Bamford(バンフォード)— 有機農業から始まった、庭と家族の記憶を描く香りづくり

英国の野の花の庭を背景に、バンフォードのワイルドメドウのボトルを配置したブランド記事サムネイル ブランド創業者

バンフォードは、デイルスフォードから自然に発展したものでした。

キャロル・バンフォード — ブランドの誕生について、2022年

Bamford(バンフォード)は、2004年にイギリスで生まれたライフスタイルとウェルネスのブランドである。ボディケアや香水、キャンドル、衣服、スパへと広がる活動の出発点には、創設者Carole Bamford(キャロル・バンフォード)が、家族のために食べるものと農業を見直した経験がある。

食べ物の産地や育て方に目を向ける。その関心を、肌に触れるものや暮らしの道具にも広げる。香りづくりでは、家族と歩いた森や庭、自宅の温室で育てる植物の記憶が、具体的な作品へと移されていく。

基本情報

  • 設立年:2004年
  • 創設者:Carole Bamford(キャロル・バンフォード)
  • 誕生の国:イギリス
  • 公式サイト:Bamford

創設者とブランドの成り立ち

家族の食と、有機農業への転換

キャロルが農業のあり方を考え始めたきっかけは、まだ幼い娘を乳母車に乗せて、庭を歩いていた日の出来事だった。植えたばかりのバラがしおれていた。彼女は、隣の農場で散布された除草剤が原因だと考え、何を使って作物を育てているのかに関心を持つようになる。

その後、農業の展示会で有機農業のテントに入り、2時間ほど話を聞いた。帰るころには、家族の農場も変えなければならないと考えていた。夫アンソニーに伝えた言葉は、端的だった。

私たちは、農業のやり方を変える必要がある。

キャロル・バンフォード — 有機農業への転換を決めたときを振り返って、2020年

農場の管理者は初め、転換に懐疑的だった。それでも、約30エーカーの土地から試すことになった。その区画を軌道に乗せるまでに3年、農場全体が有機農業へ移るまでには7年を要した。食や農業に関わるデイルスフォード・オーガニック(Daylesford Organic)の活動は、こうした時間をかけた実践から育っていった。

2004年、食の考え方をボディケアへ広げる

食べるものを意識して選ぶようになると、キャロルは生活のほかの部分にも同じ視点を向けた。肌につけるものも、自分で納得して選びたい。その思いから2004年に始めたのが、バンフォードである。ボディケアから衣服やスキンケアへ、ブランドは少しずつ領域を広げていった。

初期から大切にしていた香りが、ゼラニウムである。その記憶は、ブランドを始めるよりずっと前にさかのぼる。少女時代のキャロルは、Floris(フローリス)のローズゼラニウムの入浴オイルを使っていた。浴槽へ少し落とすと、香りが家の中へ広がった。のちに園芸を始めると、ゼラニウムを買い、挿し木で増やしていく。庭で育てる植物は、幼いころの香りの記憶ともつながっていた。

一方、キャロルは20代からインドを訪れ、その土地との関わりを深めてきた。2019年にはジャイプールにニラ・ハウス(Nila House)を開き、天然染色や手織りの技術を支える場をつくっている。バンフォードの衣服づくりでも、自然の繊維と伝統的な手仕事を重んじる。植物との関係を考えることと、それを形にする人の技術を支えることが、彼女の活動の両方にある。

2019年、家族の記憶から最初のオードパルファムをつくる

2019年6月、バンフォードは初めてのオードパルファム、Gray(グレイ)とCamille(カミーユ)を発表した。オードパルファムは、肌にまとう香水の一つの形態である。キャロルはその開発に深く関わり、家族と過ごした時間を着想の中心に置いた。

自然に着想を得た香りで、家族と過ごした時間の記憶を呼び起こします。

キャロル・バンフォード — グレイとカミーユについて、2019年

グレイは、キャロル自身と家族に受け継がれているミドルネームである。スタッフォードシャーの自宅近くの森を、家族で長く歩いた記憶が背景にある。サンダルウッド、ベチバー、アンバーの土を感じさせる香りで、苔や木々に覆われた林床を思い起こさせる。

カミーユは、娘アリスのミドルネームから取られた。アリスが生まれたのは春。出産後の暖かな日に娘と歩いた、イギリスの庭の花やハーブが題材となった。ジャスミンとローズに、オレンジブロッサムをほのかに重ねる。二つの名前は、森と庭という風景だけでなく、その場所で一緒に過ごした人も作品に残している。

