Aíam(アイアム)— MANAMIと藤井亮輔の歩み、スキンケアから始まった香りづくり

ミント色と水面の光を背景に、シルバーの球体キャップを持つAíam チャプター65のボトルを配したブランド紹介画像 ブランド創業者

私はお客さまの人生の中で小さな幸せを与えられる存在で居たいと思っています。

MANAMI(梯真奈美)

Aíam(アイアム)は、藤井亮輔とクリエイティブディレクターのMANAMI(梯真奈美)が2020年に立ち上げた、日本のビューティーブランドである。丸いシルバーのキャップと、数字を添えた「chapter」の香水で知られるが、最初に送り出したのはスキンケアだった。

「私は、“わたし”」。この言葉の背景には、SNSを通じて支持を得る一方、他人との比較も身近に感じてきたMANAMIの経験がある。肌を手入れする時間から、香りをまとう時間へ。アイアムの歩みをたどると、自分のための小さな喜びを、暮らしの中にどう置くかという問いが見えてくる。

基本情報

  • 設立年:2020年(株式会社Aiam設立:9月2日/ブランド始動:10月14日)
  • 創設者:藤井亮輔、MANAMI(梯真奈美)
  • 創設時の役割:藤井亮輔は代表取締役社長兼CEO、MANAMIはブランドのクリエイティブディレクションを担当
  • 香水の展開開始:2021年
  • 誕生の国:日本
  • 公式サイト:Aíam

創設者とブランドの成り立ち

販売員時代に身につけた、一人ひとりを見る仕事

MANAMIは1990年、山口県に生まれた。高校卒業後、広島でアパレルの販売員として働き、のちに上京してリエンダの店頭に立つ。そこで学んだのは、服だけでなく、それを選ぶ人に目を向けることだった。

売り上げより、お客さまを喜ばせよう

MANAMI — 池袋店の店長から教わった言葉

接客後には、客の特徴や会話、手持ちの服、趣味をノートに記録し、一日の終わりに読み返した。買ったものの記録を越えて、その人の生活を覚えるための習慣である。

2016年には藤井とエイミーイストワールを立ち上げ、クリエイティブディレクターとなった。販売員から、ブランドの世界観と商品をつくる側へ。その後、アイアムを含む複数のブランドで企画や修正に携わるようになっても、客との関係を仕事の中心に置いている。

SNSでの比較を問い直し、2020年にスキンケアを始める

アイアムの出発点は、30代を目前にしたMANAMIが抱いた「本質的な美とは何か」という問いだった。SNSは、多くの人とつながり、表現を届ける場所である。同時に、誰かと自分を比べ、誰かに比べられる場所でもある。発信する本人としてその両面を経験した彼女は、自分で自分を認めることを、新しいブランドの核に据えた。

藤井は2020年9月2日に株式会社Aiamを設立し、代表取締役社長兼CEOを務める。MANAMIは全体のディレクションを担い、初期のスキンケア5品の開発には2年半をかけた。同年10月14日、ブースターローションや美容クリームを主軸に、フィーリー(Feery)シリーズの先行販売を始める。

最初から香水専門のブランドとして始まったわけではない。自分を認めるという考えを、まず毎日の肌の手入れに落とし込んだのである。現在の香水を知るうえでも、この順序は大切だ。香りは、その後に暮らしへ加わった表現なのである。

2021年の初店舗で、香水と暮らしの香りへ広げる

2021年9月9日、ルミネエスト新宿に1号店が開いた。既存のスキンケアに、フレグランス、バス・ボディケア、キャンドル、ディフューザーなど約50SKU、すなわち種類や仕様を区別した商品単位が新たに加わる。ここで登場した新商品群が、チャプター(chapter)シリーズだった。

香りを肌にまとうだけでなく、入浴やボディケア、部屋で過ごす時間にも取り入れる。店舗の内装も、光、石、水、地層など自然から着想を得て、優しい色調と温かみのある空間を選んだ。商品と、それを体験する場所をともにつくる展開だった。

オンラインから始まったブランドは、香りに直接触れられる店舗を広げていく。2023年には、新宿、名古屋、大阪、池袋の直営4店舗の合計売上が前年比3.5倍で推移していた。2025年3月には伊勢丹新宿店のフレグランスコーナーにも出店し、香りを中心にした活動が広がった。

