洗濯の仕上がり、見た目よりにおいで判断する?

洗濯の仕上がり、見た目よりにおいで判断する? 香りの科学

洗った服を手に取り、まずにおいを確かめる。米国の消費者調査では、洗濯がうまくできた手がかりとして「清潔なにおい」を選んだ人は76.4%で、「清潔に見える」の68.3%を上回りました。洗濯後でも清潔なにおいがしなければ洗い直す、と答えた人も36.4%いました。

この調査を掲載した2022年の論文は、家庭用品の香りが好まれる理由を、においへの対処、使うときの体験、感情という三つの側面から整理しています。新しい消費者調査と、それまでの嗅覚研究を組み合わせた論文です。

米国の2000人に、香りの役割を尋ねた

調査は2021年5月21日、過去6か月に洗濯用品、掃除用品、芳香製品を購入・使用した米国の2000人を対象に、オンラインで行われました。P&Gが設計と解析を担当し、調査会社AYTMが実施しました。参加者には謝礼が支払われ、P&Gの関与は知らせていません。

質問は19問で、選択肢から一つ選ぶもの、複数選ぶもの、自由回答を含みました。設問によって回答者数が異なり、洗濯の仕上がりと洗い直しに関する回答は1759人分です。実際に洗濯する場面を観察した研究ではなく、普段どのように判断し、行動すると考えているかを尋ねています。

洗濯の仕上がりは、見た目に加えてにおいで判断

洗濯がうまくできたと判断する手がかりは、「清潔なにおいがする」76.4%、「清潔に見える」68.3%、「柔らかく感じる」16.0%でした。複数回答なので、においと見た目の両方を使う人も含まれます。においだけで決める人が76.4%いた、という意味ではありません。

「洗濯を終えた衣類などが清潔なにおいでなければ、洗い直すか」という問いには、「はい」36.4%、「いいえ」31.8%、「ときどき」31.8%という回答でした。香りが、洗濯を完了したと納得するための手がかりになっている様子がうかがえます。

一方、家の掃除については1763人が回答し、「清潔に見える」が75.0%、「清潔なにおいがする」が54.1%でした。同じ清潔さの判断でも、洗濯と掃除では感覚の使い方が異なっています。

ここで測ったのは、清潔さをどう判断するかという回答です。衣類に残った汚れや細菌を測定していないため、清潔な香りと実際の洗浄状態がどの程度一致するかは、この調査からは決まりません。

香りの役割を、三つに分けて考える

著者らが提案した第一の側面は、不快なにおいに対処する機能です。悪臭を感じにくくする、製品の基剤のにおいを覆う、空間や衣類をさわやかに感じさせる、といった役割です。調査でも、香りの主な目的として「不快なにおいを取り除く」を選んだ割合は、芳香製品で44.7%、掃除用品で35.9%、洗濯用品で38.7%でした。これらは利用者の期待であり、各製品の消臭性能を試験した数値ではありません。

第二は、使っている最中と使い終わった後の体験です。掃除を気持ちよく進められることや、作業が終わったと感じられることが含まれます。掃除用品の香りの主な目的としては、「掃除の後によい香りを残す」が62.2%と多く、「掃除中の体験を心地よくする」は27.5%でした。先ほどの洗濯の回答も、この「仕上がりの合図」という側面に位置づけられています。

第三は、香りから生まれる感情や思い出です。よいにおいのする家でどう感じるかという複数回答では、2000人のうち54.4%がリラックス、44.0%が達成感、39.4%が自信に当たる選択肢を選びました。また、家庭用品の香りとの感情的なつながりについての設問では、約36%が何らかのつながりを報告しました。感情的につながった香りについて回答した647人では、落ち着く・リラックスするが66.2%、うれしい・幸せが49.3%、安心・慰めが46.7%でした。後者は2000人全体の割合ではありません。

三つの側面は独立した箱というより、重なり合う説明です。例えば、服の不快臭が気にならなくなり、洗濯が終わったと実感し、人と会うときに安心する、という一続きの体験として考えられます。

香りは「何に、いつ使うか」でも役割が変わる

論文は、記憶、気分、行動、対人印象に関する先行研究も整理し、この三つの側面を説明しています。さらに、製品の色や手触り、言葉による説明と香りとの組み合わせ、使い慣れた香りと新鮮さのバランスを、今後の研究課題として挙げました。これらの議論は、今回のアンケートで一括して実証した結果とは分けて読む必要があります。

読者に身近な例は、洗剤の香りを感じるタイミングです。ボトルを開けるとき、濡れた衣類を取り出すとき、乾燥中、畳んでしまうとき、次に着るときでは、香りに求める強さや役割が変わります。著者らは、製品を選ぶ瞬間だけでなく、この一連の使用場面を通して香りを研究することを提案しています。

調査でも、強い香りを好む割合は製品によって異なりました。「たくさん、または非常にたくさんの香り」を好む回答は、芳香製品で57.9%、洗濯用品で40.4%、掃除用品で27.7%でした。香りの多さを、どの製品でも一様に求めているわけではなさそうです。

調査で分かったことと、これから確かめること

この論文の強みは、家庭用品の香りを「よいにおいかどうか」だけで捉えず、作業の目的、使用中の感覚、感情を結びつけて整理した点にあります。ただし、三つの要因が購買や家事行動をどれだけ変えるかを、実験で分離して確かめたモデルではありません。調査の人口構成や詳細な重み付けも示されておらず、この割合を日本の利用者全体にそのまま当てはめることはできません。

著者らは、不要な洗い直しを減らす可能性や、嗅覚と生活の質・健康との接点にも議論を広げています。今回測ったのは消費者の回答で、水や電力の削減量、健康改善を検証したものではありません。また、香りを避ける人や不快な反応を経験する人についても研究課題を挙げていますが、その理由をこの調査で診断したわけではありません。利用者ごとの希望や反応を含めて確かめることが、提案された枠組みの次の課題です。

まとめ

米国の調査では、洗濯の仕上がりの手がかりとして、においを挙げる回答が見た目より多く、36.4%が清潔なにおいでなければ洗い直すと答えました。一方、家の掃除では見た目を挙げる回答が多く、製品や作業による違いも見られました。

論文が提案したのは、香りの役割を「不快臭への対処」「使うときの体験」「感情や思い出」の三つから考える枠組みです。洗剤の香りは衣類に添えるものだけでなく、作業が終わったという実感や、使う人の気持ちにも関わる。この関係を、実際の行動や使用場面ごとに確かめるための出発点になる研究です。

研究の資金・利益相反:原稿作成はFragrance Creators Association(FCA)の資金によります。研究当時、著者4人はP&G、1人はFCAに所属していました。大学所属の著者2人は、原稿作成への参加に対してFCAから謝金を受け取っています。新規調査の設計・解析はP&Gが担当しました。

参考文献

Herz RS, Larsson M, Trujillo R, et al. A three-factor benefits framework for understanding consumer preference for scented household products: psychological interactions and implications for future development. Cognitive Research: Principles and Implications. 2022;7:28. doi:10.1186/s41235-022-00378-6