TOCCA|ドレスの世界観から、女性像と旅を描く香りへ

TOCCA。公式写真のEau de Parfum Florence 50mLを、ブランドの刺繍とアイボリー・淡いピンク・古金色の美意識を取り入れた創作室内に配置した日本語サムネイル。

香りは、自分のための儀式です。

— ゴードン・フィンケルステイン

刺繍を施したドレスから、溝を刻んだガラスの香水瓶へ。TOCCA(トッカ)の歩みには、身に着けるものの美しさを、触れる質感や日々の暮らしへ広げてきた流れがある。1994年にニューヨークで始まった服のブランドは、1997年にビューティーへ進み、現在は女性の名前を持つ香水や、旅先を描くホームフレグランスを展開している。

その出発点をつくったのは、スタイリストのマリー=アン・オーデヤンス、写真家のエドアルド・マンテッリ、経営と製品づくりを担うゴードン・フィンケルステインだった。服、写真、事業という異なる仕事が出会い、香りをまとう時間や、部屋で過ごす時間へと表現が広がっていく。

基本情報

  • 創業:1994年、米国・ニューヨーク
  • 創業にかかわった人々:Marie-Anne Oudejans(マリー=アン・オーデヤンス)、Edoardo Mantelli(エドアルド・マンテッリ)、Gordon Finkelstein(ゴードン・フィンケルステイン)
  • 名前の意味:イタリア語で「触れる」。刺繍や織物の質感と結びつく名前
  • TOCCA BEAUTYの開始:1997年
  • オードパルファムへの展開:2006年
  • 主な分野:オードパルファム、香り付きボディ製品、キャンドル、リードディフューザー
  • 公式サイト:TOCCA Beauty

創業者とブランドの成り立ち

パリのスタイリストが思い描いた、服の向こうの暮らし

オランダ出身のオーデヤンスは、パリでファッションのアシスタントやスタイリストとして経験を積んだ。後に自身のブランドを設立するジェーン・メイルは、モデルとして暮らしていたパリで彼女と出会い、約一年アシスタントを務めている。

メイルが記憶していたのは、専門的な服飾訓練を受けたデザイナーというより、スタイリングの経験をもとに、ブランドを取り巻く生活をはっきりと思い描く人だった。

ブランドを取り巻く暮らしについて、とても、とても明確なビジョンがありました。

— ジェーン・メイル

転機となったのは、1994年、カリブ海のセントルシア島で開かれた新年のパーティーだった。オーデヤンスが持参した自作の4着のリゾートドレスが、イタリア人の写真家で実業家でもあるマンテッリらの目に留まったのである。やがてニューヨークのガーメント・ディストリクトの小さなアパートの一室から、TOCCAが始まった。

美しいものを、手の届く価格でつくるために

事業面で加わったフィンケルステインは、カナダ・モントリオールで父の貿易会社の仕事を経験した人物である。1990年にニューヨーク大学でMBAを学ぶために移り住み、TOCCAを始めたときも学生だった。製品と価格の関係について、彼は次のような言葉を残している。

美しくデザインされ、手の届く価格の製品。

— ゴードン・フィンケルステイン

刺繍や豊かな織物を使ったドレスは、南欧のロマンティックな雰囲気とリゾートの軽やかさを、ニューヨークの服へ移したものだった。「触れる」を意味するTOCCAという名前にも、その手触りへの関心が表れている。

オーデヤンスの仕事は服だけにとどまらない。店舗の構想に加え、ニューヨークのアーモリーで行われたビューティー立ち上げの仮面舞踏会の演出も手がけた。衣服と、その周囲にある空間や体験を一緒に考えていたのである。

1997年のビューティーから、キャンドルと香水の事業へ

TOCCA BEAUTYは1997年、固形香水やデリケートな衣類のための洗剤といった製品から始まった。旅をする人の身の回りに、服とともに持っていける香りを加える展開である。

フィンケルステインは事業運営から製品の開発・生産へも仕事を広げた。人々の紹介を通じてジボダンとの協働が始まり、青い箱のキャンドルの成功がビューティー事業の手応えになった。2006年にはオードパルファムへ展開し、その後、美容事業が伸びるなかで、彼は共同経営者の持分を買い取った。

創業者たちの仕事も、それぞれに変化していく。オーデヤンスは1998年にTOCCAを離れ、後にインドでインテリアの仕事へ進んだ。また、オンワード樫山が2010年から取得した日本の商標権と事業移管では、TOCCA BEAUTYは対象から除かれている。

ブランドのこだわり

女性の名前を、香りの人物像にする

現在のオードパルファムは、神話的な存在から現代のミューズまで、さまざまな女性像を描く。名前は香料をそのまま示すものではなく、香りが表す性格や振る舞いへの入口になっている。

Florence(フローレンス)が描くのは、パリの女性像である。ベルガモットとペアーの明るさに、ガーデニアを中心とする花々を重ねている。一方、Laila(ライラ)は、イタリア語のpiacere、喜びや楽しみを題材とし、柑橘からバニラ、柔らかな花とアンバーへ進む香りである。

どちらも女性名の香水であるが、柑橘やペアーと白い花を重ねる表現と、バニラやアンバーを使う表現では焦点が異なる。人物像を知ったうえで、その性格をどの素材の組み合わせで描いているかを見ていくと、名前の違いが香りの違いにつながる。

ラベルの紙からガラスまで、「触れる」をそろえる

TOCCAの香水瓶は、溝を刻んだイタリア製のガラスと、手仕上げのキャップを組み合わせている。その触覚への関心は、小さなラベルにも及ぶ。

ラベル制作会社Multi-Color Corporationが担ったラベル制作は、ガラスやプラスチックなど異なる容器でも、TOCCAが求める共通の紙の質感と色を保つための仕事だった。同社は使用環境に耐える紙を試験し、色のばらつきを測定してそろえたとしている。

ブランドを世界へ広げるうえで、一貫した高品質の印刷は欠かせません。

— ゴードン・フィンケルステイン

香水、クリーム、ホームフレグランスは、形も使う場所も異なる。それらを同じブランドとして感じられるようにする仕事が、紙の凹凸や印刷の色にもある。服の刺繍に始まった手触りへの関心が、容器を手に取る体験へ続いているのである。

肌と部屋へ、香りを楽しむ時間を広げる

香水の周囲には、同じ香りを別の形で楽しむ製品がある。Olio Sublime ProfumatoのFlorenceは、ホホバやアルガンなどのオイルを用いたドライボディオイル。ブランドは、シャワー後などに単独で使うことや、オードパルファムと重ねることを提案している。

フィンケルステインは、オードパルファム、ボディオイル、ホームフレグランスについて、次のように表現している。

香りを楽しむ習慣の、さまざまな場面に応える。

— ゴードン・フィンケルステイン

Classicaのキャンドルとリードディフューザーは、世界の土地を題材にしたコレクションである。女性像を肌にまとう香水から、部屋に旅先の気配を広げる香りへ。服から出発したTOCCAの世界は、身に着けるものと、日々過ごす空間の両方に続いている。

参考文献