2025年、上海に初の海外店舗を開く

早ければ今年から海外にも進出する

藤井亮輔 — 2025年3月

その言葉は、同年11月9日の上海出店へとつながる。静安嘉里中心(ジンアン・ケリーセンター)に、初の海外直営店が開いた。ミントカラーにシルバーを合わせた空間は、上海の英語メディアCity News Serviceでも、落ち着いた簡潔なデザインとして紹介された。

天井には、チャプターのキャップを思わせる球体が配されている。日本で生まれた香りを海外へ届けるときにも、ボトルの小さな形を店の空間へ拡大している。商品と場所に同じ視覚的な手がかりを残す、アイアムらしい選択である。

ブランドのこだわり

人生の一場面を刻む、chapterという名前

chapterは、本や映画で使う「章」を意味する。アイアムは、人生のワンシーンを切り取るように、その人の一瞬一瞬を香りとともに刻むという意味を込め、香りを数字で表している。

香りの名前は「チャプター65」「チャプター70」といった共通の形式を取る。シリーズを束ねるのは、同じ花や土地を題材にすることではなく、人生の場面と香りを結びつける発想だ。その中で、花、ムスク、木、果実などの組み合わせは作品ごとに異なる。

チャプター65の花とムスク、チャプター37の果実と乾いた余韻

アイアムを代表するチャプター65では、オレンジフラワーとバイオレットの花々に、粉を思わせる柔らかなパウダリー感と、ムスクの温もりを重ねる。公表された構成には、レモンやベルガモット、石けんを表すサボンの香りもあり、その先に花、さらにサンダルウッドやアンバーが続く。

この作品では、花の華やかさだけでなく、あどけなさを残す柔らかさと、寄り添うような温かさを一緒に描こうとしている。清潔な印象の要素、花の表情、木やムスクの余韻を合わせた設計に、ブランドが説明する65の姿が表れている。

一方、2026年9月4日に発売されたチャプター37は、シリーズの11種類目の香りである。マンダリンを中心とした熟れた果実の甘さに、ローズ、アイリス、バイオレットのパウダリーな花々を重ね、パチョリやベチバー、ムスクによるドライな余韻へ移る。ブランドが掲げるのは、花々をパチョリやオークモスなどの落ち着いた基調に重ねた「フローラルシプレ」である。

65と37は、どちらも花とパウダリーな表情を持つが、描き方は同じではない。65はムスクの温もりを強調し、37は果実の甘さから乾いた余韻へ移る変化を描く。新しい章を加えることが、既存の香りの繰り返しではなく、別の表情を生む方法になっている。

同じ香りを、肌と部屋で楽しむ

チャプター65は香水だけでなく、キャンドルにも展開されている。キャンドルでは、花とムスクの香りに揺れる炎を合わせ、部屋で過ごすひとときをつくる。同じ65を、肌にまとう場合と、空間に広げる場合とで楽しむのである。

チャプターは、香水、ボディ・ヘアケア、ルームフレグランスを横断するシリーズだ。香りを増やすことと、同じ香りを別の形で使えるようにすること。その二つの展開が並び、人生の場面に香りを添えるという発想を、暮らしの複数の場所へ広げている。

球体のキャップと、香りごとに異なる試香紙

チャプター65のボトルは、低めの円筒形の透明なガラスに、白いラベルを巻いた姿である。ラベルにはchapterと数字、ブランド名を配し、その上に鏡面のシルバーの球体キャップを載せる。瓶の簡潔な形に対して、丸いキャップが明確な目印になる。

店頭で香りを確かめるムエット、つまり試香紙にも、香りごとに異なる絵柄を用いる。共通のボトルでシリーズをまとめながら、紙の上では一つひとつに違う姿を与える。香りを数字で区別するだけでなく、視覚にも違いをつくっているのである。

自分の肌を手入れし、香りを選び、部屋で過ごす時間を整える。アイアムが掲げる「私は、“わたし”」は、そうした日々の行為とともにある。ブランドの背景を知ってからチャプターに向き合うと、香りの名前の先に、どんな時間を自分の生活に加えたいかという問いが残る。

参考文献