香り付きのデオドラントを使っても、人ごとのにおいの違いは残るのでしょうか。2015年の研究では、製品を使わない場合だけでなく、香り付き製品を使った場合にも、全体として人のにおいを偶然以上に嗅ぎ分けられました。さらに、普段自分で選んでいる製品を使った試料は、研究者が指定した製品の試料より嗅ぎ分けやすいという結果でした。
ただし、全体で最も嗅ぎ分けやすかったのは製品なしの条件です。自分で選んだ香りが、その人の特徴を無条件に強めるという単純な話ではありません。研究は、体臭と香り付き製品を組み合わせたときの「人ごとの違い」を調べています。
同じ製品を使う人同士で、においを比べる
においの提供者は男性6人、女性6人でした。全員が日常的にデオドラントを使う非喫煙者で、女性はホルモン避妊法の使用者です。男性は全員、同じ市販のボディスプレーを普段から使用。女性は3種類の制汗デオドラントについて、それぞれ同じ製品を使う2人ずつを選びました。
この組み方には理由があります。もし人によってまったく違う香料を使えば、「その人のにおい」ではなく「違う製品の香り」を当てるだけになりかねません。同じ製品を使う人同士を比べることで、その問題を減らしました。
提供者は連続する3日間、無香料の石けんで洗った後、脇に綿のパッドを付けて24時間過ごしました。1日目はデオドラントなし、2日目は普段の製品、3日目は研究者が指定した未使用経験の製品です。量は普段の使い方に任せ、ほかの香り付き製品、強いにおいの食事、飲酒、運動などを避けるよう指示しました。
指定製品は男性で共通のボディスプレー、女性で共通の制汗デオドラントでした。香料だけを加える試験ではなく、においを抑える成分や、女性用製品では汗を抑える成分も含む、実際の製品の比較です。
3つのうち、別の人のにおいはどれ?
評価者は英国の科学施設を訪れた427人で、女性296人、男性131人でした。238人は男性提供者の試料を、別の189人は女性提供者の試料を嗅ぎました。
1回の課題では、同じ人から採った2つと、別の人から採った1つを瓶に入れて提示し、異なる1つを選んでもらいました。提供者の性別は1回の課題内ですべて同じで、製品の条件もそろえています。何もわからず選んだ場合の正答率は約33%です。
評価者は製品なし、普段の製品、指定製品の3条件を1回ずつ行いました。各条件には異なる提供者のペアを使い、試験セッション間でペアと条件を組み替えました。また、身近なにおいの名前を4択で答える12問の検査も実施しています。
全体では、普段の製品の方が指定製品より嗅ぎ分けやすかった
全員の結果をまとめると、3条件すべてで正答率は偶然の33%を有意に上回りました。したがって、この試料では、香り付き製品を使った後も、人を区別する手掛かりが完全には失われていませんでした。
年齢、評価者と提供者の性別、においの識別検査の得点などを含めた解析では、製品なしは香り付きの2条件をまとめた比較より正答しやすく、普段の製品は指定製品より正答しやすい結果でした。
著者らは、自分で選ぶ香りと体臭の組み合わせには、他人が割り当てた組み合わせより、その人ごとの違いが残りやすい可能性があると解釈しています。一方、香りを重ねると製品なしより個人差をさらに際立たせる、という当初の可能性は、全体の結果では支持されませんでした。
男性の試料と女性の試料で、同じパターンではなかった
重要なのは、この全体像がすべての組み合わせにそのまま当てはまったわけではない点です。女性提供者の試料では、製品なしが嗅ぎ分けやすく、香り付きでは正答率が低くなりました。女性試料について、普段の製品と指定製品の差だけを取り出すと、明確な有意差はありませんでした。
男性提供者の試料では、評価者全体をまとめると3条件とも偶然以上に嗅ぎ分けられ、条件間の明確な差はありませんでした。評価者の性別まで細かく分けると、偶然以上に達しない組み合わせもありました。たとえば男性評価者が女性の指定製品付き試料を嗅いだ場合の正答率は30%でした。
この違いを生物学的な性差だけで説明することはできません。男性と女性では使った製品や制汗作用の有無が異なり、提供者の脇毛の処理も異なりました。香りや体臭の強度は測定していません。男性試料の方が強く特徴的だったのか、製品の違いが効いたのかは、著者らも検討課題としています。
嗅ぐ側の識別能力も関係していた
身近なにおいの識別検査で高得点だった人ほど、体臭の三択課題でも正答しやすくなりました。全条件をまとめた正答率は女性評価者57%、男性評価者48%で、解析でも女性の方が高い傾向が確認されました。
年齢そのものと三択課題の成績には、ほかの要因を入れた解析で明確な関連がありませんでした。ただし、年齢が高い人ほど、においの名前を答える検査の得点は低いという関連がありました。年齢と嗅覚の関係が一切ないという意味ではなく、この課題では識別能力を含めて見る必要がある結果です。
自分らしい香りを選ぶ仕組みは、まだわからない
評価者は多い一方、においの提供者は各性6人です。製品を使う順序も、なし、普段の製品、指定製品に固定され、製品の成分や使用量をそろえて香料だけを比較した設計ではありません。これらは、普段の製品がよかった理由を切り分ける上で重要です。
著者らは、香りの好みが自分の体臭との相性を反映する可能性を支持する結果だと述べています。ただし、今回調べたのは人の試料同士の区別です。魅力、感情、健康状態や遺伝的特徴が、香りを重ねた後も正確に読み取れるかは、別に調べる必要があります。
まとめ
香り付きデオドラントを使っても、全体では人ごとのにおいを偶然以上に区別できました。製品なしが最も嗅ぎ分けやすく、香り付き同士では、普段自分で選んでいる製品の方が研究者指定の製品より正答しやすい結果でした。
ただし、提供者の性別ごとでは条件差の現れ方が異なりました。体臭と製品の組み合わせ、嗅ぐ人の能力の両方が、その人らしいにおいの感じ取られ方に関わる。香料だけでも体臭だけでもない、組み合わせを研究する意義を示した実験です。
著者の1人へのCzech Science Foundationの助成が記載され、著者らは利益相反がないと申告しています。
参考文献
Allen C, Havlíček J, Roberts SC. Effect of fragrance use on discrimination of individual body odor. Frontiers in Psychology. 2015;6:1115. doi:10.3389/fpsyg.2015.01115