ブランドのこだわり

ゼラニウムの葉の違いを描くキャンドルづくり

2025年、バンフォードはゼラニウムの香りの20周年を記念し、グラスハウス・コレクション(Glasshouse Collection)を発表した。キャロルの庭の温室には、110を超える品種のゼラニウムやペラルゴニウムがある。その葉から、バラや柑橘、ペパーミントなどの香りが立ち上がり、品種によって表情は異なる。

香りは、この植物の葉から生まれます。

キャロル・バンフォード — 温室で育てるペラルゴニウムについて、2025年

葉を指でこすると、その品種の香りが立ち上がる。コレクションの4つのキャンドルは、それぞれ彼女が育てる異なる品種を題材にしている。そのうちグラベオレンス(Graveolens)を手がけたのが、Lyn Harris(リン・ハリス)である。狙ったのは、温室へ足を踏み入れたときに吸い込む、最初のひと息だった。

レモンの香りが強いメイベル・グレイ(Mabel Grey)や、柔らかな葉からペパーミントが香るトメントスム(Tomentosum)など、同じ温室にも異なる表情がある。ゼラニウムという一つの名前の内側にある違いを、品種ごとに香りへ移す。それがこのシリーズの面白さである。

家の裏の野の花を題材にしたワイルドメドウ

ワイルドメドウ(Wild Meadow)の着想は、キャロルの家の裏に広がる野の花々である。彼女はその景色を、花が織りなすタペストリーにたとえている。現在の作品では、甘いハニーサックルと芳香のあるローズマリーに、柑橘や温かなベチバーを重ね、イギリスの春を描く。

森を歩いた時間、娘が生まれた春、温室の葉、家の裏の野の花。バンフォードが香りにする自然には、キャロルが実際に暮らし、育て、家族と過ごしてきた場所がある。植物の名前だけでなく、その植物とどのように関わってきたかを知ると、作品の題材がより具体的に見えてくる。

香水の原料と、ボトル・包装への配慮

原料の選び方にも、食から始まった関心が表れている。2019年のグレイとカミーユは、ソイル・アソシエーションという認証団体の認証を受けたオーガニック原料を80%使用していた。現行のワイルドメドウでは、80%のオーガニックアルコールを使用している。

2019年の2作品には、オーガニックインクで文字を記したガラス瓶と、持続可能な調達によるマンゴー材から削り出し、手で彩色したキャップを採用した。箱にはFSC認証を受けた紙を使っている。香りの中身だけでなく、容器に使う素材や手仕事にも目を向けていたのである。

現在のワイルドメドウは、深いオリーブグリーンのガラスに、つやを抑えた黒い円筒形のキャップを合わせる。グラスハウスのキャンドルは、英国でつくり、綿の芯と、使い終わった後も再利用できる手づくりの陶器の容器を用いる。香水とキャンドルで異なる素材を選びながら、使うものの形や、その後の用途まで考える姿勢が表れている。

ちなみに…

2025年の春、キャロルの化粧台には、旅先の浜辺で拾ったハート形の小石が置かれていた。スズランのキャンドルとワイルドメドウも、そこにある。香りと、休日に見つけた小さな思い出が、同じ場所に並んでいたのである。

参考文献

  1. SheerLuxe — キャロル・バンフォード本人が語る事業の歩み(2022年4月11日) — https://sheerluxe.com/life/careers/my-business-journey-carole-bamford
  2. Bamford公式 — 2004年の創設とブランドの事業 — https://www.bamford.com/us/about-us
  3. Carole Bamford — 最初のオードパルファム、グレイとカミーユの制作(2019年6月12日) — https://www.carolebamford.com/scents-from-nature-bamfords-new-eau-de-parfums/
  4. Carole Bamford — ゼラニウムの香りの20周年とグラスハウス・コレクション(2025年5月19日) — https://www.carolebamford.com/20-years-of-geranium-introducing-bamfords-glasshouse-collection/
  5. Bamford公式 — 創設者キャロル・バンフォードと、自然・手仕事への考え方 — https://www.bamford.com/our-founder
  6. Misan Harriman/Brummell — キャロル・バンフォード本人へのインタビュー(2020年2月27日) — https://www.brummellmagazine.co.uk/discover/in-conversation-with-carole-bamford/
  7. Cally Squires/SPHERE — キャロル・バンフォードの歩みと、フローリスの香りの記憶(2024年10月11日) — https://www.spherelife.com/interviews/lady-bamford-daylesford-organic
  8. Carole Bamford — 春の日常、ワイルドメドウの着想と化粧台の小話(2025年4月28日) — https://www.carolebamford.com/ask-me-anything-spring-2025/
  9. Bamford公式 — 現行ワイルドメドウの香り・素材・ボトル — https://www.bamford.com/wild-meadow-eau-de-parfum-50ml.html