナロールヒドロペルオキシドの検査で陽性の既往があっても、今回の低濃度クリームを、明らかな皮疹のない前腕へ繰り返し塗る条件では、多くの人が陽性反応を示しませんでした。著者らが問い直したのは、パッチテストで捉えた反応性が、どのような日常の曝露で皮膚炎につながるかという、診断の実生活上の意味です。
そのためには、検査の反応の強さだけでなく、製品に含まれる酸化生成物の量、基剤、塗る量、皮膚の状態をつなげて考える必要があります。検査結果を無効としたり、香料製品全般を安全としたりする研究ではありません。既にアレルギーを指摘されている場合の製品使用や再検査は、この結果だけで自己判断せず、診療で相談することが大切です。
研究はスウェーデンの皮膚科学研究を支援するHudFondenの助成を受けています。BruzeはExpert Panel for Fragrance Safetyの委員、Svedmanは国際香粧品香料協会(IFRA)が支援するIDEAプロジェクトへの参加を開示しています。
参考文献
Sukakul, T., Bruze, M., Mowitz, M., Kiuru, A., & Svedman, C. (2024). Allergic Contact Dermatitis to Linalool Hydroperoxides: Pitfalls in the Diagnostic Process—Findings from a Repeated Open Application Test Study. Dermatitis, 35(4), 373–379. DOI: 10.1089/derm.2023.0286/原著全文。© 2024 American Contact Dermatitis Society. All Rights Reserved.


