MICHAEL KORS(マイケル・コース)|暮らしのための服から、日常にまとう香りへ

MICHAEL KORS Pour Femmeとキャメル色の布・革のノートによるブランドイメージ

香水は、私がつくるもののなかで、おそらく最も親密なものだ。私の指紋のようなものだ。

マイケル・コース

MICHAEL KORS(マイケル コース)の出発点は、服を着る人の暮らしを見ることだった。華やかさと気楽さ、旅先への憧れと毎日の使いやすさ。異なる要素を同じ装いに求めてきたデザイナーの考え方は、香水を日常へ取り入れる仕事にもつながっている。

基本情報

  • 創設者:マイケル・コース(Michael Kors)
  • ブランド創設:1981年、米国
  • 香水の出発点:2000年にMichaelを発売
  • 香水のライセンシー:EuroItalia
  • 公式サイト:Michael Kors

創設者とブランドの成り立ち

母のジーンズと、祖母の旅支度

コースはニューヨーク近郊、ロングアイランドのメリックで育った。五歳のとき、母ジョーンの再婚用のドレスを見て、リボンを取るよう提案した。母はその意見を受け入れたという。幼いコースは、着る人に何が似合うかを考え、装飾を減らす判断をしていた。

母は、手間をかけない人だった。

マイケル・コース

母は、ジーンズを好み、旅の荷物も少なかった。一方、高校の校長をしていた祖母は、靴や揃いのジュエリーをたくさん持って旅へ出た。祖父母がヨーロッパ、メキシコ、モロッコから持ち帰る贈り物と話は、少年に遠い世界を知らせた。

身近な女性たちの華やかな装いと、ロングアイランドのビーチの気楽さ。その両方が、本人の語る育ちの風景にある。着飾ることと動きやすいことを、同じ暮らしの中で見ていたのである。

売場とウィンドーから、自分のコレクションへ

ニューヨークのファッション工科大学(FIT)に通っていた頃、57丁目のブティック、ロザーズで販売のアルバイトを始めた。やがて学校を離れ、店の運営、ウィンドーの演出、そこで売る服のデザインまで担うようになる。

窓の服に目を留めたのが、バーグドルフ・グッドマンのファッションディレクター、ドーン・メロだった。バイヤーに見せるラインを持ってくるよう誘われたコースには、その時点ではまだコレクションがなかった。急いで用意した服が、自分の名前で仕事を広げる入口になった。

バーグドルフ・グッドマンが、私の最初の取引先になった。

マイケル・コース

1981年に自身のラインを正式に立ち上げ、1984年には初のランウェイショーを行った。服を描くだけでなく、売場で見せ、人に渡す仕事を経験していたことが、この出発点の特徴である。コースがアメリカン・スポーツウェアの核に挙げるのも、上質さ、着回しやすさ、気負わず着られることだ。

2000年の香水から、2013年の三つのスタイルへ

最初の香水Michaelが登場したのは2000年。服飾ブランドの創設から約二十年後であり、バッグや靴、時計などへと広がる生活の世界に、香りが加わった。

2013年のSporty Sexy Glamは、コースが服を表す三つの形容から生まれた。共同開発者で、当時エスティ ローダーの香水開発を担ったTrudi Loren(トゥルーディ・ローレン)は、原料名を伏せてコースの直感的な反応を確かめたと説明している。予想外だったパチョリへの好反応も踏まえ、マンダリン、ジャスミン、サンダルウッド、パチョリなどを三作品の共通素材にした。異なる装いを、共通の素材でつなぐという制作判断が見える。

専門企業との新しい協働

香水事業は、専門企業とのライセンス契約を通じて展開されている。2021年には、EuroItaliaを男性用・女性用香水の世界独占ライセンシーとする15年間の契約が発表された。このライセンス関係は、2026年時点でも続いている。

EuroItaliaによれば協業は2022年に始まり、Gorgeous!、Wonderlust、Sexy Amberという既存ラインを扱った後、2024年にPour FemmeとPour Hommeを発売した。服飾ブランドの創業、香水の開始、新しい協業の作品を分けて見ると、同じ名前のもとで仕事がどう広がったかが分かる。

ブランドのこだわり

特別な装いと、日々頼れる香り

2011年にGoldを語ったコースは、舞踏会のドレスを揃える前に頼れる黒いドレスが必要だと、服にたとえて香水を説明した。

毎日使える香水が必要なんです。

マイケル・コース

本人が求めたのは、日常のグラマーだった。

チェーンリンクを、瓶と香りへつなぐ

2024年のPour Femme(プールフェム)とPour Homme(プールオム)では、ジュエリーやバッグ、服にも使ってきたチェーンリンクが瓶の意匠になった。コースが惹かれてきたのは、金属の輝きと、グラフィックとしての強い形だった。

力強さとセクシーさがテーマです。

マイケル・コース

発表時にこう語ったデザイナーは、瓶だけでなく、ジャスミン、パチョリ、ベルガモット、セージといった香りのノートにも、モダンな魅力と力強さを求めた。服飾のモチーフと香りを、同じ美意識のもとに置いたペアである。

プールフェムとプールオム──共通の意匠、異なる香りの軸

Pour Femme Eau de Parfumがマンダリンとジャスミン、ローズにバニラやムスク、パチョリを重ねる一方、Pour Homme Eau de Parfumはベルガモット、海を思わせるアコード、クラリセージをベチバーやグレーアンバーで支える。同じチェーンリンクの意匠でも、花と柑橘、ハーブと海という異なる軸からグラマーを捉えられる。

同じ名前から、別の風景と組み合わせへ

Pour Femme AbsoluとPour Homme Absoluも展開され、フェミニンのAbsoluは洋梨、ダマスクローズ、バニラへ軸を移す。現在のラインにはViolet Sunset、Pink Horizon、Green Infinity、Blue Duskが並び、夜明けを題材にしたPink Horizonなど、色や風景から作品の表情を広げている。

新しいペアと並んで、Gorgeous!、Wonderlust、Sexy Amberも続いている。白い花々にタバコのアコードと木を重ねるGorgeous!、旅を題材に花とスパイスを組み合わせるWonderlust。それぞれに異なる着想があり、身近な毎日にどんな華やかさを加えたいかという視点から、作品の違いをたどることができる。

参考文献